第40話
松浦商事にて
ずんぐりむっくりしたビルやなあ。
第一印象や。
ビルは四階建でそんなに高くはないんやけど、横幅広いんやって。
ショッピングモールみたいやわ。
いや? それよりは小さいか?
こんな場所があったのは知ってるけど、実際来てみると印象が違うんやわ。
「緊張してるんか?」
宮本さんの問に、首を横に振る。
「じゃあ、いくざ」
「はい」
中は広々したスペースやわ。
ビルな入るとまずは、案内に行く。
綺麗なお姉さんが、私と宮本さんを見る。
お姉さんは宮本さんをみると、深く一列をしたわ。
「宮本相談役、営業の松浦課長がお待ちしています」
「幸隆……失礼、松浦主任……これまた失礼、松浦課長をロビーへ来てくれるように言ってや」
「えっ?」
「お嬢さんいるざ! そう言うてみや」
受付のお姉さんが、半信半疑に頷き電話で呼び出しをかけてるわ。
「松浦課長がすぐに来るそうです」
「そか!」
宮本さんのが言うと、近くのソファを見る。
まあ、座ろうや。
心の声が聞こえて来たわ。
よう考えたら不思議なおっさんやわ。
少し聞いてみたいなぁ。
ただ、時間がないわ。
一度、沙織に聞いてみよう。
……とは言え、連くんの話ばかりになるかも知れんなぁ
そうこう考えてるうちに、幸隆さんが来たざ。
この前見た、背広姿といっしょやわ。
洒落た背広と言うよりも、動きやすい背広を選んだみたいや。
つまり安っぽいんや。
先程見た社長のあの背広姿の長男さんは、高そうな威厳のある格好やったけど……
「なんや礼二さん、それに早苗さん」
幸隆さんが言うた。
「さて、お嬢さん任せるざ。こっちは社長にまた会いにいくわ」
「え?」
私と幸隆さんが同時に言うた。
俗に言うハモったって。
私と幸隆さんは顔を見合わせて、私は赤くなった。幸隆さんは笑ってるみたいや。
「何しに来たんや?」
幸隆さんが言うた。
「明日の土曜日、家に来てや! 孝典さんのヒント欲しいんや。難解なんや」
私は言うた。
「デートは自宅か!」
「違うわ!」
「デートみたいなモンやろ? 例え孝典のことでもや」
幸隆さんが言うたわ。
視線は真っすぐ前を見ている。
私に視線を送ることはなかった。
「俺な、営業しとる。松浦の血があっても、その血を利用することは出来んのや。俺が今、この歳で課長までなったんは、自分の実力やと思うし思いたいんや」
「聞いた。孝典さんは」
「荒井が孝典のことを、ボンって言っとるのを聞いたやろ。あれな、孝典兄さんが何もせんかった証や」
そういうと、幸隆さんは私に視線を送る。
瞳の輝きは、二人共同じや。
同じやけど……
「とにかく、私を助けて下さい。お母さんの課題は難しいんや。身内の手助けが必要や。孝典さんは時間がないんや」
「わかった、しかし仕事優先やぞ! 手助けは二の次やでな」
決まったわ。
決まった……何が決まったか?
この課題は、幸隆さんとの共同作業や。
一つ言うけど、共同作業はケーキにナイフモドキで切ることばかりでなないざ。
それにまだまだ、そこまで私は考えとらんし。
けど、なんか心強いんや。
嬉しいんや。
「とにかく、明日は朝から行ったるわ! 十月やな明日で、急ぐぞ!」
「うん!」
「さて、戻るわ」
幸隆さんは戻っていく。
一度、私を見て軽く挨拶してえれに消えたわ。
もう明日で、十月なんかあ。
いたずらに時間使ったなあ。
はじめから、こうしていれば……
孝典さんの時間は少ない。
十月は取り戻すざ!
それにしても、宮本さんどれくらいかかるんやろ?社長との話は。
宮本さんと一樹
「礼二さん、幸隆はようやってます。孝典とは大違いや!俺からしたら、孝典は要らん奴や」
「そういうな、お母さんにも言われとるやろ」
「まあ、今となっては……ところで、礼二さんも遊び好きやなあ。あんな娘に」
「綺麗やないか」
「そうではなく、まあええわ!」
「アハハ……さて、話は終わった頃やな」
おわり
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