第3話 旧友の暁
3個目のサンドウィッチ食べ終わった後、外は少し風が吹いていたことに気がついたのでパーカーを着ていくことにした。
あぁ、来てやるよ。
玄関から外へ出ると、別に引き籠もっていた訳ではないが自然の風が懐かしく感じられた。外は少し肌寒かった。天気予報によると今からの天気は雨らしい。
目的地は丸岡公園。名前の通り、ちょっとした丘の上に作られた町立の公園だ。丘の上なので約20メートルの坂道を登らなければならない。
坂道の辺りは林だ。風に林が靡く。パーカーも揺れる。
今から雨なので太一は家に呼んで、家で話すことにしよう。
「あれ。太一ってどこにいるんだっけ。」
メールを確認するためにレンズフォンを起動させた。
以前に言ったと思うが、コンタクトレンズ型携帯、通称レンズフォンは目の横を軽くタッチすると起動させることができる。起動させると目の前にウィンドウが展開される。その他、スライドなどをして多様なことが可能だ。
このレンズフォンで俺はメールを再確認した。ブランコの近くだ。
ブランコには確かに奴がいた。
前田太一、24歳、彼女はいない(と願う)。見た目は軽装だった。性格は真面目なほうだ。小学校から高校まで結構仲良しだった友達だ。大学進学と同時に別々の道を歩み始め、今からこうして出会うわけだ。たしか、生物を研究する学科へ進んだはずだ。
「おっ!来たな、俊太!久しぶりすぎ!」
「あぁ、来てやったぞ。太一も変わんないな。」
「変わったのは仕事ぐらいかな!」
俺と太一はブランコに座って少しだけ小話をすることにした。
仕事が変わった?あぁ、会社内で担当する仕事が変わったということか。太一に限って職を転々とすることはないだろう。
「そ、そうか。仕事って大変だよなぁ。残業があるのは昔からのことだな。時代はいくら変わっても残業の存在は変わらないんだなぁ。」
少しだけ声が震えた。なぜかって?
自分のニート状態がバレたら精神的にも社会的にもアウトだからだよ!こりゃ少しぐらい嘘つかないといけないでしょ!だが、ニート状態になりつつ始めた頃から友達とのメールは一切無いのだ。大丈夫、知っているはずが無い。
仕事の忙しさなんて体験したことないさ。
「それで太一はさ、今なんの仕事してんの?」
少しずつ…少しずつでいいんだ…話をずらしていこう。
「僕はね、生物の研究に没頭中なんだ!生物は愛するべき存在だよ。」
太一は独り言っぽく言っていた。
風は先ほどより少し強くなり始めていた。空が曇っていた。曇天だ。小雨も少し降り出している。
俺の脳内神経が感じ取った。いわゆるフラグというやつを感じ取った。どうやら俺の心予報も今から雨が降るらしい。
「俊太はさ、今なんの仕事してんの?」
「うっ・・・。」
ほらきた。悪い予感だけよく当たるものだ。さて、どうやってこの攻撃を避けるか。『俺ね、毎日戦場で戦ってるんだってwwwいやマジwwwwスナイパー担当なんだけどさ、今日の早朝任務は少しだけ失敗したんだよねーwww』とか冗談っぽく言って逃げれるか?
「あっ・・・えっとな・・・。」
どうするべきだだだだ・・・・俺。
すると、太一が口を開いた。
「あ!お前、まさか無職ぅ?」
なっ…。いや、まだ切り返せるはずだ。ニート状態だけは知られたくない。
「えぇっ!?ん、んなわけねぇだろ!ちゃんと働いてるっつうの。」
笑いながら言ってみた。まだ、まだチャンスが…!
「え?だって俊太って就職するとき33社落ちたんでしょ?」
え・・・・・・・?なんで・・・・・・。
なんで・・・知ってるんだ。
「そりゃぁ精神的にもきついよな!ゲームにのめり込むよなぁ。」
お、おい。ちょっとまてよ。
「その罰として友達からメールが来なくなったんじゃない!?あ、あとゾンアマからの謎の品物も!」
太一は笑っていた。
なんで、なんでこいつ、知ってるんだよ・・・。外部との接触は無かったはずだろ・・・?
雨が降り出した。天気予報は的中。
「ちょっ、ちょっと待てよ!なんで、なんでお前そんな知ってんだよ!」
「えへへぇ、なんでだと思う?」
答えが出なかったさっぱり分からなかった。というより、パニックに陥っていた。
「おい、雨だから一回俺ん家いくぞ!」
「えっ?いいの!?でも僕そんな気は別になかった・・・」
「いいから来い!」
太一の言葉を途中で遮った。
そして俺は太一の腕を引っ張った。
坂を下って家に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます