3-2 奴隷女Ⅰ
私は今見るからに高価な絨毯の上にひざまずき、眼の前のこれまた高価であることを主張してくる椅子に腰かけているこの屋敷の主の男性器を両手で優しく包み込む。
決して爪を立ててはいけない。
決して優しく握りすぎてもならない。
ほどよく、男性器を握っていることを教えてあげなくてはならない。
これから行うことを視覚、触覚で再認識させる。
そして次に聴覚を用いる。
「それでは失礼いたします」と告げてから私は男性器へと顔を寄せる。
意図的に鼻先に触れる寸前で止める。
一瞬息を止めて漏らす吐息を鼻先にあるモノへと当てる。
何がいいのかは解らないが吐息が当たることでご主人様は興奮を覚えるらしい。
もちろん、ご主人様の要望によるところも大きいのだが、好きでもない男の逸物をいとおしいとは思えない。それに男はご主人様しか知らないが、男という生き物の中でもご主人様はかなり体臭がきついと思われる。
汗と脂の混ざった酸っぱい体臭に鼻をつまみながら(実際には微笑を浮かべて)大きく開けた口へと逸物を誘う。
意を決してその逸物を口の中へと招き入れる。
逸物を頬張ったまま頭を上下に動かす。
込み上げてくる吐き気に耐えながら私はご主人様の顔を窺う。
あっ、そろそろ来るかな?
覚悟を決める。
ご主人様の腰が椅子から僅かに浮き上がると同時にその瞬間は訪れた。
口から零さないようにすぐさま両手を口へと持って行く。
両手で受け皿を作るとゆっくりと口を開き、口の中のものを見せる。
口の中のものを確認したことを確認して私は口の中のものを飲み込んだ。
喉を通る体液はいたるところにへばりつくように違和感しか残さない。
気分は最悪だ。
しかし、そんなことは微塵も感じさせない妖艶な笑みを浮かべたまま私はご主人様の書斎を後にする。
「おかえり~」
私を迎える労いの声に「ただいま」と力なく返す。
「どうしたの?」
「それがさ、あのジジイ、口の中に出しやがってさ!」
最悪の気分であることを言葉にして発散する。
「うわぁ~ないわぁ~」複数の女性が賛同する。
「でしょ! マジでないわぁ~最悪」
「まぁまぁ、でも今日はそれでおしまいだったんでしょ?」
「もちろん、最後までなんて付き合わされたくないよ」
「だよねぇ~」賛同の声と共に憐れむような声も聞かれる。
「でも、そろそろかもね……フェリ、綺麗だから」
女性に対しての褒め言葉もここでは死刑宣告と同義である。
しかし、褒められて悪い気のする女はいない。
「ありがとう」
そうひと言告げると足元にある継ぎ接ぎだらけの薄汚い布を頭から被る。
「おやすみなさい。フェリ」優しくかけられる言葉に「おやすみ」と小さな声で返すと私はすぐに夢の世界へと誘われた。
これが私―フェリ―奴隷少女の日常である。
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