第20話
夜 家族に報告
「やっぱり、由美子ちゃんやわ」
オカンが笑いながら、アラレ食べてるわ。
オカン太……手遅れやから言わんとこ。
「オカン、太る! あっ、手遅れやったわ」
沙織! バッカァー
「沙織、明日御飯抜き!」
アラレ食べなら、オカンの一言や。
「オカン、ごめんなさい! 許してや。堪忍してぇ」
沙織が大声張り上げるわ。
ほんと、えかい声やって!
スピーカーは伊達やないなぁ。
「祥子、アンタもアラレ止めや。長生き出来んざ」
ばあちゃんが、呆れた顔して見とるわ。
私もお茶を飲みながら、笑っているって。
「まあ、やっぱりやな」
ばあちゃんは、真顔で言うたわ。
高塚屋ともう一つの店の仲違いを知っているんやな。
ばあちゃん、結構情報通やで。
「去年は西地区は、最下位やったしな。まあ、高塚屋のダンナがやる気見せんかったのが、原因やな。私らの意見を聞かずに、自分勝手に作って私らにはただ売れ! と言った態度やったしな。あれでは、勝てんて」
オカンかため息混じりに言うたわ。
ずーずーっ、渋いお茶をすすりながら……
「とは言え、今回は女将さんの梃入れが激しいわ、今回はやり方変わんのとちゃうん?」
私は言うたって。
ここは、私の意見も入れてもらわな。
「明後日、グループ会議らしいわ。そこに、早苗参加やでな」
「えー!」
私が、大声をだすと、みんなが私を睨むんやわ。
この時点で、決定してもたわ。
もう! ばあちゃん、オカンは仕方ないとしても、じいちゃん、オトン、沙織までも……ん? 咲裕美?
今、家族が四角い卓袱台に家族みんなで座っているんやけど、咲裕美の様子が可笑しいんやわ。
咲裕美の横が、うるさい沙織と影の薄いオトンに挟まれてたから、あんまり気付かんかったけど……やけに静かやわ。
咲裕美は、勝負ごとは大好きな子やで、食いついてくると思っていたんやけど、ここまで発言なし!
可笑しいなぁ。
「咲裕美、咲裕美!」
私、名前呼んだったわ。
……咲裕美、心ここにあらずや。
「咲裕美ねえちゃん!」
沙織が激しく揺さぶる。
「わっ、なっ、何やって!」
咲裕美が我にかえり、沙織に怒鳴りつけたわ。
「咲裕美ねえちゃん、どないしたん? 今日、なんかあったんか?」
「なっ、何もないわ! 会議終わったし、部屋戻るわ。風呂は後でええわ。それと、早苗お姉ちゃん明後日も付いてってええ?」
はっ?
咲裕美、どないしたんや?
咲裕美の目が、私に訴えかけてるって!
「ええんか?ムサイ話やで」
「構わんわ! ……別になんでもないんやざ! 社会勉強やでな」
咲裕美はそう言うと、二階の部屋に上がっていったわ。
一応、咲裕美は沙織と同部屋、まだ部屋はないんや。
「……なあ、早苗! アンタ、咲裕美に何かあったか知っとるんか?」
オカンが聞いてきたわ。
オカンらも、どこか可笑しいと、気付いてたんやな。
……
……
……
……
……
「オカン、わからんわ」
「はあ?」
「途中までは、咲裕美やったんやざ。女将さんとも意気投合しとったし……」
私はしどろもどろしながら、言うたわ。
「その後は、ねえちゃん」
沙織まで……もう。
「……確か、その後に女将さんの息子が呼びに来たわ。丸刈りのええ男で、女将さんに似た雰囲気のある男やったけど、そこからかなぁ」
うーん、これしか思い当たらんなあ。
……ん?
な、何、みんなが変な顔して、私見とるざ。
「早苗!」
オカンが怒鳴る。
そして、一言!
「ど天然!」
呆れた顔で言われたわ。
……何でや?
「ねえちゃん……そうやって、たくさんの男泣かしてたんやなぁ」
沙織が、バカにするって!
なんでぇー?
「……はあ、とにかくや、明後日は咲裕美といっしょやざ」
「オカン、なんで?」
「乙女心がわからんのか!」
オカンが怒鳴るって。
と、とにかく明後日は、咲裕美を連れてかなあんなあ。
場所は高塚屋の支店や。
因みに、今日は本店やったんやけど……
「なあ、オカン! 息子さん、来るんかな?」
「さあ、沙織、これは出たとこ勝負やざ」
???
よう、わからんわ。
とにかく明後日は、行かなアカン。
……その前に明日は、デートやわ。
場所はハーモニーホール、生ピアノの演奏会らしいわ。
孝典さんに、そこで聞いてみようっと!
つづく
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