第42話
桜井家 食卓
お昼御飯はいつもありきたりのモンで済ます我が家……なんやけど今日に限って手作りのオカズが並ぶ並ぶ。
「お母さん、気い遣わんといて」
幸隆さんが、苦笑いしながら言うた。
おいおい、男が一人来たくらいで何なんや。
「いえいえ、お口似合うかどうか」
オカン、なんか訳わからんオーラみえとるざ。
幸隆さん、そのオーラに押されとるわ。
「幸隆さん」
私が呼ぶ。
幸隆さんは振り向き、目線が合う。
「なんや、早苗さん」
鳥の天ぷら、頬張りながら幸隆さんが言うた。
「気にするやろ? 大丈夫か?」
私は箸を持った手で、頭を掻きながら言うた。
「お姉ちゃん、はしたない」
沙織が言うた。
「アンタに言われたくないわ!」
「へへーん」
沙織が生意気やざ。
昼御飯後
さて慌ただしいお昼の後は、二人で話し合いや。
二人……なんか部屋の外から、訳わからん気配がするざ。
「はあー」
「ええ、家族やな」
幸隆さんの笑顔に、どこか癒やされる。
孝典さんとは違う笑顔やわ。
顔は同じやけど、何やろ? 違いがわかるようになったんやって。
どっちが良いか?
……それは私の胸にしまうざ
それに今はどちらが上の問題やないから。
「なあ、早苗さんタカは、流動食らしいわ」
幸隆さんが言うたわ。
「流動食なんか! つまり、普通の食べ物は喉を通らんのやろ」
私はビックリしながら、言うたわ。
この時饅頭はアカンことがわかった。
餅よりも通りやすいと、安易に考えていたんやけど……
ヤレヤレや。
「流動食やから、プリンやゼリーがええんちゃうか?」
幸隆さんが言うたわ。
「プリン、ゼリー、まあ和菓子でもゼリー寒天とかがあるから、ゼリーでもええんかなあ」
一応、妥協をしてみる。
何だか引っかかるけど。
「なんや、アカンか?」
幸隆さんが言うたわ。
眉間にシワがよってる。
これはこれで、なかなか……やない!
話がズレてしまうとこやったわ。
「どしたんや?」
幸隆さんの目が点になっとる。
「なんでもないざ……正直、ぱっとせんねや。何やろ? 孝典さんの身体に優しいお菓子は出来んかあ」
「優しいお菓子? 薬いれんのか?」
幸隆さんが言うたわ。
オイオイ、薬入りのお菓子なんかあるか!
私は呆れ返った。
……ウーン
……ウーン
バタバタどん!
後ろの引き戸から、戸が外れ家のみんなが倒れ込んている。
この連中は何しとんや?
私と幸隆さんは呆れている。
「どうも、うるさくして堪忍やざ」
オカンがニタニタしとる。
タヌキが笑とるわ。
「あはははは」
幸隆さんが笑てるざ。
恥ずかしい。
「みんな! あっちいけ!」
私は大声を上げた。
けどみんなヘラヘラしとるだけやって!
……よし!
「幸隆さん」
「ん? なんや」
「ドライブや」
「は?」
幸隆さんが、驚いてる。
私からのお誘いに、ビックリしているわ。
予期出来んかったようや。
「とは言っても、変なとこ連れ込むなや」
一応、釘を刺した。
幸隆さんはしばらく考えて、にこりと笑ったざ。
この瞬間、決まりや。
「わかった、連れて行きたい場所がある。今すぐ用意してや」
幸隆さんが言うた。
「わかった、少し着替えてくるわ」
私は茶の間から立ち上がる。
「姉ちゃん、下着替えにいくんかぁ」
沙織がいやらしい目で、私を見とるわ。
このバカ妹!
無視や無視や
さて、ドライブで気分転換や!
本当にもう!
「あの、幸隆さんやったな」
「なんや、妹さんか?」
「姉ちゃん、食わんといて」
「沙織、すんまへん」
「お母さん、気にせんといて……実は……」
「えっ!」
「はい、そこへ行きますわ」
「それって!」
「ただ、見たいだけらしいんで」
はあー、少し化粧をして幸隆さんの前に来たのは、だいたいどれくらいやろ? まあ、時間は待たせとらんわ。
ん? なんや?
みんはが私を見とるわ。
「早苗、もうちょい、めかし込んでこいや」
オカンが言うた。
はあ?
「姉ちゃん、もっといい服や!」
はあ? はあ?
「早苗! がんばれ!」
ばあちゃんまで!
一体何なんや!
「早苗さん、行こうか」
幸隆さんが言うた。
うん! 行こう!
私は笑顔で、幸隆さんに同意したんや。
さてと……ドライブや。
この後、カチコチになるんやけど……
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