大食少女

うすたく

ラーメンは二度とごめんだ!

 なんと今日は、私・桐生思夢きりゅうしゆめと、親友の剣見華矢つるみかやと、先輩の銃城千羅じゅうしろせらさんとお出かけに行くのです!


「どこ行こうかしらねぇ。」


 千羅さんがそう言うと、華矢は


「ラーメンが食べたいです!」


 と、なにやら広告を一枚持って、一人で盛り上がるようにそう言った。


「あ、これ大食いキャンペーンやってるとこでしょ?3kgを20分以内に食べれば5000円GETの!」


「うん、それ挑戦したいんだぁ。」


 華矢のワガママで、仕方なくラーメン屋に行くことにしたのだ。


「ヘイ、いらっしゃい!」


 店長さんの大きな声が響き渡る。


「今日は何にしますかっしゃい!」


 店長さんの独特な口調と共に、メニューが渡される。華矢は渡されたメニューを凝視したのち、メニューをテーブルに置き、壁にぶら下げられた看板を指差す。


「あれにするっしゃい!」


 華矢は店長さんの独特な口調を真似して、3kgの特盛ラーメンを20分以内に食べ切れ!と書かれた看板を指す。


「嬢ちゃん、本当に食べれんのかっしゃい?」


 少し無理がありそうな口調で、店長さんは華矢に質問する。


「食べれるっしゃい!とりあえずお願いするっしゃい!」


 10分程度待たされ、ようやくラーメンが届く。その大きさは予想を絶する程の大きさだった。


「じゃあ、私達は普通の醤油ラーメンで・・・」


 千羅さんが私の分も注文してくれる。


「嬢ちゃん、始めるっしゃい?制限時間は20分。よーい、スターっしゃい!」


 店長さんの合図と共に華矢は凄まじい勢いで食べて行った。3kgもあったラーメンは8分で1.2kgになる。あまりの速さに店長さんも驚愕の表情を向ける。


「行ける、行けるよ!華矢!」


 しかし、13分経過したところで、華矢の箸がピタリと止まる。


「ん?華矢さん、どうしたの?」


 千羅さんが華矢に疑問の目を向ける。


「メンマが・・・入ってる・・・。」


「「?」」


 私と千羅さんは言ってる意味が分からず、思わず困惑する。


「そりゃ、ラーメンにはメンマは入ってるよ。あ、もしかして・・・」


「メンマが食べれないんだ。あのコリコリした食感に、液体が混ざることで生まれる独特な感触が喉元を通ると、とんでもない吐き気に襲われて・・・。」


 すると店長さんは勝ち誇った様な表情をする。


「じゃあメンマ以外を先に食べよう。メンマはその時にでも考えてさ・・・。」


 華矢は頷き、メンマを避けながらラーメンを頬張る。スープをグイッと飲み干し、残りはメンマだけとなった。


 その場にいた全員が息を呑み込む。


(食べれば5000円・・・食べれば5000円。でも、食べれば5000円以上に大事な何かを失う気が・・・)


 華矢がそんな事を考えているのは、表情をみればわかる。


「一回食べれば終わりなのよ?あと3分しかない。早く食べて!」


 千羅さんはそう言うが、華矢は何も言わず、メンマを凝視し続ける。


「そうだよ華矢。一度我慢すればいいんだよ。苦手克服になるかもしれないよ?」


 私も言葉をかけるが、華矢は何も言わない。


「あと1分。これは俺の勝ちっしゃい!」


 店長さんのそのセリフを聞いた途端、華矢は息を大きく吸い込む。


「皆、今までありがと・・・私、今日で・・・。」


 -------


 私達3人は、5000円札を片手に、公園のブランコに座っていた。


「良いじゃん、食べ切れたんだから。」


 華矢は何も言わず、泣きながらブランコをこいでいた。


「そうよ、店長の悔しそうな顔見たでしょ?」


 千羅さんも必死にフォローするが、華矢は一行に泣き止まない。


「確かに食べて30秒後にお皿の中に○○をぶちまけたけどさ、たかが吐いたくらいで、そんなに悲しまないの。」


 華矢は涙を拭うのをやめて、そっと口を開いた。


「もう、メンマなんてごめんだ。」

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大食少女 うすたく @usutaku

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