episode5
それから、散々探し回ったけれどクロは見つけられず結局報告は中途半端なままで終わってしまった。
「あーあ…もう夕飯の時間だけど、本当どこ
行ったのかな。毎回こうなるけどめんどくさいなークロ」
食堂に向かいながらそう呟くシロを見上げると言葉とは裏腹に、楽しそうな表情をしているから、この人はよく分からない。
「でも、夕飯は食べるはずだからその時ちゃんと謝る」
「そういうことでもないと思うけど…」
しかたなさそうに頭を撫でるシロに困惑の瞳をむけながらも食堂の前に着いた。
「あーダメだねこれ。」
食堂に入った瞬間に目に飛び込んできたのは
酔っ払って寝そべるクロだった。
「んー凛か。なんだお前……何してんだ」
「なにもしてない」
「んなわきゃねーだろ。二人いるし」
フラフラとおぼつかない足取りで近寄ってくるクロをさりげなくシロが支える
「クロー凛に絡まない。なんでそんな酔ってんのさー…」
テーブルを見るとビールの缶が6本。普段は
1本でも酔うクロにしたらかなり飲んでいるほうだ。
ちなみに、軍の中では17歳が成人と同じ権利を持てるのでクロもシロもお酒は飲む。
「あぁ?別に酔ってよーが関係ねーだろ」
不貞腐れたように荒々しく椅子に座るクロを見ているとなんだかいつもと違って子供のように見えた
(……クロのこんな姿初めて見た。)
「あら…6本も飲んでる。2本目辺りで止めたのに…しょうがないわねぇ」
キッチンから両手にサラダを持って出てきた姉もさりげなく手伝いながら「止めたの?」とシロが聞いたが肩をすくめるだけだった。
「おらクロ。そんな酔ってよぉ飯食えなくなってんじゃねぇの」
「大丈夫だよ。酔ってねー」
私でも明らかに嘘だと分かるのにそれが
竜兄に通用するわけなく、「阿保か」って
頭をこずかれていた
「とりあえず、報告は明日また改めてすればいいってことになったから凛よろしくね」
酔ったクロは置いて、ご飯を食べることにしたけれど椅子に座ってまったく此方を見ようともしないクロが気になってそちらを見ながら姉の話を聞いていた
「わかった。明日ちゃんと報告する」
そう答えながらも目線はクロの方へ行ってしまう
「クロ……ご飯食べない?」
控えめにそう声をかけても冷たく「いらない」と言われてしまう。いつもなら怒ってても会話は無くともご飯は食べるのに、そうとう怒っているのか箸に手をつけようとはしなかった
「いいよ凛、クロは放ってて。それよりもうすぐ凛が此処に来て3ヶ月でしょ」
唐突にそう切り出したシロの「3ヶ月」という言葉にクロが反応したように見えたけれど
声は掛けなかった。
「あぁ…そうか凛が此処にきたの3ヶ月前
だったな。それより前からいたから気がつかなかった」
「まぁそうよね…正式に、此処に配属が決定したのが3ヶ月っていうだけでそれより前から
ずっといたものね」
姉と竜兄がシロの話に乗っかって話している間なぜか、3人でニヤニヤしながらクロを見ている
「3ヶ月がどうかしたの…?」
そう尋ねてみるとニヤついた顔はそのままで
「お祝いしようね」と優しく頭を撫でられて
しまった。
「ま。クロと仲直りしてもらえないと
お祝いが出来なくなるんだけど…」
とクロの方を見ながら言うシロを睨み付けながらも私の方を見るクロと目が合うと気まずそうにすぐに逸らされてしまう。
その後、とりあえず今日は解散しようという姉の言葉で部屋に戻り明日またちゃんと謝ろうと決意しながら眠りについた。
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