封印されてた記憶1

 風がポニーテールにした金髪とワンピースの裾を靡かせる。腰のベルトには、魔導銃とそれを収容するホルスターが右側にあり、弾丸となる充填型の魔石が反対側に連なっている。魔石は、ベルトに嵌め込み式で留まる様になっている。

 色々吟味した結果、冒険者になりたてには、この武器が一番使い勝手が良い。とりあえず、アコライトになるまでは使い倒すつもりである。

「……」

 すーはーと、私は深呼吸して新鮮な空気を肺一杯に吸い込んで、吐き出すのを数回繰り返しリラックスする。

 眼前にはフィヨルドの渓谷と、ゆったりと流れる河。

 ごつごつした岩の突き出た場所に立っている。ウチのトゥーア領の境界である、ルド河はいつ見ても絶景だ。世界一周旅行が夢だった私としては、ヨーロッパも行きたい場所の一つだった。

 そして、このトロルトゥンガと同じ絶景を見るたび毎度叫びたくなる、私がいる。

「記憶チート最高! 神様ありがとう~~♪」

 思いの丈を叫び、そこに座り込み景色を眺める。大自然の素晴らしさを堪能しつつ、私は色々と考えを整理していく。

 この世界に生まれて直ぐには解らなかったが、最近本を読める様になってから、世界の理や神々や、それに付随する職位や魔法などについて調べて面白い事に気付いたのだ。

 なんとこの世界は、某有名MMOに似た世界観を持っているのだ。確かゲームタイトルは、『セラフィムオンライン』だったと思う。コンシューマーゲームバージョンも有ったので、どれがリアルに反映しているかは謎である。基本ベースの世界観はどれも同じだったと思う。

 リアルは、似ていても色んな所が違っている。例えば職位は殆ど同じ種類があるが、職位ごとの武器や防具の装備は、差異が際立つ。転職も各職位ギルドとかではなく『神殿』で行うとか、神様と契約するとか他色々だね。アイテムなんかも、色んな物や名前もチャンポンされてて面白い。もしかしたら、全部のセラフィムシリーズが混じっているのかもしれない。


 そして、さて、冒険しようか! っていう段階では、武器に悩まされた。

 いやはや武器の装備事情を知った時の絶望感は、今思い出しても泣けそうよ、本当に。

 ゲームの装備可能武器は、あらかじめ決まっていたんだけど、リアル事情ははっきり言って滅茶苦茶違ってた。

 冒険者になりたては、ステータスに全て左右される。

 剣を扱うなら腕力(strength)が、最適値必要で、素早さ(agility)は、ある分だけ剣を振り抜く速さに影響する。それは、剣の形状にも左右される。

 杖なら知力(intelligence)と器用さ(dexterity)で、魔法の威力とコントロールと言う感じである。

 一番酷いのは、弓だろう。腕力(strength)素早さ(agility)器用さ(dexterity)運(lucky)の4つが最適値必要だなんて! 最初から難題を突き付けられた訳です。

 ナックルなら、腕力(strength)素早さ(agility)耐久力(vitality)で、ごり押しできるらしい。但し、マゾい人向きだそうな。痛みも快感位でないと難しい。

 鞭なら、腕力(strength)器用さ(dexterity)が最適値要るけど、剣よりも少ない。個人的に女王様気分になりそうなので、避けたい。

 銃は色々な種類があり、購入費用さえ何とか出来れば、ステータスを理想的に割り振れる。

 その結果、魔導銃と言う特殊装備になった。魔導銃は、組み込まれた魔法陣により、重量は軽く、発砲の際の反動も無い。弾丸は、魔弾と呼ばれるもので、標的に着弾すると魔法が発動する。火球ファイヤーボールは、ファイヤーバレットの魔石で発動して、水球ウォーターボールは、アクアバレットの魔石で発動などである。他にもあるが、持っているの予算で買うのは、この二種が限界だった。


 で、私は考えた。

 何の職位につくかを!!

 MMOの時に各職位を手広くプレイしたのだが、如何せん現実もまた縛りが多い。

 ナイト系なら戦闘力があり、馬や幻獣を乗りこなせる。シーフ系は素早さと器用さ。魔法で殲滅なら、マジシャン系を。商人や鍛冶師となるとぶっちゃけ冒険には向かない。回復もテレポートも出来るプリースト系か、戦う僧兵のモンクとかがベストチョイスかなぁ、と思う。それにウチのお隣さんちは、アンデットの地域なので、ソロでもプリーストの本領発揮が出来るのだ。

 エクソシストを極めて、爆殺(死んでるから殺ではないかもしれないが)ヒャッハーーーッ的な「おまいらまとめて天国に逝っちまいなー!」が可能なのだ。

 モンクは、撲殺系の戦闘職なのでナイト寄りにはなる感じではある。

 領地の事を考えたら、祓魔プリーストを目指すのだけど。下級プリーストレベルが最大限になると、上級にクラスチェンジする事が出来、そうすれば無属性魔法が使える様になり、幅広く行動出来るのだ。


「ふむ、何はともあれ、まずする事は、転職の為にレベル上げだよね! よし、頑張ろう!!」

 

 拳を振り上げ、私は気合いを入れた。

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