果たし状は突然に…… その1
「ってな感じで、一本松がわけわかんねぇこと言いながら番長と舎弟をぶっ飛ばしたんだと」
「……喧嘩に興味のある奴には見えなかったが、何でまたそんなことを」
「さあな。それが初めてなわけじゃねぇし。噂を聞く限りじゃ、基本あいつの行動は意味不明だぜ」
「見かけによらず喧嘩ざんまいってことか 」
「いや、喧嘩というよりは一本松が一方的に暴力をふるうって感じらしい。オレも現場をみたわけじゃないから詳しくは知らねえけどさ」
(一方的に、か。変な女子だとは思ったが、想像以上に危ない奴のようだ)
そもそも番長と名乗っている奴がいるのになぜ番長を出せなのか、意味がわからない。相手をそこまで痛めつける理由とは何なのだろうか。
クラスが違うせいか、ホクソンも大した情報を持っていないようだ。
「こんな少女漫画らしくないむさ苦しい、いかにも脳筋な奴に抱き締められるなんて‼︎ 夏実一生の不覚だわ‼︎ 」
窓から落ちそうな非常事態でもそんなことを気にする奴が、まともではないのは確かである。関わりたくないと思うのも当然のことだ。
「そういや、あのヤンキー以外はみんな運動部のエースとか、クラスで人気ある奴とか顔が良くて名前の知れてる奴ばっかだな」
「そいつらはどうなったんだ? 」
「もれなく病院送りだよ。中には復帰したその日に一本松を見て一目散に逃げ出した奴もいるぐらいだ」
(女子にそんな反応するなんて、よほど恐ろしい目にあったんだな)
絃四郎は転校初日からあまりいい噂のない奴と関わってしまったようだ。
しかし、ホクソンの話を聞く限りでは夏実はイケメンで、おそらくはモテる男子生徒を狙うらしい。そうならば、見た目もゴツい絃四郎は、夏実がターゲットにしてきた生徒とは全くタイプが違うのでこれ以上関わることはないだろう。向こうも罵るぐらい嫌いな相手とわざわざ関わりたいとは思わないはずだ。これからGBRの本戦が始まるというのに、余計なことで煩わされるのはごめんだった。
「あんまり、気にすんなよビラキ。しょっちゅう問題起こす奴だが、狙う奴は決まってるっぽいし。お前はどう考えても一本松の好み? じゃねえよ」
「ははっ、お前の話を聞いた限りじゃそのようだな」
「万が一襲われても、お前なら返り討ちにできるだろうし」
「俺は女子供に手は上げない、格闘家として鍛錬を重ねていれば別だがな」
「うおー、かっくいい! 」
「からかうな」
「からかってねーよ、そういう筋を通すところすげえと思うぜ。お前ちょっと見た目は怖いけどいい奴だよな。史上最強を決める闘いに出る奴なんて、もっと熊みたいな奴が来るかと思ってたからさ。安心したぜ」
「俺も気さくに話しかけてくれる奴がいて助かったよ。いきなり妙なことで注目を集めたからな」
「いや、ビラキなら一本松と関わってなくても十分注目されてたと思うけど」
キーンコーンカーンコーン
ホクソンと話をしている間に、1限目の予鈴がなる時間になっていた。
「やべっ‼︎ 1限数学だ。今日当たる日なんだよなぁ。ビラキ、わかんないとこあったら助けてくれよ」
「初日の奴に助けを求めるな、俺だってそんなに頭の出来がいいわけじゃないぞ」
「頼むよ、ビラキ〜」
合掌した手を擦り合わせて絃四郎に懇願するホクソン。そんな彼を苦笑いしながら、絃四郎は
リュックからノートを取り出した。
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