腹黒男子【S】の場合
新しい出会い
季節はもうすぐ冬。
夏に彼氏と別れたヒナは最初こそ落ち込んでいたものの、とても良い想い出だったとすっかり元気を取り戻していた。
しばらくは新しい男の影も感じられず、体育祭や文化祭など学校行事に一生懸命取り組んでいるようだった。
しかし安心していたのも束の間。
皆が一致団結して一つのことに取り組む行事の時は、平凡な日常と比べてカップルが成立しやすいというのは自然の摂理だ。
残念ながらヒナも例外ではなく。
続いての憂鬱は兄貴の部屋から始まる……。
◆◇◆◇
「は? 誰が誰と歩いてたって?!」
「ヒナタが男と歩いてた」
「いつ?」
「今日」
「どこで?」
「駅前」
キョウスケがアオイを部屋に呼ぶときは8割がヒナタに関係することだった。
今回も風呂上がりのアオイを引きずり込み、神妙な面持ちで今日見た事実を告げる。
「単なる男友達とかじゃないの? 最近暗くなるのも早くなってきたしさぁ」
「サトシ18歳、サッカー部。ヒナタとは同じ高校の先輩後輩で文化祭がキッカケで話すようになった。サトシの方から告白。付き合って2日目。……手を繋いでる2人をつかまえて聞き出した」
「なるほど。きっと、至極さりげなく振る舞ってそこまでの情報を手に入れたんだろうね」
兄はきっと妹とその彼氏、2人を前にハラワタがグツグツと煮えたぎっていたことだろう。
恐らく、実は良い青年なのかもしれないという葛藤と戦いながら感情を隠して接していたに違いない。
「で、そのあとどうしたの」
「今度、うちに遊びに来るよう言っておいた」
「え、何それ?」
「とにかくお前も会え」
「なるほどそうだよな。〝良い子〟だったら問題ないわけだもんなー」
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