第48話

 午前中 優衣のアパート


 「どうしたんや?」

 優衣さんが言うた。

 ここに来るのは、これで三回目やったかなぁ。

 お腹が少し目立ってきたみないや。

 あんまり、この人に迷惑かけらん。

 けど……この人が、キーマンのはずなんや。

 まあヨモギ羹は、アテにならんとは思う。

 けど、幸隆のことはわかるはずや!

 「優衣さん、総務の仕事大変か?」

 「なんやの、いきなり」

 優衣さんが熱いお茶を持って来た。

 いい湯のみや。

 越前焼やろな。

 ……よし!

 「総務の仕事に、孝典さんの身体の監視があったやろ。あれで一つ、教えてくれませんか?」

 「なんやの、いきなり……なんや」

 優衣さん、テーブルの右側面に座る。

 私は優衣さんの横顔を見とるんや。

 「私、何回か孝典さんとデートをしました。孝典さんは少し強引な所あり、子供みたいな所あり……そんな感じがします」

 「それがなんやの」

 「二回だけ、雰囲気の違たデートがありました」

 私は優衣に強めに言ったんや。

 優衣さん、私に目線を送り……少し固まっている。

 目が少し怖い。

 「聞いて下さい、私にとって、孝典さんと……幸隆は大切な人です」

 敢えて、幸隆を強めに言ったんや。

 少し怖い顔の優衣さんが、今度は凄く驚いているんや。

 おそらく、心の距離が変わったことを知ったんやろう。

 ……コレは事実や。

 いつしか好きを覆い被さるよに、打ち消すように恋になり、それがまた覆い被さり……おそらくや、おそらくやけど!


 愛 


 に変わったんや。

 相手は幸隆なんや。

 いつしか私、幸隆を愛していると言った。

 実はこの時、私は想いが移り変わっとんや。

 けど……気づかんかった 

 そやけど……

 「この茶碗、越前焼やろ?」

 「そや、ようわかったなあ」

 「幸隆のお土産やろ」

 「そうやったら、なんや?」

 私はお茶を飲み干した。

 熱いけど、美味しいかった。

 私はスマホを取り出し、検索を始めたんや。

 ……

 ……

 ……!

 私はメールを優衣さんに見せたんや。

 「私の予想です、このメールを打ったのは孝典さんやと思います。けど、デートに来たのは幸隆で後で内容を教えた! 優衣さんならわかるはずや……そう思うんや」

 最後は強く言えんかった。

 「早苗! しっかりしろ!」

 優衣さん! 

 あんた……私は驚いた。

 「私もお前に、ネコ被らんわ!」

 「……だったら、教えてくれませんか?」

 ここは引けん! 引いたらアカンざ!

 「何で知りたいんや?」

 「優衣さん……いいえ、優衣! 聞いてや」

 「!」

 「私が始めて、幸隆に会ったんはブルーべりーの農家やと思た。そこで、幸隆の存在を教えてくれてすぐ会う……この不自然の出会いが最初やと思たわ。けどな、こんな不自然な出会いだけで、ここまで私を知って親しくなれん! わからんかったわ。 けど……孝典さんのデートに、幸隆がすり替わってたら……だから、初めて会った時、気づかんかたんやと思たんや」

 少し長いの、でもここで言わんと! そして聞いてもらわんと!

 「優衣、真実を教え下さい。お願いします」

 私は頭を下げたわ。

 「早苗……」

 優衣が呼んだ。

 私は顔を上げる……優衣が泣いているんや。

 泣きながら、首を横にふっとるんや。

 首の振り方は、違う! そんな感じには弱く、どちらかと言ったら……


 堪忍してや……


 そんな感じやった。

 つまり……優衣は守っているんや。

 「ごめんなさい、優衣! 少しドライブするわ。ありがとうや、お腹大事や」

 私は泣きたい感情をこらえて、優衣のアパートを出かけた。

 「早苗、幸隆はええ人やざ」

 優衣が泣きながら、笑っていたんや。

 私は、ハイ! そんな感じで頷くと……

 「今度、友達としてきてええか?」

 玄関先で言うたわ。

 優衣は深く頷き、見送ってくれたんや。



 ドライブ中



 幸隆の出会いは……おそらく、あこではない。

 あことは、ブルーベリー農家や。

 確実が欲しい。

 ……あっ!

 その前に、ヨモギ羹どうしよう?

 うーん、難しいなあ。

 助っ人おらんかなあ。

 この前の、宮本さんみたいな……って! 

 宮本さんを頼ってみようかなあ。

 この前、名刺もろてたんやわ。

 そこに携帯番号があったはずや!

 ……よし、あのおっちゃんに、手伝ってもらうざ。

 待ち合わせは……待てよ、いっそのこと!

 そやそれや。

 これなら、沙織もオカンも喜ぶはずやわ。

 ……よし!

 電話するざ!

 

  

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