第19話 -この世界は夢か現か幻か-

「零二君は次何歌いますか~?」


 密閉された狭い空間にエコーがかかった森羅の声が響き渡る。

 先程まで曲に合わせた振付けを踊りながら歌っていたというのに息切れはなく、歌い終わると同時に肩がぶつかる距離に座り込んだ森羅はテーブルに置かれたオレンジジュースを口に含み満足げにこっちを見ていた。


「次ってもうこれで何曲目だよ……俺あまり音楽聞かないから歌いたいなら続けて歌えよ。つーか、話をしたかったんじゃないのかよ」


「あは。せっかくのデートなんですからまずは遊びましょうよぉ。それじゃ、アタシが歌っちゃいますね……えい」


 何が楽しいのか鼻歌を口ずさみながらリモコンに慣れた手つきで番号を入れ出す森羅。

 その様子を烏龍茶が入ったグラスを傾け飲むと同時に俺は嘆息気味に溜息を洩らした。

 ここはどの街にも幾つかあるカラオケボックス。話をすると言っていた森羅に付いて行った俺は何故か森羅と共に歌い続けていたのだ。

 本当に何がどうしてこうなったんだろうか。


 放課後になり予定通り部活に出れないことを再度麻衣さんへ謝った俺は森羅のいる1組へと赴いた。

 理由はもちろん森羅と話をするためだ。

 そんな俺の事に気付いた森羅は雑談していたクラスの友人達と別れるといつもの人懐こい雰囲気を纏って小走りで近寄ってくるとそのまま俺の腕へと抱きついてきたのだ。

 身長差もあり俺の二の腕に顔を摺り寄せてくる森羅から女子特有の甘い香りが漂い、柔らかい感触が左腕全体を襲ってくるが正直その時の俺はそんなのを味あう余裕なんてどこにもなかった。

 だってあれだぞ?

 本性はいざ知らず、普段の森羅は人懐っこさを全開にして過ごしている。実際森羅が自分のクラスではどう過ごしているかなんて俺は知らないし、知る気もなかったが1組の教室から感じる興味と嫉妬が混じった視線がものすごくきつい。

 教室の中に残っている男子達は俺の方を猛烈に睨んできてるし、女子は女子でキャーキャーいいながら興味深そうに俺達を見つめていた。

 周りから見ればきっと俺達は彼氏彼女な関係に見えるんだろう。

 きっと男子からも女子からも人気あるんだろうなぁ、こいつ。と思いつつも、俺は居心地の悪さに森羅を引きずるように1組の教室を後にしたのだった。


 確かに森羅は可愛いと思う。

 これは……もしも。本当にもしもの話だ。

 引きずっているというのに腕から離れようとせず、サイドテールにした髪を揺らしながらあどけない表情で見上げる森羅と別の出会い方をしていたとしたら。

 唯一の共通点である魔女探しを抜きにして森羅と出会っていれば俺も惚れていたのかもしれない。

 けれど、そんなIFの世界には興味なんてなかった。

 俺は森羅の本性を隠した嘘偽りの表情なんかに惑わされたりなんかしないし、森羅自身も分かっててわざと行動している様に見える。

 森羅の話を聞くことで俺と森羅はもう二度とこんな風にふざけ合うことが出来ない予感がする。

 けれど既に覚悟を決めた俺は早く森羅と話をして魔女との因縁とやらを究明したかったのだが、功を焦っていた俺は一つだけ過ちを起こしていることに気付いたのは今となっては全て後の祭りだった。


 1組の教室から学校から出る為には当然自分のクラスである3組の前を通ることになる。

 放課後になった早々教室を後にした俺はその数分後にまた自分のクラスの前を通っている訳なのだが、当然教室の中には未だクラスメイトが多数残っている状況だった。

 そんな前を腕に抱きついた森羅と共に通ったらどうなるだろう。

 俺達に気付いたクラスメイト達は口々に小声で羨ましいだの、三股勇者だの誹謗中傷と言ってもいい内容を口にしていた。全て俺にも届いているんだからな。

 正直森羅とは何もないと言いたかったし、三股勇者って何だよとも言いたかった。けど、ここで足を止めたらまた小悪魔モードの森羅が余計なことをするのが目に見えていたし、何より部活を休むと謝ったばかりの相手である麻衣さんがジト目で睨んでくるわ、笑いを堪えている茉子の姿や悔し涙を浮かべている相羽を宥める上宮達だとかを見て俺は本気で一刻も早く学校から脱出するために足を速めた。

 今思い出しても明日学校行くの憂鬱になってくるよ……


 その後も結局学校から出て何処で話すかと思えば繁華街に一直線で森羅からカラオケに行きましょうだぜ?

 カラオケの個室内なら静かに話せるかと思えば、普通に歌い出すし。俺も歌わないと話しませんとか言い出すし、マジなんなのコイツ。


 と、少しぼーっとしていると部屋全体にどこかで聞いたことのある音楽が流れ出す。

 確か去年ぐらいに放送されたアニメのエンディング主題歌だったはず。真白が好きだとかで俺自身も見たことがあるアニメの曲だということを思いだした。

 小さい頃から一緒だった幼馴染が些細なことで仲違いをし、そこから離れ離れとなった二人が高校で数年ぶりに出会う恋愛寄りのラブコメアニメ。

 さっきからテンションが上がるアップテンポ系のアイドルソングだったりよくテレビで聴く女性シンガーソングライターの曲ばかりを歌っていたが、今流れている曲は反対のスローテンポで流れる悲しい歌でもあった。


 伴奏が始まると同時に歌詞が流れるモニターの前へと移動し、モニターを背にして俺を見据えてくる森羅。

 歌詞を全て覚えていることに疑問は覚えなかったが、自然と俺も森羅と向かい合い歌い出すのを待った。

 突然の別れと失恋してしまった歌詞から始まる歌。伴奏が終わり、その歌詞が森羅の背に隠されたモニターに映し出された時、森羅の握ったマイクから声が発せられた。


「零二君はこの世界のことをどう思っていますか?」


「え?」


 それは俺の知る歌詞を歌ったのではなく、俺に対しての問いだった。


「零二君が今見ているアタシ。耳に届くアタシの声。――貴方の前にいる佐奈は現実の存在なのだと疑わずに信じることが出来ますか?」


「森羅……何を言って……」


 ピアノの旋律が森羅の声と合わさり俺の心へと響き渡ってくる。

 森羅は何を言おうとしている?俺の目の前には確かに森羅がいる。真剣な表情で俺を見据えている。

 そんな森羅の存在が現実なのか信じることが出来るかだと?現実じゃなかったら何だと言うんだ?


「あは。ごめんなさい、少しいじわるな質問でした。けれど、零二君には知ってもらわないといけない。魔女ではないのに魔女と同じ臭いがする貴方が夢から醒める為にも」


「俺が夢から醒める?」


「そうだよ。零二君。佐奈には零二君に何が起きたのかまでは知らない。けれど、零二君は魔女を知ってるよね?矢丘に棲まう魔女――陽伊奈眞子のことを」


「やっぱりお前は知っていたのか」


「知っていたというより、つい先日知っちゃったというのが正解。日曜日に零二君とまいまい。それと魔女であるあの女が話しているのを見た時、佐奈は全て確信したの。あは」


 やっぱりあの時最後に聴こえてきた声は森羅だったのか。実際眞子も森羅がいることには気づいてた様だったから俺は麻衣さんを優先させるためにあの桜の大樹の場所から離れた訳だが……


「どうしてお前はそんなにも魔女を探して……恨みを持っているんだ?」


 曲が間奏へと移り、音が無くなった。高校で再開した幼馴染との邂逅。想いを募らせ続けた女の子の男の子への想いが歌詞には綴られているはずだ。

 しかし、男の子には既に付き合っていた女子がいた。悲しみに暮れる女の子の気持ちが本来なら歌われている場面。


「佐奈にはどうして零二君があの魔女と親しくできているのか理解できないです。魔女という存在は災厄を呼ぶのだと魔女研の資料を見て感じなかったんですか?願った想いも忘れ結果だけが残される。当人の培ってきた記憶は失われる。そんな悪魔の所業を零二君はよく許せますね?」


「森羅お前は間違ってる……眞子を。陽伊奈をよく知りもしないで魔女だからと決めつける――」


「黙れ――」


「ッ……」


 全てを拒絶する声だった。


「よく知りもしないのは零二君の方でしょ?あは。貴方は魔女の何を知ってるんですか?魔女が善意で願いを叶えてくれるとでも思ってるんですか?佐奈は知ってますよ。まいまいは妹を救うために魔女を探してるんですよね?でも、あの魔女は必死に探すまいまいを見て見ぬ振りをしている。あたかも仲が良い友人の様にまいまいの苦悩だけを聞いて後は放り捨てたまま。あの魔女も聞いた通りの魔女と同じだった。魔女エルーシャと同じ人の不幸を見て笑う魔女と一緒なんだよ?」


「違う!!眞子はそんな人間じゃない!!!麻衣さんが悩んでることも知っている。けど、眞子は――あいつは待ってるんだ。麻衣さんが本当の気持ちに気付く為にも」


 森羅は勘違いしている。きっと俺達があの時八重垣桜が眠る桜の大樹のある場所で話していた時、近くで全て聴いていたんだろう。

 何の因縁かはまだ分からないが、森羅は八重垣桜と関係がある。魔女エルーシャと森羅自身が言ったのがその証拠だ。森羅から感じる深い憎悪。一体何が彼女をそうしているというんだよ……


「はぁ……零二君の戯言は耳障りに聞こえてきますねぇ。分かりますかぁ?零二君が魔女の事を話す度に臭い……とっても臭い魔女の臭いが佐奈に漂ってきてることに。零二君は本当にどうしてそんなに信じることが出来るんですか?この世界が貴方の見る夢なのかもしれないというのに」


「は?この世界が俺の夢だと――?」


「零二君。貴方実は一度死んでたりしませんか?4月6日に起きた交通事故。零二君憶えはありますよね?貴方が被害者である事故なんですから」


「それは……」


「大事にはなってませんが、ニュースになる程に結構大きな事故だったんですよね。でも、零二君は偶々怪我をせずに済んだと皆に言ったんですよね?」


「そう、だ……」


 森羅の言葉一つ一つが内に吸い込まれていく度に心臓が昂る。これ以上は聞いてはいけないと訴えかけてくるかのように。

 気持ちが抑えられない。恐らく俺の考えていることは今全て眞子にも通じているはずだった。

 だというのに眞子からは何も応答はない。

 止めろ……それ言うのは止めてくれ……


「実はその事故を偶然見た人がいたんですよね。佐奈も見つけるのにとても苦労しました」


「な――!?」


「だってその人今不登校気味になっているんですから。でも、仕方のない事かもしれないですよね。目の前で男の子が車に撥ねられて身体のあちこちが歪に折れ曲がっているのをはっきりと見てしまったんですから」


 脳裏にあの光景が蘇ってくる。赤く染まった世界。自分という存在が抜け落ちていく感覚……


「それなのに零二君は今この場にいる。何でなんでしょうねぇ?何で零二君は生きてるんですか?怪我一つ無いだなんて普通有り得ないですよね?魔女に助けてもらったんですか?でも佐奈が思うに記憶も失ってませんよね?何で貴方は代償無しに生きているんですか?」


「それは……」


 言えない。眞子と魂が繋がってしまったとどう説明すればいい?

 何時の間にか一言も歌われなかった曲は終わりを告げていた。

 ふと思う。最後あの幼馴染はどうなったのだろうか。俺はあのアニメを最後まで見ていない。だから二人が結ばれたのかどうかさえ知らなかった。

 それに今の俺にはそのことを考える余裕なんてどこにもなかった。


「あはぁ。答えることなんて出来ないですよね。零二君だって正確な答えは知らないんですから。きっとあの魔女はそれとなく辻褄が合うことを言ったんじゃないですか?例えば――貴方達の何かが繋がったみたいな」


「――――!!?!?!!?」


「やっぱり。佐奈が考えた仮説はほとんど当たってたみたいですね。零二君は分かりやすいですよホント。だから佐奈はからかうのが楽しかったんですけど。けど、零二君。本当に魔女が言うことをそのまま鵜呑みにしちゃってるんですか?……それそのものが嘘なのかもしれないのに」


 落ち着く間もなく森羅は話すのを止めなかった。

 眞子が言ったことが嘘――?俺達は死の瞬間に願いが叶えられた為魂が繋がってしまったんじゃないのか?

 どうなんだよ……眞子聴こえてるなら答えろよ……

 しかし、俺が必死に訴えても眞子からの応答は全くなかった。俺の中のモノが壊れていく。俺は何を信じればいいんだ……?


「あは。零二君に悪気はないのは分かってます。佐奈も本当は零二君を苦しませたくなんてなかった。だけど、零二君が何も知らずにいるのも許せなかった。だから最初に聞いたんですよ?この世界のことをどう思っていますか――と」


「森羅――お前は何を知ってるんだよ……」


「……一つ昔話をしますね。昔々一人の青年がいました。この国にまだ侍といった存在がいる時代。その青年の家は地主ということもあり神社を納める宮司の跡取りとして生まれたこともあり、その時代では裕福とも呼べる生活を過ごしていました」


 マイクを握ったまま再度俺の隣に座る森羅。部屋には森羅の話す感情を持たない声が響き渡っていた。

 触れずに座るスペースはたくさんあるというのに肩が寄り添うレベルではなくほぼ密着する形で座ってきた森羅から熱が伝わってくる。


「そんな時青年は一人の少女と出会ったんです。青年にとって一目惚れでした。そしてそう遠くないうちに青年と少女は恋仲となりました。それは傍から見て仲睦まじい程に。しかし、当代の宮司はソレを許さなかった。お偉い身分の家に生まれた柵というヤツです。でも、愛し合ってた二人は当然離れ離れになりたくなかった。そこからはもう聞くも悍ましいドロドロな話です。その結果どうなったと思います?」


「え……駆け落ちをしたとかじゃないのか?」


「あは。零二君は素直ですねぇ。確かに青年は少女へと駆け落ちをしようと懇願したんですよ。けれど間に合わなかった。かつてないほどに激怒した宮司は神社の境内で青年と掴み合いの喧嘩となりました。そして――運悪く青年は階段から転げ落ちてしまった」


 森羅の話す内容。そして場所――転げ落ちた階段。

 俺の知るあの神社の階段であれば一番上から落ちた場合、運が悪くなくても死ぬ危険が高い。だから、俺は森羅の話すこの後の内容が薄々と理解できた。


「勢いよく階段から転げ落ちた青年は最後に運悪く地面に合った拳大の岩に頭をぶつけてしまったんです。佐奈も聞いた限りですが、その青年の状態と、零二君が事故に合った時の状態。どっちがひどかったんでしょうねぇ」


「……幾らなんでもその質問は悪趣味じゃないか?」


「あは。ごめんなさい。ですが、その結果も同じだったんですよ。普通じゃ助からない。本来であれば死ぬ運命。そんな所で恋仲であった少女が現れた。泣き崩れる少女。その時まだ青年は微かに息がありました。青年は願った。少女を置いて死にたくない。少女をこれ以上悲しませたくない――と」


「まさか――」


「そう。そのまさか。少女は願った。青年の生きたいという願いを。そして叶えられた。とても歪に――滑稽すぎる程歪んで叶えられたんだよ」


 俺と同じだ。

 赤く染まった世界で願った想い。

 生きたい。死にたくないという願い。

 それが歪に叶えられた……?


「佐奈の家には、矢丘神社の家にはとある一室があるんです。座敷牢。こんな現代におかしいと思いますよね?」


「…………」


 座敷牢。確か昔の風習で表に出せない身内を軟禁目的で隔離した部屋のはず。

 森羅の言う通り過去の風習が残っていても座敷牢を残している家なんて今まで聞いたことなかった。


「そこには一人の佐奈のご先祖様がいるんです。一人の少女を愛し、添い遂げることが出来ずに終わった一人の青年が――今も死ぬことが出来ずに眠り続けてるんですよ」


「死ぬことが出来ない?眠り続けているだと?」


 死ねない。それは俺も同じのはずだ。眞子が言うことが本当であれば俺も不老不死の影響が出ているはず。

 だが、眠り続けている。現実……夢……まさ…か……


「あは。思い当たったみたいですね。青年は今も少女と幸せに暮らす夢を見ているんでしょうね。死ぬことも出来ず永遠に目覚めない夢を見続ける。ここまで言ったらさすがに佐奈の言いたいこと分かりますよね?」


「……俺も同じだって言いたいのか?」


「さぁ?それは佐奈にも分かりませんよ。だから言ったじゃないですか。貴方の前にいる佐奈は現実の存在なのだと疑わずに信じることが出来ますか?ってね」


 この世界は夢?それとも現実?俺は……


「これ以上は零二君が耐えられそうにないんで止めておきますね。でも、零二君は疑ったほうがいいですよ。魔女は善人じゃない。話に出てきた少女――魔女エルーシャも青年を助けたかったのかもしれない。けれど、その結果がこれなんですよ。死よりもひどい現実を青年に与えた魔女は善人なのか悪人なのか。誰かの言葉を借りますけど夢か現か幻か――今の零二君にはぴったりの言葉なのかもしれないですね。あは?」


「ぐっ……っぁ……」


 森羅の言葉に何も返すことが出来ない。

 眞子……森羅が言ったことは本当なのか?この世界は本当は夢で本来の俺は……お願いだよ、答えてくれよ……


『ボクは……』


 そこで脳裏に今の俺にはとても安心することが出来る声が響いてきた。

 しかし、その声色は今まで聞いたことがない程沈んでいた。


『ボクは嘘なんて一つもついていない。だけど、ボク自身この世界が現実なのか夢なのか答えることが出来ないんだ。だって誰がその答えを持ってるというんだい?ボクはね……例えここが現実なのだとしても君がこの世界を夢だと思った瞬間に壊れてしまいそうでとても怖いんだよ……』


 夢か現か幻か……確かにそれを証明する手立ては思いつかない。

 けれど、眞子が言う通り俺がこの世界を夢なのだと思った瞬間に全てが壊れてしまいそうな感覚に陥ってしまいそうな恐怖が襲ってくる。

 そんなの嫌だ……俺は眞子に命を救ってもらったことに後悔なんてしていないんだ。

 俺はこの世界を捨てたくないんだよ!!!


「零二君。今あの魔女と話してますよね?臭いがすごいですよ?」


「臭い臭いって森羅が言う魔女の臭いって大体何なんだよ……む」


「どうかしたんですか?」


「あ、いや……スマホが、ちょっとごめん」


 ポケットに入れたスマホが振動していることに気付く。

 揺れ方的にLEADの反応だが、通知でバイブ設定にしているのは真白と麻衣さんの二人だけのはず。

 本当はLEAD通知は後にして森羅との話にケリをつけたかった。

 けれど、俺自身が混乱している中、一旦落ち着きたい気持ちもあったんだ。

 きっと真白が夕ご飯のことを聞いてきたか、麻衣さんの愚痴か何かと俺は思っていた。


「え……」


 なのに。

 スマホに映し出された一文は俺の手元からスマホを床へと落すのに十分な程、衝撃的な内容だった。



まいまい:杏璃が、杏璃が死んじゃう……お願い、助けて零二君!!!

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