第22話 -魔女の本音-
俺が今まで出会った人の中で一番何を考えているのか分からないと思った少女は陽伊奈茉子ではなく、森羅佐奈だった。
彼女を知っている人間であればほとんどがこう答えると思う。誰であれ分け隔てなく接する人懐こい少女――と。
何時から居たのだろうか。
泣き崩れた顔を上げると目の前に森羅が佇んでいた。
その出で立ちは初めて出会った時と同じで髪型をサイドテールからポニーテールへと変え、服装は制服から巫女服へと変貌していた。
「まいまいにとってこの結末は幸せだったんですかね。大好きだった人との記憶を捧げてまで叶えるだなんて佐奈には絶対にごめんですよ」
「森羅、お前――」
「零二君もしかして怒ってるんですか?だったら怒る相手間違えていませんかぁ?佐奈は当然のことを言ってるだけですよ?まいまいが何で零二君との記憶を失わなければいけないんです?それはあの魔女がそうしたからでしょう?」
「それは!!それしかなかったからだろうが!!」
麻衣さんの妹である杏璃ちゃんを救うためには俺との記憶か杏璃ちゃんとの記憶、そのどちらかを代償に差し出す必要があった。
それならば俺との記憶を差し出すしか道はなかった。
だというのに、森羅はそんな麻衣さんをゴミを見るかの様な目で見ていたのだ。お前は選択を間違えたとでも言うべきかの様に――
「森羅、お前に何が分かる。麻衣さんがどれだけの想いで選んだのか、どれだけの想いで俺に告白したのか!!」
「えぇ、分かりませんよ。佐奈にはちっとも分かりません。大体何でその二択なんですか?記憶を代償にするのなら他にもあったはずですよね?佐奈達と過ごした高校での記憶や中学時代の記憶。他にも色々ありますよ?それなのに、何であの魔女は零二君との記憶と杏璃ちゃんとの記憶。そのたった二つだけを選ばせたんですかねぇ?これが悪意無くして何だと言うんですかぁ?教えてくださいよ零二君」
「ッ――!!」
言葉に詰まってしまった。
何も言い返すことが出来なかった。
森羅の言う通り何でその二択なんだ?
麻衣さんにとって一番目と二番目に忘れたくないであろう記憶。
よりによって何でその二つが天秤に掛けられたというんだ?
「眞子……お前は――」
俺は眠り続ける麻衣さんを胸に抱き、矢丘の魔女である眞子へと視線を向けた。
森羅が現れたと言うのに顔色一つ変えずに佇み続ける一人の少女。
森羅の言う通りなのか?眞子……お前は麻衣さんにわざとあんな選択をさせたと言うのか?
「違う」
疑心暗鬼となる想いが頭を駆け巡ろうとしたその時、眞子が俺の考えを打ち消すかの様に言葉を放った。
「違う。違うんだよ零二。ボクは彼女のことを想ったからこそあの二択にしたんだよ」
「違う?何が違うと言うんですかぁ?お前がまいまいを泣かせる代償を突きつけた癖に。あの時もそうだった。あの魔女も佐奈のご先祖様を見捨てた。永遠に覚めることのない夢に追いやって一人逃げ出したんだ!!」
森羅の叫び声が夜空に木霊する。
迫真の想いが森羅から放たれる。今まで森羅の中で燻り続けた想いが爆発した瞬間だった。
「エルーシャ=ローレック。いえ、佐奈の調べた限りでは最後の名は八重垣桜でしたか?まぁ、何でもいいです。ご先祖様を見捨てて逃げたあの女と同じでお前もまいまいからも零二君からも何もかも奪っていくんですか?二人を誑かした悪逆非道な魔女が――」
「違う!!ボクも桜も純粋に願いを叶えたかった!!!桜が何でボクと出会ってから時々思い馳せていたのかようやく理解できたよ。森羅佐奈――君は全てを勘違いしている。ボクも桜も何一つ間違ったことはしていない。本当にこれしかなかったんだ」
「はぁ?理由になってませんよ。佐奈を馬鹿にしてるんですか?」
「眞子、頼む……。説明をしてくれ。俺は、今でもお前を信じたい……。俺を助けてくれたお前がわざとあんな選択を選ばせたとは思いたくないんだよ!!」
誰よりも他人の苦しみを知り、罵られようと蔑まされようと最後には矢丘の魔女として願いを叶え続けた存在を俺は悪と思えないんだよ。
頼むよ、眞子……俺とお前は一心同体なんだろ?
俺達は二人で一つ。だからお願いだから俺には隠し事だけはしないでくれ。
「……あぁ、その通りだね。ボクは君だけには嘘偽りはつかないよ。それは会った時から変わらない事実。はっきり言うよ。八舞麻衣の妹である八舞杏璃の命の灯火はあと数刻で消滅するところまで迫っていた。そんな彼女を救う為には代償を厳選する必要があったんだよ。でなければ本当に彼女自身の記憶が半分以上無くなってしまっていたからね」
「その厳選した記憶が何で俺との記憶か杏璃ちゃんとの記憶になるんだ!?杏璃ちゃんの病気は通常であれば莫大なお金がかかることは聞いた。それに時間がないことも。そんな通常であれば叶えることが難しい願いの代償が麻衣さんの恋の記憶と妹の記憶の二つしか選ばれなかったんだよ!?俺とのたった2週間程度の記憶が釣り合うって言うのか!?」
眞子の言う通りなら眞子自身が代償を選ばずに契約そのものに任せた場合、麻衣さんは記憶の大半を失う可能性があった。
それが何故たった2週間程度の俺との想いで叶えることが出来たんだ?あまりにも矛盾していた。信じろと言われても信じることが出来ない程の。
だが、眞子は俺の言葉に静かに頷く。
そして――
「そうさ。その通りなんだよ零二。八舞麻衣の君への想いはたった2週間程度でも何者にも勝るとも劣らない存在となっていたんだよ。君にもそして森羅佐奈にも。そしてボクにもその気持ちは分からないだろうね。いいかい?恋する女の子は強いんだ。だからこそ、短い期間の記憶でも君という存在は八舞麻衣の中に深く根付いてしまっていた。それこそ妹である八舞杏璃と同じ程の。妹を助ける代償と成り得る程に、ね」
「っぁ……何でそんなにも俺の事を……」
「だから彼女自身言っただろう?八舞麻衣は君の事が大好きなんだってね」
「ぅ、ぁ……ぁ、ぁぁぁぁぁぁ――」
止まりかけていた涙がまた溢れだしてくる。
穏やかな顔で眠り続ける麻衣さんの頬へとポタポタを俺から流れ出る雫が一つまた一つと落ち始める。
こんな不甲斐ない俺をそこまで想っていてくれたんだな……嬉しかった。俺自身麻衣さんも妹である杏璃ちゃんも助けたいと心の底から思っていた。
麻衣さんの中で根付いた俺との想いがそこまで強く、麻衣さんの半生とも杏璃ちゃんとの想いとも並べる存在になっていただなんて……
「ボクだって本当は嫌だったさ。何で恋する女の子から記憶を奪わなきゃいけないんだ。でも、これしかなかった。彼女が君との記憶を選ぶと最初から分かっていた。そう意味であればボクは森羅佐奈が言う様にひどい魔女なんだろうね。でも、ボクには彼女が築き上げてきた人生も、彼女自身が歩むことになった妹への想いも消させる訳にはいかなかったんだよ!!」
「ッ――だったらあの女は!!八重垣桜はどうだったって言うんですか!!!」
「桜も同じだったはずさ。不甲斐ないけれど、ボクが桜と出会ったのは森羅佐奈。君が言うご先祖と桜が出会い、コトが終わってしまったかなり後だった。だからその時の桜の想いは分からない」
「なら、お前がそんなこと言うなよ!!佐奈が……森羅の一族が今までどれ程魔女という存在を憎んできたと思っているか分かるって言うんですか!?」
森羅の悲痛な想い。
これが森羅の本性であり心からの想いだったのか。
一族と言う存在に縛られて生きてきた少女。生まれてから今の今までずっと魔女への恨みだけを込め続けて育った少女……
「すまなかった。桜に代わって君に――森羅の一族に謝らせてもらう。ボクに出来ることなら何でもするつもりさ。言い訳になるが魔女の契約というものは理不尽の塊なんだよ。前以って準備を行えば今回の様な代償の選択もある程度行うことはできる。けれど、それが突発的な願いの場合――1秒すら惜しむ様な状況の願いは全て魔女の契約が選定することになってしまう。その結果が君のご先祖が永年に醒めることのない夢の世界に旅立ってしまった。その結果が零二を永遠に死なせることが出来ない存在へと変貌させてしまったんだ」
「眞子……お前は――」
「零二。ボクは今でも君に申し訳なく思っているよ。本当はあのまま楽に眠らせてしまえば良かったのではないかと。君にこれから訪れる様々な人との出会いと同じくやってくる大切な人との別れ……ボクと同じで君の時は永遠に止まったまま前に進むことがないのだと思うとボクの選択は間違っていたんじゃないかと悔やんでも悔やみきれない気持ちになってしまうんだよ」
「ッ――お前が――お前がそんなこと言うのかよ!!」
言うに事欠いてお前がそれを言うのか!?
頭に血が昇るのを感じる。だが、俺はそれを止めることもせず、眞子へと言い放った。
「俺はお前に助けてもらって後悔したことなんて一度もないんだ!!お前が居なかったら俺は死んでいたんだぞ!?死んで喜ぶ人間が何処にいるっていうんだよ!!!それに森羅も森羅だ。お前の話を聞く限りお前のご先祖様ってのは助けられた事を恨んでたのか!?お前達周りの存在が勝手に恨んでいるだけなんじゃないのか!?永遠に醒めない夢だろうとその人は夢の中で八重垣桜と楽しく過ごしているんじゃないのか!?お前は言ったよな。この世界が夢なのか現実なのかと。だったら答えてやるさ。俺はどっちでもいい。俺が――俺自身が!!俺の意志でこの世界に立っているのならそこが夢だろうと現実だろうと関係がねぇ!!!横からの物言いでご先祖様や俺を憐れんだ目で見るんじゃねぇぞ!!!」
「はぁ?な、何で零二君にそんなこと言われなきゃいけないんですか!!佐奈のご先祖様の事が貴方なんかに分かる訳ない!!!どれだけアタシ達……佐奈達が苦しんできたと思うんですか!!!」
「だからそれがお前の――」
「もういい。もういいんだ零二」
何で止めるんだよ眞子!?
周りが押し付けただけの恨みと怨念が何でお前や八重垣桜が苦しまないといけなくなるんだよ!!
『零二。君がそんなにも想ってくれて嬉しいよ。だけど、ここからはボクが彼女と向き合わなきゃいけない。桜から受け継いだ矢丘の魔女はここで投げ出しちゃいけないんだよ』
眞子は達観した微笑みを浮かべていた。
何をする気なんだ……?何か嫌な予感がヒシヒシと胸を痛めてくる。
「桜はずっと君のご先祖様のことを悔やんでいたよ。ボクと出会ってからもずっと……彼女はこの空に輝く月を見上げながらお酒を飲むのが大好きだった。お酒に弱い癖に一人儚げに……そして決まって酔った後には泣き言を言っていたよ。どうしてもう会えないのかと。どうしてあの時もっと早くあの人の元に辿り着けなかったのかと。ボクが願った想いのせいであの人の人生が狂ってしまった――とね。ボクは桜に尋ねることが出来なかった。何が起きたのかと。何でそれ程までに泣いているのかと。けど、そんな桜との生活も長くは続かなかった」
「え……?」
「魔女と言う存在は例外なく不老不死。それなのに桜はもうこの世にはいない。何故だと思う?不老不死の存在が死ぬ理由なんて限られているのだから理由は一つしかないのだけどね」
俺がずっと疑問に思っていた八重垣桜の死の理由……
過去世界中で存在していた魔女は何故ほとんどいなくなった?部室で読んだ資料を思い出す。
あの資料にはこう書かれていたはずだ。
――彼等は一つの理に辿り着いた。魔女を殺す術を。
「魔女狩り……」
「そう。魔女の存在を邪魔だと最初に認識した存在――それは協会。そのトップだった聖女さ。魔女の唯一の弱点。それはね、聖女の血なんだよ。神に祝福された処女の血。それを魔女の体内に一定量流し込めば魔女は不死という存在性を失われ死に至ってしまうんだよ。ボク自身その事を知ったのは桜が手遅れだと気づいてしまった後だったのだけどね……桜はボクといる時は優しい母であり、姉の様な存在だったけど諦めきれなかったんだろうね。桜はお酒の中に聖女の血を少しづつ……本当にほんの少しづつ含めて飲んでいたんだ。自分への戒めだったんだろうね……」
「……あの女はそれでどうなったんですか?」
「あの夜は綺麗だったな。桜が矢丘の魔女と呼ばれていた頃に願いを叶えていた場所は自然公園にある桜の大樹がある場所だった。あの夜にボクは桜へと呼び出されて理由も分からずに向かったのだけれど、着いた時には全てが終わった後だったよ。既に致死量に達していた桜は既に息絶え絶えだった。慌てて桜を抱き抱えたけど彼女は最後の最後にボクに謝ってたなぁ……ごめんね、と。眞子だけは後悔しない生き方をするんだよ、と。そして最後に――千夜。もうすぐ君に会いに行く、と……これが桜の最後だった。だからボクはあの場所を彼女だけの聖域にした。本当は森羅佐奈。君のご先祖である桜が愛した人の元へと送りたかったけど無理なのは分かっていた。だから、ボクしか入れない様にボク自身の力を使って封じたのだけど、まさか零二に破られるとはね。まぁ、それも当然のことなんだけどね」
千夜……それが森羅のご先祖様の名前……か。
偶然とはいえあの場所を見つけてしまったことに今更ながら罪悪感と後悔が襲ってくる。
「何なんですか……本当に何なんですか!!佐奈は、何のために今まで苦しんできたって言うんですか!!両親にも祖父母にも魔女を探して殺せと呪怨の如く囁き続けられて……日頃からあの吐きそうになる味の血を飲まされ続け……気づけば街全体に不快感しか感じない臭いが充満していることに気付くし……本当にアタシは!!佐奈はどうすればいいっていうんですか!!!」
両手で頭を掻き、乱れた髪を揺らし続ける森羅は泣き叫んでいた。
自分が今まで恨んでいた魔女からの言葉……森羅自身どうすればいいか分からないからこその行動だった。
そんな様子を見て俺はどうすればいい……数百年に続く森羅一族の怨念を一身に受け続けて育った森羅。
その時だった。
「そうだよ。あは……何もかも魔女が悪いんですよ。あははは……ねぇ、聖女様……」
突然豹変したかの様に乾いた笑いをし出した森羅は懐から一つの小瓶を取り出す。
その中身は真紅に輝く液体……まさか!?
「聖女の血……なのか」
「あはぁ。正解ですよ零二君。森羅一族は世界中から聖女の血を集め続けた。そしてその憑代に選ばれたのが佐奈なんですよ?今なら聖女様の気持ちが分かる気がします。魔女は邪魔……存在してはいけない悪魔の信徒。奴らのソレは呪いですよ。だから早く零二君も解放してあげますね」
魅入られていた。
今までの存在理由全てが崩された森羅の眼は澱み焦点が定まっていなかった。
誰だコレは……今目の前に森羅の姿をしているこの少女は一体誰なんだ……?
「零二……今すぐに逃げるんだ。アレは危険だ。だから早く!!」
「な、何を言って!?お前を置いて逃げれるはずがないだろうが!!!」
「二人とも駄目に決まってるじゃないですか。それに陽伊奈眞子。貴女言いましたよね?何でもするって。だったらコレを飲んでくださいよ。神に祝福された処女の血を飲んで死に至るのは悪魔である証拠じゃないんですか?貴女が純粋に人の願いを叶える存在なら神が見放す訳ないじゃないですか。あは、それともやっぱり飲めないんですかぁ?」
「な、何を言って……」
支離滅裂だ。
森羅は今自分で何を言ってるのか理解できているのか!?
だが、そんな俺の想いとは裏腹に眞子から信じられない一言が放たれた。
「……いいよ、飲もうか。君の気持ちがそれで治まるのならボクは全てを捧げるよ」
「眞子、お前は何を言って!?」
「これ以上彼女に何を言っても無駄なんだよ。彼女は既に聖女の亡霊に囚われている。だったらそれを止めるのもボクしかいないじゃないか。零二……君にはすまないと思ってるよ」
ゆっくりと歩き出した眞子は俺に謝ると同時に森羅の前で止まり、真紅の液体が――聖女の血が入った小瓶を受け取っていた。
何をしてるんだ……何をしてるんだよ……
「これから君に何が起こるかボクにも想像が出来ない。魂を共有する君にも影響が起きるのか……ボクの肉体だけが死滅するのか……」
「何を言ってるん……だよ。悪い冗談は辞めろよ……」
「今だから言うけどボクはね、きっと君のことが好きだったんだろうね。八舞麻衣の恋路を奪ってしまったボクにそんなこと言う権利なんてないのにね。だからこそ、ボクは君にだけは嫌われたくなかった。願いを叶える魔女としては失格とも言える想いを持ってしまったんだよ。君さえいれば、他には何もいらない、とね。……あぁ、桜もこんな気持ちだったのかな。本当にごめん。君だけが生き残ったら君だけを悠久の世界に残してしまうことを申し訳ないと思う。一生恨んでくれて構わない。だけど、お願いだ。ボク以外の魔女にだけはその恨みを向けないでほしいな」
言いたいことを言い切り、小瓶の蓋を開けた眞子は微笑んでいた。
うるせぇ……さっきから勝手なこと言いやがって。
何で満足した顔で微笑んでるんだ。何で勝手に告白してきてるんだ……麻衣さんも茉子もいい加減俺の気持ちぐらい考えてくれよ。
言うだけ言ってさよならとかそんなの野良犬にでも喰わせろ馬鹿野郎が!!
俺は……抱き抱えていた麻衣さんを地面へとゆっくりと下ろす。
気持ちを落ち着かせろ……眞子には悟られるな。
マジでふざけるなよ?何で一人勝手に死のうとしてるんだ。
何で勝手に俺の気持ちを決めようとしてるんだ。何で勝手に想いを伝えるだけ伝えて逃げようとしてるんだ!!
「森羅佐奈。君も恨みを持つのはボクを最後にしてほしいな。桜に代わって君の一族の恨みをボクの死を以って打ち消してほしい。だから――」
「……あは。そうですね、約束しま――ッ!!」
眞子が小瓶を口元へと持っていき、傾けだしたその瞬間――
俺は駆けだした。
眼を見開く眞子。止めようとする森羅。
だが、そんな動きで俺が止められるか!!!
右手を伸ばし眞子から聖女の血が入った小瓶を奪い取る。そして――
「んっ――!!!」
「なっ!?零二何を――!!」
「な、にをやってるんですか――!?」
俺は一気にソレを飲み干した。
生臭く、苦みしかないドロっとした舌触りの液体が喉を通り抜けていく。
これが神に祝福された処女の血だと?まさに悪魔の様な味だった。
気持ちの悪い感覚が体内へと入り込む。
しかし、身体そのものに変化はない――そう思った時には全てが始まっていた。正常な意識があったのはここまで。
痛みとも、魂が引き裂かれるような苦しみとも取れる感覚が全身を駆け抜けた瞬間――俺の意識は暗転したのだった。
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