第11話 闇のお告げ 後編
給食後の昼休み、またしても手持ち無沙汰だった私はまた机に突っ伏して寝ようとした。
けれど変に気が張っているのか、どれだけ心を無にしても今度は一向に眠くはならなかった。それどころか心を無にしようとしたせいでチャネリングに近い状態になってしまった。
(寝ようと思っても眠れない……)
(使徒を集めるじゃ、今のままでは)
(何?またハンターにやられるって言うの?)
折角の貴重な昼休みの時間に、またしてもチャンネルが合ってしまった。突然始まった闇神様のお告げに私は辟易してしまう。大体、言っている事は昨夜聞いた事と全く一緒だ。そんなにまでして私に使徒を集めさせたいのか。
その後はもう100%やる気もなく聞こえるままに流れに身を任せていると、新規のメッセージも流れて来た。つ、続きがあったの?!
(――間に合わなくなる……)
(……えっ?)
私が驚いて聞き返そうとしたらそれでチャンネルが切れちゃって突然声は聞こえなくなってしまった。一体アレはどう言う意味だったんだろう?
その後は眠れないまま無慈悲に昼休みは過ぎてしまって、結局そのまま午後の授業を受ける事になってしまった。
「そんな事を言うんだけど、どう思う?」
「最後までちゃんと聞き取れなかったのか」
「だってあの時はぼうっとしてたし……」
帰り道、当然のように一緒に付いて来る有己にこの事について聞いてみた。使徒だったら何か知っているかもと思ったんだ。
でも、何だろうね。私の話を聞いてヤツは突然怒り出したんだ。
「何て事を!神聖な闇神様のお告げだぞ!」
「知らないよ!そんな事言われたって!」
売り言葉に買い言葉になってしまって、現場は一瞬気まずい空気になってしまった。本当なら何て事のないいつもの帰り道のはずだったのに。
しばらくして心を落ち着かせた有己がため息を付きながら話を始める。
「はぁ……。とにかく使徒を集めろって言われたなら、集めるしかないだろう」
「残りの使徒がどこにいるのか知ってるの?」
この時の奴の話しぶりから見て、私は残りの使徒の事を何かしら知っているものだろうと思ったんだ。詳細に知らなかったとしても、せめてヒントくらいは知っているものだとね。そしたら返って来た有己の言葉に私は唖然としたよ。
「知らん。探すしかないな」
これだもの。全く悪びれもなくそう言うもんだから、参っちゃうよ。
「無責任だなぁ。じゃあもし日本の端っことかにいたとしたらどうするの?旅費もかかるし、学校休まなきゃだし」
「そのくらい何とかしろよ」
障害が多いって言うのを説明したのに、こいつは何でそんなに簡単に考えられるんだろう。少年漫画じゃないんだから、何事にも手続きが必要って事が分からないんだろうか。長い年月を生きて来たって言う割に人間社会のこう言うところは理解が足りないんだな。
取り敢えずもっと根本的なところの障害から例を出さないとダメか。
「まず、両親の説得からして無理だから」
「お前の身体には闇神様が宿っている。きっと全てうまくいくように巡っていくさ」
「じゃあ、そうなったら使徒を探すって事で」
「ふ……運命の歯車は回り始めたら早いぞ。今の内にしっかり準備をしておく事だな」
有己があんまり楽天的な考えなものだから、私もその考えに賛同してやった。そうだよ、何も焦って自分から動く事はないんだ。
全てがこいつの言う通りに動くのなら、いつか条件は自然に整っていくはず。こう言うの、何て言うんだったかな?そうだ!棚から牡丹餅だ!……あれ?合ってるのかな?
そうして何とか場の雰囲気が正常に戻った頃、私達の前に謎の人物が立ちはだかった。
「おやおや、これはお2人さん、大変仲がよろしいようで」
その人物はがっしりした体格のここらへんでは見かけない風体のおっさんだった。帽子を深くかぶり、すぐには顔が分からないようにしている。
不審者情報がすぐに出回る昨今、見知らぬ中学生2人に好き好んで声をかける人なんているはずがない。それはつまり、こいつが関係者だと言う事だ。
関わりあいたくなんてなかったけど、これもまた呼び寄せられた運命ってヤツよね。
「あ、招かれざる客……」
「いいぜ。ちょっと身体を動かしたいと思っていたところだ」
突然のハンターの来襲に戦闘モードに入る有己。夕暮れで西日の眩しい通学路で突然バトルは始まってしまった。
一応周りを見回してみたけど、今回はこの人以外に人影は見当たらない。えぇと、私はまた観戦していたらいいのかな?
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