episode4


「それで、怒って出てきちゃったわけ?」


夕食の準備のために一度部屋を離れていた私たちのところにそれはもう怒ってますと言わんばかりの黒狼がやって来た


「だって、あいつまたシロの拷問に付き合おうとしてんだぞ。もうそんなのする必要無くなったってのに。」


そう愚痴る黒狼は先程の様子とはうって変わっていて凛の前では大人ぶってるくせに、一度凛から離れると子供になるところがたまに狡いと思う。


(まぁ…これでもまだ18歳な訳だし。しょうがないわよねぇ…)


自分達に甘えてくれているという事実に少し嬉しいと思いながらもそれはそれで。


「凛はそこら辺の区別がまだよく分かってないのよ。」


「それは……俺もわかってるけど」


「だいたい、そうやってすぐ怒って凛になんの説明もなく俺らのところに来るから理解できねーんじゃねーの?」


呆れた様子で此方を見ることもせずに料理を続けている竜を軽く睨みながら、それでも

竜の言う通りなので反論は出来なかった。


「まったく、凛にとってはあんたが道標なんだからしっかりしなさいよ」


呆れながらもちゃんとアドバイスをくれる

薫に感謝する反面、目を外しながらも


「……わかった」


と、一応納得はしてみる。


あからさまに落ち込みながら戻っていく背中を見ながら、もう少し優しくしてやるべき

だったかと竜の方を見たが、無言で首を降られただけだった。






「でも、クロの奴何処行ったんだろうね」


怒って出ていったクロを探しに闇雲に歩いてみたけれど、いっこうに姿は見えず

それに基地代わりにしているこの屋敷は

広すぎてまだ部屋を把握しきれてないのだから当然である。


「クロ…何に怒ってたか知りたい」


今までずっと考えていたが、まったく答えが見つからないことが何故かとても悪いことのように感じて少し、気持ち悪い。


「クロねぇ。凛は俺が庁に潜入するとき着いてきてくれるけどなんで?」


「?…質問の意味がよく分からない」


シロに聞かれたことについて考えてみても

意味を理解出来なかった。


「凛は、俺達の役にたちたいって思ってる」


「うん」


「だから、俺の潜入に付き合ってくれる。

それが俺の為になると思ってるから」


「うん」


「それが、クロにとっては嫌な事なんじゃないかな?」


小さく笑いながら此方をみるシロに、よく分からないと言ったら「そっかぁ」と笑われたきり何も教えてもらえなかった。

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