誰か来ないか、どきどきするね
学校に到着、彼女に案内されて構内に入る。
夕方とあって日は高くても、休みの学校に人の気配を感じ無い。
だが鍵は空いているのだから、関係者や生徒が居る事は間違いないだろう。
さすが「自分の庭」だとボクは彼女に感心する、目的の教室まで誰とも会う事はなかった。
訪れた彼女の教室。
ルキノちゃんは真っ直ぐ自分の席へと向かい、水着を探し始める。
学校の教室と言うのは、何処も大して変らないのだなと思いながら、僕は罪悪感からか?閉め切っているせいか?息苦しさを感じる。
自転車で来るまでの風で涼んだ身体が、また汗ばんで来た。
「ルキノちゃん。水着はあった?誰かに見つかって面倒な事になる前に、早く出よう。」
ビビリのボクは彼女を急かす。
が、また彼女は「蠱惑」の表情を浮かべ、コチラを見ていた。
「どうしたの?無かった?」
「あったわよ。」
「じゃあ早く持って出よう、人が来るかもしれない。」
「ねえ。」
「何?」
「ここで着替えて行かない?」
「??」
「あら、別に可笑しく無いわよ。川辺で着替えて誰かに覗かれたりするより、ここで着替えた方が安全だわ。」
彼女は「秘密の遊び」を楽しむように、声を潜めてボクに言った。
「誰か来ないか、どきどきするね。」
そう言うなりルキノちゃんは、スカートに手を入れ、下着を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと!!」
何かが見えた訳では無い。
が、とても破廉恥な彼女の姿を見ている気がして、慌てて背を向ける。
そう言えば、昔から彼女とのやり取りは、こんな感じだったような気がする。
ボクは「彼女」にするなら、「しとやかで、慎み深い女性」という理想像がある。
ルキノちゃんはボクの理想だけど、今の彼女は無防備かつ、天真爛漫?だ。
ボクはいつ、彼女に自分の理想を重ねたのだろ?
ボクが好きなのは、幼馴染の前で下着を脱ぎ、スク水にに替える本物の彼女?
自分の想像が形作る男子の前で下着を脱ぐ事などない、恥らいのある彼女?
心が動揺する。
ボクが一年焦がれ、逢いたっかのは「ルキノちゃん」なのか?
ルキノちゃんの姿をした「身勝手な願望」なのか?
背後からは服のすれる音、なにやら四苦八苦としながらも、楽しげな彼女の鼻歌がきこえる。
「番兵よ、」
「わらわの着替える姿が、万が一にも人の目に触れ、汚される事の無きように確りと見張っておれ。」
「さすれば褒美をとらすぞえ。」
「、、、、」
ボクは言葉が無かった。
あの時から成長したのは「自分を押し付ける身勝手な部分」だけでは?
好きという気持ちと欲望を履き違え、幼馴じみの彼女を「手近な存在」だからと言う理由で汚そうとしてるのでは無いか?
自身の弱さが引き金となり。また、心の蓋が開いた。
今まで考えない様にして来た。
いや、
常に「その事に」怯えながら無視して来た。
ある可能性。
ボクは恐る恐る、彼女に尋ねた。
「ねえ、ルキノちゃん、、、」
「か、彼氏、、、、いるの?」
ボクの言葉に、彼女の鼻歌が止まる。
「、、、、」
音の無くなった教室が静まり返る。
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