第43話
……
……
……
「まあ、硬くなるなや」
幸隆さんが笑うって。
……硬くなるなは、無理や
何故なら、今私、松浦家にいるんや。
正直、やられたわ。
ドライブとか言って、自分の家なんてあるかあ。
「健全やろ? 変な所は連れてかん」
幸隆さんが真面目に言うざ。
……変な所、それは問題外やろ
そしてここは変やないけど、違う意味で警戒せなあかんやん。
幸隆さんが私んちに来たんとは、訳がちゃうざ。
私んちはフレンドリーやったけど、なんやろものすごい威圧感と緊張が私の心にあるわ。
畳の客室は、新しい畳の匂いがする。
そこに座布団が出されていて、床の間辺りに幸隆さんが座っているんや。
座布団は三つあって、床の間辺りに一つ客室の窓側に一つ、そして廊下側に一つ。
床の間には、お客さんが座るんやけど今回は私は床の間と違う。
何故なら私が女やからや。
上座はどんな場合でも、男が座るは古い式たりやけど福井はそんはのを今でも守っているんや。
新しいモノは大好きなんやけど、古いことにも厳しいのが私の住む町なんやざ。
漆塗りの立派な、和テーブルがあり漆黒感が凄いわ。
静かな空間に、時間の流れの違いを何故か感じてしまうんや。
ここは桜井の匂いとは違う。
「いっしょにしとれ」
「え?」
「顔に出とる、まあ俺もいっしょやったけど」
幸隆さんが言うたわ。
いっしょ……やった?
「俺も緊張しとった」
息を吐きながら、幸隆さんが言うた。
「ウソや」
私は即座に返すざ。
どう見ても家族に馴染んでたわ。
……悔しい
私は桜井しか知らん。
客室に続く廊下を歩く足音が聞こえてきたわ。
どこか軽くどこかシッカリと、踏み込んで歩いてる。
わかる……
わかるんや。
「黒幕の登場や」
「黒幕?」
「母さんや」
幸隆さんが言うた。
え?
襖が開く。
「あら、幸隆! 上座は……」
「私は女です」
即座に言うた。
この前のお母さんが、綺麗に……ちゃう! いつものように着飾ってる。
普段着や。
普段着やけど、スゴくセンスがええわ。
同じ女として、少し……ううん、めっちゃめちゃ悔しいざ。
「へえ、なかなかやな」
え? なかなか!
お母さんの目に、なんか好奇心みたいなモンが見えるざ。
「なあ、母さん! 早苗さんは俺のとこ座ったらあかんのか?」
幸隆さんが何気に言うた。
「……幸隆! 恥さらすなや」
鋭い声がした。
お母さんの鋭い声はまるで、刃物みたいや。
「そやけど、母さん! 母さんがここを座れといったやろ」
幸隆さんが反論した
!!!
「あの、すみません!」
私が声を出した。
大声やった。
二人が私を見る。
「お母さん、私を試したんですか?」
言い放ったわ。
「……ええわ!」
「何ですかそれ」
「合格や!」
なっ!
「早苗さん、あんたは合格や」
妖艶な笑顔を、私に魅せるざ。
なんやろ? 私の怒りが外れていく。
「堪忍や、少し試したんや。早苗さんの力量をや」
「なんのための力量ですか?」
「合格! いつでもここにおいでや」
???
意味がようわからん。
ようわからんけど、何や幸隆さんが幸せそうな顔しとるわ。
……って、本題はいっとらんざ!
合格の意味と、幸せの顔の意味は後回しや。
まずは孝典さんのお菓子の協力依頼やわ。
幸隆さんが家連れてきたんは、母さんに聞くことが一番やと思ったからやざ。
間違いない!
なあ、間違いないやろ?
つまりここで、情報を聞き出すざ。
家にビビってる場合ちゃう。
今は最善を尽くすざ。
さて……始めよ!
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