第3話

 時間は夕方、夕飯の時間やって。


 食卓には、ハンバーグ、煮物、サラダ、味噌汁、ご飯、美味しそうや。

 例え、スーパーの総菜ばっかりであっもや。

 福井はスーパーが多く、総菜が多いんやっての。

 共働きが多い関係で、総菜がよう売れんのやわ。

 よう売れんは、よく売れるのいみやでな。



 「ねーちゃん、勝ち目あるんか?」

 妹がハンバーグをかぶりつきながら、なんか言うてるって。

 ここで、家族紹介や。

 桜井 沙織  十六歳、高校二年生になるようや。

 三女でたれ目……

 「うるさいって!」

 沙織、聞こえたんか?

 「早苗ねーちゃん、糸目やん」

 うるさいって!

 ほや、私と沙織の間にもう一人入るんやけど、今県外の大学に行っとんやわ。

 いずれ紹介するけど、一言、女や。

 美人三姉妹やってぇー。

 「まあ、そう言うとけば、無難なギャグやで」

 なんやってかあ?

 「耕平さん、夢見せたらんとあかんて!」

 オカン! もう。

 まあ、もう一人紹介や。

 桜井 耕平 オトンや、歳はいくつだっけ?

 「祥子さんと一緒やって」

 この時点で、年齢不詳決定やろな。

 職業 高校の歴史教師、これにへばり付きや。偉くなる気は毛頭ないんやわ。

 それと、養子さんや。

 じいちゃんは居ない。

 理由は、始めで言うたのぅ。

 

 ……少し、おや? と思た人いるかぁ? 

 えっ、何が?

 じいちゃんと、オトンや、二人共養子やろ。

 桜井家の七不思議の一つなんやけど……ちなみに後六つは知らんけど。

 絶対、女しか産まれんのや。

 理由は、わからん。

 だけど、ずーと、ずーっと!女しか産まれんのやわ。

 だから、男を養子に貰うんや。

 ばあちゃんも、オカンもそうしてる。

 そして、私に受け継がれているんやけど……

 「早苗、早よええ男見つけや!」

 「ほやざ、家訓知っとるやろ?」

 オカンも、ばあちゃんも!

 「はいはい、お役所仕事、公務員以外は男出はない」

 ご飯一口食べながら、答えたわ。  

 「銀行員は……まあ、考えるわ。だけど、大企業はあかんてな!今からの日本は、大きい企業は駆逐されてくんや。中小企業ばっかりになるんやぞ」

 オカンが言うわ。

 オカン、結構こんな話好きやけど、だからって私の未来も決め付けんなや。

 「そこまでや、祥子!なあ、早苗、家の家訓のもう一つ、男は外で働くの意味知っとるか?」

 ばあちゃんが言う。

 「確か、さくらいだけでは食えんからやろ?オトンらの給料も生活費になるからや」

 オトン、笑てる。

 苦笑いに近いって。

 「そうや、お菓子だけでは心許ないからやな」

 ばあちゃん、はっきり言い切ったって。

 福井は共働きが多いんや。

 理由の一つに、三世代が今でも多いんや。

 昔の良き姿を、結構色濃く残ってんのや。  

 私は良いと思う。

 都会人の核家族がカッコ良く映すテレビは、正直滑稽やったって。

 ……都会かあ。

 「どうしたんや?ねーちゃん、コレもらうわ」

 沙織の箸が、私のハンバーグを捕らえた。

 替わりに、沙織の厚揚げ捕ったるわ。

 「あっ、私の厚揚げ!」

 「沙織が悪いんや!……ところで、オカン、ばあちゃん、実はな……」

 私は昼間のお客さんのやり取りを話たんやわ。

 


 「へえーええ男かあ」

 ばあちゃん、方向が違うっての。

 「お母さん、早苗は、そのお客さんなお菓子を見繕う方法を聞いてるんやざ」

 オカン、ナイスやって。

 「知ってるわの!そう言わんなや!」

 ばあちゃん、ムキになったわ。

 「しかし、偉い難しいなあ。お客さんの置き土産のお菓子を何にするか? それも、都会人かあ」

 沙織が味噌汁啜りながら、他人任せな感想でほざいとるんやって。

 コイツは!

 「……なあ、早苗少し情報欲しいんやっての。明日、一度このお客さんにあって来てくれんか?」

 「え? 何で」

 ばあちゃん、何でや?

 「祥子、ほら……」

 「え? ……っあ、なるほどや、早苗、明日ここに配達な!」

 ……もしかして

 「この会社の違う所から、お菓子の依頼があったんや。その納品が明日なんや」

 やっぱりですか。

 家の店、結構上手くやってるなぁ。

 「早苗、明日、偵察やって」

 オカンのいやらしい顔に、知らん間に私も首をコクンとうなずいてたって。

 とにかく、明日、偵察や。

 そうとなったら……あれ?

 沙織を見ると……あっ!

 「沙織、その唐揚げ返してや!」

 声も虚しく、唐揚げが沙織の胃に消えてったわ。

 「沙織!」

 慌ただしいいつもの桜井家の夕飯はまだ続くんやって!

 

                  つづく

 


 

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