第6話 伏線

今回は18回目のタイムリープであった。


時刻を携帯電話で確認する。摩耶が殺される1時間前の時刻であった。


「間に合うか・・・・・・・!」


俺は焦りつつも彼女を搜索していた。


「この時刻ならどこにいた・・・・・・!」


ポケットにしまっていたメモ帳を手に取る。


そこにはこれまでタイムリープした際に彼女、時貞摩耶がどこにいたかを記しているメモ帳であった。


ぺらぺらとページをめくる。該当箇所を発見した。


今いる所から少し走った所に彼女の姿があると記されていた。


早く急がねば。


他人の目を気にせず全力疾走をする。道から道へ、角から角へ移動していく。


8分ほど走ったところで息が上がってしまう。酸欠になるかと思うほど走ってしまったため、少しふらふらしてしまっていた。


ケーキ屋の壁に背中を休める。ケーキ屋の入り口には願い事を書く企画の為に短冊の様なものがあった。


8回目のループの時の話である。彼女に遭遇し、人気のない道を通っている途中、偶然にもこのケーキ屋に立ち寄った。


命を狙われてるとも知らない彼女はこの店に立ち寄り、ケーキを食し、外に置いてある短冊に願い事を書いたのを憶えている。


その短冊には「平和を願う」と書いた彼女の姿を憶えている。


懐かしい。実際の時間では1時間も経っていないが俺の中では何日、何十時間も経っている。


少しだけ短冊がちらっと目に映る。


「・・・・・・!」


俺は疑った。自分の目を疑ったのだ。


1枚の短冊に目を疑ったのだ。


「時貞摩耶だと・・・・・・!」


そこには「平和を願う 時貞摩耶」と書かれた短冊が書いてあったのだ。


何故ここにあるんだ。今、この時空では彼女はこのケーキ屋に訪れていない筈なのだ。


店に入らずに書いたという可能性も考えたが、その可能性は捨てた。俺と出会ってなければこの路地には入っていない筈なのである。


「何が起こっているんだ・・・・・・!」


俺は戸惑った。が、そんな余裕は無いことをすぐに思い出した。今は彼女を救うのが先決だ。


だが、気になった。何故彼女がこの道を通っていったのかを。


気に止めるな!俺は雑念を振り払い、走った。






「目は覚めたかい?」


俺はふと気がつくとそこには時貞摩耶ではない女がいた。フィフィと名乗る自称妖精の女性であった。


「ここにいるということは俺はまた失敗したんだな。」


辺りを見渡す。見慣れた部屋であった。


眠りから覚めても何故短冊があったのか俺には理解出来なかった。


「フィフィ、」


俺は短冊の事をフィフィに話した。何故ああなったのかを。俺は知りたかった。


「私にだってわからない。私はチケットを所持しているだけでそれ以外の権限を与えられていないのだ。」


約に立たない回答だった。聞いた分だけ時間を損した気がした。


「いつかお前の鼻も明かしてやるよ」


俺はイヤミ一つ言っても彼女はそれに何の反応も示さなかった。


「チケットをよこせ」


俺は間髪入れずにタイムリープを開始した。知りたかったのだ。何故彼女があの道を通っていたのかを。



タイムリープが開始された。気がつくと路地にいた。時刻を確認する。事件が起こる3時間前であった。


3時間前の時間にくるのは久しぶりであった。


時間があるわけではないが少し調査をしていこうと思った。どうも気になる。気になって仕方ない。


しばらく俺は彼女と過ごした場所を回った。全て回り終わる頃には事件が起こる15分前になっていた。


が、重要な事がわかった。


「俺と彼女が残したものは全て残されている・・・・・・・?」


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