第45話

 さて、私はまだ松浦家にいる。

 お母さんとの話し合いが面白いんや。

 そして、幸隆さんへの違和感や。

 違和感……つまり、幸隆さんの出会いについてやわ。

 「なんや、早苗さん、俺なんかしたか」

 どうやら少し怖い顔したんやろか? 幸隆さんがたじろいでるわ。

 「別に」

 私は流す。

 今はそんなことよりも、お母さんや。

 「お母さん、単刀直入に言います」

 「なんやの」

 「私のこと、どう思ってますか?」

 私、言うたわ。

 本当に、単刀直入や。

 幸隆さんが、おいおいって顔や。

 「綺麗なお嬢さんや、私の若い時よりもや、少し嫉妬しとるわ」

 アハハ、笑いながら言うた。

 上品な笑顔や。

 私には出来んざ。

 私には勝てん……ん? 何故争ってるんや。

 私は私やざ。

 どうしてや?

 「桜井さん、聞かせてや! 孝典には何をたべさせてくれるんや」

 お母さんが言うた。

 「はい、ヨモギを使います。ズバリ! ヨモギ羹です」

 「ヨモギ羹?」

 「はい、ヨモギは薬草です。体に良いものです。それを水羊羹状にして、孝典さんに食べていただきます」

 私が力強く言うた。

 そう、これが私の発想や。

 「どう思いますか?」

 私は聞いたざ。

 自信はあったんや。

 けど……

 「桜井さん、家族に相談してみてや。正直なるほどと思うわ。そやけど、何かが足らんとも、思うわ。それが何かはわからんのやけど……それだけではアカンと思うんや」

 お母さんが言うたわ。

 えっ……

 ダメなんか。

 「言っとくけど、その方向はええざ。けど足らんはずやわ。一度持ち帰ってみね」

 お母さんが優しく言うた。

 足らないモノ……何やろか?

 ふと視線を外す。

 幸隆さんを見た。

 幸隆さんは呑気に、私とお母さんのやり取りを見ているわ。

 コイツは! 

 幸隆め!

 「なあ、幸隆! アンタ見せもんちゃうざ!」

 大きな声を出したわ。

 すると、幸隆が目を丸くしていた。

 「は……あは……あははは」

 お母さんが笑った。

 え? え?

 私、何かしたんか?

 「桜井さん……いや、早苗さん、ありがとうや」

 お母さんが言うたわ。

 どうしてや?

 「なあ、早苗……さん、そろそろ帰ろか。そこで報告や」

 幸隆が言うた。

 ……そやな

 「幸隆、帰らせるんか?」

 「距離が近づいたんや。前進や」

 「幸隆、お前は奥手やなあ」

 お母さんが、深いため息をついたざ。

 なんで?

 「とにかくや、送るざ。ノリを頼むわ」

 幸隆の言葉に、私は首を縦にふる。

 幸隆、私は孝典さんの為に頑張るざ!

 そう、頑張る!

 かんば……る

 何やろ、また違和感や。

 さっきの違和感とは違う違和感や。

 私、どうしたんやろ。

 私の心が可笑しい……んか?

 何なんや。

 ……とにかく、帰ろう 

 家族に報告や。

 そして、お母さんの足りないモノを、オカンから聞いてみるざ。

 ひょっとしたら、オカンも同じことを言うかもや。

 それにしても……私の心はどうなってるんや?

 不思議な感覚やざ


                   つづく

 

 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る