episode7
説明するって言われてからずっと待っているけど、30分以上経っている
「クロ……無理して説明して貰わなくても、
シロとか姉に代わりに説明してもらうから」
きっと、私に分かりやすく説明するために
いっぱい考えてくれているのだろうけど……そんな風に無理して欲しくはない
「別に無理はしてない。ただもうちょっと
落ち着きたいだけだから…あと少し待ってろ」
(……無理してるのバレバレなのに。)
「…分かった。待ってる」
「………………凛」
それからまた30分経ったとき、やっとクロが動いた。
「もう……落ち着いた?」
「……ああ」
ゆっくり顔を上げるクロがちょっとだけいつもの顔に戻っている気がした
「説明……していいか?」
「うん。よろしくお願いします」
「それじゃまず…何に対して俺が怒ったのか
説明すんね」
口調もちょっと戻っていて少し安心する
「……あー。俺はお前が先陣切って戦おうとすることとか、拷問に付き合ったりとか、そういう………俺達の為になるなら何でもやろうとすることに対して怒ってる」
「……?うん。」
「俺はお前が昔、どんな所にいたのか知ってる。それはいいな?」
「?うん。クロがあそこから救ってくれたから」
「……まぁな。…………それで、昔どんなことをしてたのかも…やらされてたのかも知ってる」
「…………それが何か関係あるの?」
クロの言っていることが理由につながらないような気がしてよく分からない
「関係ある……というか、そもそもはそれだ」
「……?」
「だから、お前はもう……あの場所にいたときみたいに自分を傷つけるようなことしなくていいってことだよ」
「傷………出来てないよ」
「外側だけの話じゃない、真っ先に敵の前に出たら真っ先に攻撃されるだろ?拷問に付き合えばそいつから恨まれたり、立ち入り禁止の場所に忍び込めばそれについてお前が処罰される……そうやって外側も内側も自覚しなくても、人間は傷ついていくんだ」
優しく、嗜めるような口調でそう言われた
私がそういうことについて自覚できていないことをクロも分かってるみたいだ
「……クロは私が傷つくことに怒ってるの?」
さっき言われたことはつまりそういうことでいいのか確認してみる
「ああ……正直言うとな、俺は凛が傷つくのが怖いんだよ」
「怖い?」
「そう…怖い。凛が傷ついてまた、前みたいに壊れるんじゃないかって……はっきり言えば怯えてる」
「壊れる……」
「俺はもう凛のあんな目を見たくないんだよ……表情を顔に出せなくていい。でもな、
感情を無くしてはほしくない。分かる?」
眉を寄せて、少し困った表情のクロはきっともう怒ってない。でも……なんだか悲しそうに見えた
「クロは私が道具に戻ってほしくない?」
「ああ、お前は人間だ。道具じゃない」
「私は…人間?」
「ああ。立派……とはまだ言えないけど、人間だよ」
「…………そう。………クロが怒った理由、
まだ全部はよく分からない…ごめんなさい。」
「そうか」
「でも、少しは多分……分かった気がする。
ありがとう」
まだ不完全な人間の私には難しいことが
いろいろある。……でもクロが私を心配してくれてることは何となく分かった気がする
「まぁ、ちょっとでも分かったならそれでいい。」
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