第47話
次の日の朝、日曜日
オカンとばあちゃんは、いつもの部屋や。
販売用のお菓子を作り終わり、作業が始まったんや。
その間、私は昔のメールを見ているざ。
昔と言っても、六月と七月のデートの後のメールやけど……
『早苗さん、美術館のデートありがとうや。俺、美術館は始めてやったんや。
正直、疲れたわ。堅苦しい世界は、俺には向かんかもや……
ちょっと、疲れたわマジで!
そやで、今日はここまでや 』
『早苗さん、クラシックどうやった。
俺なあ、少し眠かったわ。
ごめんな、本当ならアイドルのコンサートとかやったら良かったなあ。
早苗さん、堪忍やざ。
さて……慣れない音楽で疲れたわ。
休ませてもらうざ。
おやすみ 』
私は二つのメールを見ていた。
やはり……引っかかるんや。
二つ共、俺に向かん……そう言いつつ、その時の孝典さんは楽しんでいたんや。
このメールが来た時、謙虚なんやなあ……そう思ったわ。
けど……今になっては、可笑しいんや。
「姉ちゃん、何見とるんや」
沙織や。
うるさい奴やわ。
「ええやろ! 私が昔のメール見たって!」
「姉ちゃん、何を探るんや?」
沙織が言うたざ。
探る……この娘は!
「別にや、ただ見とるだけや。ヨモギ羹まだやろか?」
私はしらばっくれたわ。
それに、ヨモギ羹も待ち遠しいし……私は食べれんけど。
「姉ちゃん、私は味見すっざ!」
沙織が笑いながら、言うた。
ここは沙織に助けて貰わないと……
しばらくして……
オカンとばあちゃんが、ヨモギ羹を持って来たざ。
けど、顔がどこか冴えんわ。
「早苗、コレが完成品やけど……」
オカンが私に、ヨモギ羹を見せたわ。
えっ!
私、少し驚いた。
完成品のヨモギ羹は、鮮やかな緑色しとる。
綺麗な緑色で……どこか毒々しいんや。
この色は……けど、味はどうや?
「沙織、ごめんな、お願いや」
私は沙織に、ヨモギ羹を食べてもらう。
沙織もヨモギ羹の鮮やかな色に、少しびっくりしている。
けど勇気を出して、一口口に入れたざ。
……
……
……沙織が無言のままや。
無言のまま、私と目が合う。
「姉ちゃん、コレ、ヨモギが強いわ。甘さとヨモギと見た目、全てがアカンわ。なんか足らんのや」
沙織が言うたわ。
それも幸隆のお母さんと同じ事をや!
正直、ショックや。
試作品が否定されたことを!
これ以上、何が足らないんや!
「早苗、私なあ考えは間違っとらん思うんや。あと一声やざ」
オカンも幸隆のお母さんと同じ事を、言うたざ。
なんなんや?
足らないものは!
「姉ちゃん、大丈夫か?」
「う、うん、少しドライブしてきてええか? 沙織店番頼むわ。オカン、少しだけええか?」
オカンに聞いた。
「わかった、少しやざ。しっぽふって、松浦はダメやでな!」
「なんで、そうなるんや!」
私は呆れて言うたわ。
別に幸隆に、会いたいとは……幸隆も忙しいやろ。
……あれ?
どうして幸隆のことを……
……いつからや?
いつから、天秤が幸隆に動いたのは!
……
……
……そや!
アコを目指すわ。
あの人に会ってみよう。
ドライブはそこや!
そこで、真相を聞いて見たる。
……あれ?
ヨモギ羹は……まあ、とにかく! 目指すざ。
つづく
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