第41話
第七話 あの子にもお菓子を (後編)
病院 幸隆 見舞い
「よう」
「……なんや、ユキ」
「見舞いや」
「まんまやな」
「具合どうや?」
「見ての通りや」
「……あの娘とのメールは今でもしてんか?」
「早苗さんか、一応しとる。簡単やけどな」
「会いには来るんか?」
「いや、この頃来んな」
「忙しいんかもな、俺から言っとこか?」
「……」
「どうした?」
「別に、なんでもないわ」
「そうか」
「帰れよ、別に気を使うな」
「……帰るわ。ただし! 気は使う、じゃあ……そや、食事は喉通るか? 吐いたそうやな」
「……あん時のことか、あれ以来、流動食やな近づいてる」
「近づいてるとは?」
「……別に、とにかく固形物はアカンのや」
「ほうか、わかった。じゃあな」
バタン!
「ユキ、早苗さんに言える仲になったか……」
夜 松浦家 幸隆 一樹 リビングにて
「一樹兄さん」
「幸隆か、なんや」
「今日、早苗さんと会ったんか」
「ああ、最初は子供達の発表会のためにアオウザにいた。終わり頃、孝典と幸隆を手玉にとる娘を紹介するから、しばらく残ってくれと言われたんや」
「礼二さん? 早苗さんいつから、礼二さんと知り合ったんやそれに手玉って」
「ハハハ、連ちゃんからや!」
「ああ、連からか」
「連の学校のクラスメートに、妹がいるらしいんや。出所はそこからや」
「へえ、でっ、感想は?」
「内面はわからんが、綺麗な娘やな」
「え! 一樹兄さんが綺麗なんて言えるんか!」
「アホ! 母さん風呂上がったようやな、さて入るわ」
「いっしょ、しよか?」
「アホ!」
「嫁さんとは?」
「子供達と先に入ったらしいわ、飯は作ってくれてた」
「明菜さん飯旨いざ」
「ああ、飯に騙されたしな」
「熱い熱い」
「棒読みやぞ! 風呂入って、部屋戻るわ」
「今日は製作するんか」
「訳わからんぞ! 俺の後風呂入れや」
リビング 幸隆 母 ヤギ付き
「はあ、ええお湯やったわ! ん? 幸隆、どうしたんや?」
「今日、父さんとこ言ってたんか?」
「ああ、行っとったわ。施設でのびのびしとるんや。行った母さんが、バカ見たわ」
「まあ引退後の余生は、一人静かに暮らしたいが口癖やったしな」
「私をほっといてか」
「今でも好きなんやな」
「からかうなって」
「八木、そろそろ帰れって」
「あと、三十分御座います」
「幸隆、八木は仕事や! かまうなや」
「母さんに振り回されて」
「私は奥様のお役に立てて毎日を充実しております」
「……母さん、面白いしな」
「幸隆、あんたなぁ。ところで、今日、あの娘会社に来たんか?」
「ああ、来たわ」
「一人でか」
「礼二さんいっしょや」
「礼二、ふうん」
「ちょっとした情報をタカんとこで教えてもらった。教えたるわ」
「……ほか、頑張ってこいや。仕事よりは楽やろし」
「一樹兄さん、こき使うわあ」
「そやけど、幸隆は結果出すと喜んでたざ。孝典みたいに遊んでないって」
「松浦家の名前を使って虎の威、したくないんや! さて、部屋戻るわ。兄さん来たら部屋に戻った言うといて」
リビング 母 八木
「なあ、八木! 私があの娘に孝典の菓子を依頼した理由はわかるか?」
「はい、おそらくですが」
「聞こうか」
「あの娘さんが、孝典様……いいえ、今は幸隆様でしょう。幸隆と交わらせて見て、二人がどうなるかを試しております」
「せーかい! 少しツマランざ」
「しかし、不思議な娘さんです。孝典様、幸隆様、そして宮本様とも交わるとは……福井が狭いのかあの娘さんの宿命なのか? そろそろ、時間ですので今日はお暇致します。明日もお願いします」
「ほか、また明日や! 確かにや不思議な娘やわ。まあ、私が絡ませとるんやけどな」
「孝典様のメール相手に興味もったことから始まりでありますから」
「あの娘、なかなかやわ。内面もええわ、あの娘、魔法使いかもな。八木の名前知っとるかもしれんざ」
「まさか! では、失礼します」
「ハイハイ……さて、部屋行こう。子供達遊びに来るかも知れんし」
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