第7召喚 勇者現わる!?
――七度目の召喚。
魔法陣から溢れる光が周囲を包み込み、毎度の事ながらその光が収まるまでは何が召喚されたのか分からない。
皆の期待感は薄れつつあり、ただただ黙って魔法陣を見つめていた。
光が収まると、そこには一人の中肉中背の青年が姿を現す。一見なんの変哲もなさそうな男だが、全身から溢れ出る何か言いようのない不思議な力を感じた。
全身を白を基調とした豪華な軽鎧で固め、背中には同じく豪華な装飾に、意味ありげな宝石が嵌めこまれた大剣を背負っている。
「ま、まさか……今度は本当に勇者様ですか……?」
その出で立ちから、神官長は絞りだすように青年に問いかける。
「えぇ、たしかに僕は勇者と呼ばれています。見た所ここは見たことない世界……まさか、別の世界に召喚されたのでしょうか?」
同じような経験でもあるのか、勇者は周囲を見回しただけで状況を察する。
「えぇ、そうです! この世界は今魔王に侵略されており、全てが支配下に置かれるのも時間の問題。ぜひともそのお力で魔王を倒して頂きたいのです!」
神官長は青年に向かって深々と頭を下げる。
勇者であれば快く引き受けてくれる。皆そう思っていた――
「ごめんなさい、それはできません」
神官長に向かって頭を下げる勇者。
そして、頭を上げると更に続けて訳を話す。
「あなた方の世界も大変でしょうが、今まで僕がいた世界は邪龍の進行がかなり進んでいて、人間が消滅の間近に迫っているのです。今僕が押さえなければ、下手をすれば明日にでも世界は邪龍のものとなります」
今の自分達の世界よりも、あまりにも危機に瀕した状況に一同言葉を失う。
「わ、わかりました……。我々よりもさらに悲惨な世界があったのですね」
神官長が残念そうに項垂れる。
「すみません。向こうの世界を平和にしたら、もう一度呼び出して下さい」
その言葉を最後に、勇者は元の世界へと還っていった――
「次はいつ呼び出したらいいんでしょうかね?」
「というか、また呼び出せるんですか?」
神官長とソウジが同時に溜息をつく。
「どこの世界も勇者不足なんだなぁ」
しみじみと呟くルリに、周囲の神官達も頷くのであった。
これが、巷に勇者召喚モノが溢れているせいなのかどうか……
それは誰にもわからない――
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