第46話
家に帰って……
私オカンとばあちゃんに、話をしているんや。
ちなみに、じいちゃんは町内会で、オトンは仕事が終わらんらしいざ。土曜日なのに、お疲れ様やわ。
時間は夕方頃で、ご飯たべる前あたりやろか?
少し話し合いをしていたんや。
「なるほどや、ヨモギは考えたなあ」
ばあちゃんが言うた。
「そうやろ! なんで、ヨモギ羹がアカンのや?」
私がまくし立てるように、言うたって。
「姉ちゃん、姉ちゃんはヨモギ嫌いやろ」
沙織が口を挟むわ。
「なんや! 私はヨモギ食べれんけど」
「まあ、祥子も苦手やな」
ばあちゃんが、私とオカンを見たざ。
私とオカンが、顔を見合わせる。
二人して、笑た。
「沙織、アンタはどう思う?」
「え? 姉ちゃん! そうやなあ……わからんわ、一度食べてみんとわからんざ」
沙織は言うたわ。
確かにやな……
「オカン、ヨモギ羹作ってくれんか」
私が言うたって。
「……わかった、ヨモギの粉を使うわ。ヨモギ粉の挽き具合は、粉状でええやろ?」
ばあちゃんが答えてくれる。
肝心のオカンは……少し逃げ腰やって。
もう!
「オカン、私が部屋に入るざ! 私もお菓子くらい作れるんやでの」
オカンに言うたわ。
「祥子、どうする? 今回は早苗に作ってもらうか?」
ばあちゃんが私寄りや。
ひょっとしたら……
「い、いいえ、私が作りますざ。まだ、早苗は入れさせんざ」
オカンが、キッパリと言うた。
……はあ
「残念やったな、姉ちゃん」
沙織が冷やかし半分に言うたわ。
この小娘は!
「はあ、せっかく、孝典さんのお母さんに手作りの試作品を、持っていけると思たのに」
「双子の弟さんもいるやん」
沙織が冷やかしながら、お茶を啜っとる。
「沙織、アンタ! 私は孝典さんのために、お菓子作ってんのや! なんで、幸隆のためなんや!」
私が大声を出した。
……
……
……?
みんなが私を見る。
そして……みんながニタニタしとるわ。
なんなんや?
「姉ちゃん、いつから呼び捨てできる仲になったんや?」
沙織が言ったざ。
呼び……捨て……
呼び捨て……
……あっ!
幸隆を私、呼び捨てとる。
空気みたいに、いつの間にか呼び捨てしとる。
……答えはわかるんや
けど、なんで?
いつから変化したんやろ。
そしてなんで、変化したんや?
だけど、心が……
孝典さんより、幸隆を想い初めとる。
「早苗!」
オカンが、私を呼んだ。
「幸隆さん、ええ男やざ。不気味な娘にはなったらアカンざ」
オカンが、言うた。
五月のあの時、オカンから……
「不器用な娘!」
そう言われて抱きしめられたのを、思い出したんや。
少し私は俯いたわ。
「さて、男どもは居ないざ。女ばっかりの夕飯や! 沙織、手伝えや! 早苗……まあええわ」
オカンのかけ声で、夕飯が始まる。
始まるんやけど……
私は時間を遡っとる。
孝典さんとのデートをや、何回かしとるデートで今になり不思議な感覚におちたデートがあることに気づいたんや。
六月に美術館のデート……
七月のクラシックコンサート……
後のデートは書かんかったけど、初めて河川敷であった孝典さんのような感じやったんや。
この二つは、どこか違っていた……そんな気がする……ざ。
……まさか!
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