第4話 二人の稀人
ルドルに小雪さん、マオさんにチュンリーさん、四人は無碍な時間を思い思いに過ごしているが、ろくに物もないこの孤島では退屈ばかりが彼女達の心中を占めている様だ。
ここにやって来てまだ一日も経ってない俺だとてそうだった。
だからか、現状の俺にはこの館において居場所すらない。
とりあえず、壁にもたれ掛かり、居間にいる四人の動向を観察している。
「もう夜だねぇ、ご飯の時間だねぇ、だねぇ」
ルドルに言われ気付けば、この名も無き絶海の孤島は闇夜に包まれていた。
「あんたの分はないからねルドル」
「なじぇっ」
ルドルに飯抜きの罰則を言い渡したのはボーイッシュな彼女のマオさんだった。
どうやらここでは彼女が炊事を担当しているらしい。
「なぁエース、ちょっとウェンディ呼んで来てよ」
「俺が?」
「そうお前が、何せお前はまだウェンディと顔を合わせてないだろ?」
「……本当に俺が?」
ルドルの勝手な命令で、俺はこれから稀人という脅威と相対しなくちゃならない。
稀人は特に聖人を歯牙に掛ける傾向にあるって習ってたんだぞこちとら。
だから聖人っていうのは恵まれたものではない。
洋館から闇夜の外に出れば、意外と周囲の景色を目で捉えることが出来た。
その理由は空に浮かぶ月の明かりが、この孤島を照らしてくれるからだ。
「――……ウンコじゃ」
ウェンディという稀人を呼びに、
「ウンコじゃ、ウンコじゃ」
そこでは白いワンピースの水着を着た
「ウンコじゃ」
彼女は
「おうウンコ、何か用か、おう」
「初めましてウェンディ、俺の名前は壬生エース」
綺麗な白い長髪を携えた彼女。彼女の汚い口語体と清楚とした外見の組み合わせが珍妙に思えた。彼女は確かに――稀人なのだろう。教官から
「然様で御座いますか……それで、一体何の用じゃワレェ」
「夕ご飯の時間らしいぞ」
「そうですか、それはわざわざご苦労様です。今の作業に一段落ついたら向かいますから、おうウンコ、今のを寸分違わず復唱してみぃや」
彼女は
態度をころころと変えやがって。伝えるべきことも伝えたし、館に帰ってウェンディの人となりを聞き込みしてみるか? それともう一つ、星の位置から判明した情報を皆に伝えてやるべきか……それにしても、この世界の夜空は
☠ ✗ ☠
「ではでは、頂きますごっちそー様! はぁ」
ルドルは食事を一口で頂くと、あからさまな
今晩の食事は一口で頂けるほど少量だったのが原因なのだろう。
それと、食卓に添えられたのは赤と白のワイン。
つい最近、俺が飲める年齢に達したことへの配慮なのだろうか。
「エースぅ、お前今いくつ?」
俺のささやかな
ルドルは耳年増が確定したところで、俺は素直に現在二十歳であることを告げた。
「年なんて、いつから数えるの止めたかな……」
と、マオさんは言いながら頬杖を突く。彼女は一見にして凛々しく、ルドルが説明したような
チュンリーさんは今音楽に夢中になっている。
心配せずとも、俺は彼女からあのプレイヤーを奪ったりなどしない。
「エース、ワインだけは一杯あるから、遠慮なく飲んでいいよ」
「ありがとうマオ、ご馳走に預かる」
日々の
毎日
ルドルが頑なに赤を勧めてくれば、小雪さんが誇らしげに白を勧めてくる。
「沢山あるから、たっくさん飲んで、ちょっとほろ酔いになってルドルといいことしようよ」
ルドルは持前のセクシャリティを俺に向け、誘惑してくる。
この孤島に男は俺一人だけしかいない。頼りになる助け舟も俺ぐらいしか候補がいない。必然的に、
――その日の夜、彼女が現れたのは就寝しようとベッドに横たわっていた時だ。
「今晩は、
その女の名はブラッディーと言う。
彼女は真紅を基調としたドレスの
彼女は俺をこの孤島に叩き落としたその人だった。
千年前、聖人と亜人の
結果的に、その大戦は聖地の英雄の犠牲を
稀人の中でも彼女は悪名高く、二つ名は『平和への
未熟な俺は、彼女に命乞いでもするしか助かる術はない。
自身を惨めな振る舞いに陥れようとも、助かる方法は命乞いしかないのだ。
「ブラッディー、俺をここへ招き入れた理由は何だ?」
「貴方をここへ導いた理由など聞いてどうするので?」
彼女はこの質問に答えたくないらしい。
ならば、俺はこの境遇を
そして俺は彼女からある事を告げられ、不覚にも
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