episode8

"話は終わったから、隊長探しに行くか"と言うクロと一緒に廊下に出たときに、この間シロに言われたことを思い出した


「クロ」


「ん?どした」


「この前……クロが出て行った時、シロにクロが怒った理由聞いてみたんだけど…その時に

シロ達の役に立とうとするのが嫌なんじゃないかって言われた。それ本当?」


そう聞くと、クロは苦笑を返してきた


「それは…まぁ少しは関係あるけど、それが

全部って訳じゃない。役に立とうとすること自体は悪いことじゃないしね」


「?……じゃあシロは何でそう言ったの」


「んー?シロの言うこともハズレじゃない

その時シロ"俺の為に"って言わなかったか?」


会話を聞いてないのに、何故分かるのかと

クロを見つめていると「言っただろ?」と

確認されたので慌てて頷く


「俺が嫌なのは、シロに付き合って拷問とか潜入すること。別に薫に付き合って料理の

手伝いをすることに対して怒ったりしてないだろ?」


「うん」


「また追々ちゃんと教えるけど、シロの

"趣味"に付き合ったり手伝ったりはしてほしくない」


「さっき言った傷つくはダメ。……でいい?」


「ん。まぁだいたいそう」


そう言って頭を撫でてくれるクロは、いつもと同じで安心する


「だから、シロの"趣味"みたいなこと以外は手伝っても全然いいこと、だからな」


「分かった」








「あの二人、仲直りしたと思う?」


凛とクロを二人きりにして食堂に来ていた

隊長…唯一は昼間から酒を煽りながらそう切り出した


「酔っぱらいの絡み酒ならお断りよ」


しれっと横に陣取った唯一を手で払いながら、自分も酒を飲んでいる薫にたいして苦笑を向けて酒を没収している竜が


「まぁ、この前ちゃんとクロに言っといたから大丈夫だろ」


と言葉を返した


「この前って…怒って出てって酔っ払った日のこと?」


酒を没収されて不機嫌になる薫を見ながら

そう尋ねると「ああ」と短く返ってきた


「あの馬鹿に言ってやったのよね!いっつも逃げてないでちゃんと説明しろって……竜が」


「竜はなんだかんだで面倒見いいからねぇ」


薫に払われながらもめげずにアタックしまくる唯一がそう言ったとき、不意に食堂のドアが開いた


「あ……いた」


ドアを開けてそう呟いた凛は、中に入ってこずにまた廊下に戻って行った


「んー此処に来たってことは仲直りしたみたいだねぇ」


「そうみたいね」


さっきから攻防を繰り広げていた二人がいつの間にか側に寄ってきていた


「あ、多分戻って来た」


唯一がそう言うと今度はクロを連れた凛が

入ってきた


「みんな……いる」


「あーックソ…」


状況を分かってない凛とは裏腹に一瞬で理解したらしいクロは気まずそうに目を反らした


「やぁ凛。仲直りしたみたいだね」


さっきまでふざけていたのにすぐに隊長の顔になった唯一に「うん」と小さく返事をする凛の顔は少なくとも今朝までよりかはすっきりしていた


「なんでお前ら此処にいんの………」


あからさまに嫌な顔を向けるクロも今朝までとは変わって険悪さが消えている


「なによー心配して待ってたんじゃない」


「っていう建前で飲みたかっただけだろ……」


テーブルの上の酒を見つけたクロが溜め息を吐きながらそう言うと「失礼なー」と完全に酔っぱらいのテンションで薫が口を尖らせる


「まぁちゃんと仲直りしたみたいだしね

さっき言った仕事無しは取り消し、その代わり散々迷惑かけたから倍働いて貰うからね」


仲直りしない方が良かったのではと思うほどえげつない事を満面の笑みで言える唯一は、やはりとんでもない男だと思う


「………わかった。頑張る」


「いや、凛。やる気出さなくていい……」





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