第12話 悪夢の末
眠りのそこから引き上げられて、目の前にあったのは見知った顔
「大丈夫か?そなたを起こしに来たらすごい気配を感じたと思ったら飛び起きたから驚いたぞ」
繕がそういって俺の頬を撫でる
「今も夢の中に居るみたいな感覚だけどな・・・・今日から仕事だ・・・朝飯食わないと」
「あ、あぁ。長期休暇のあとだから休むわけにいかないからの・・・でもつらければ早退するんじゃぞ・・・・?」
心配な表情を俺に向ける繕の表情が希の表情と被る・・・
似つかないのに脳裏に過ぎる・・・・
今までこんなことはなかったはずなのに・・・・
夢を見るたびに何かあるとちらつく希の顔
もう昔のことのはずなのに
「だいじょう・・・・」
「平気だからそんな顔しないでくれ・・・・っ」
「う、うむ・・・」
繕はそのまま背を向けて部屋を出て行った
(繕は悪くないのに今の態度はないな、あとで謝ろう)
俺は先ほどの受け答えに少々罪悪感を感じながら服を着替えて部屋を出る
廊下にでると朝食の匂いが鼻を刺激する
食欲はあるようだ
リビングに入り、朝の挨拶をし、席につく
見るからに心配そうな結と申し訳なさそうな絆
「繕、さっきは悪かった・・・。心配してくれてるのに」
「いや、我もちょっとしつこかったからお互い様じゃ」
と苦笑してお互いに謝る形となった
「お前らも、こうして仕事には行けるんだし、心配しなくても平気だから。そんな顔しないでくれよ」
と、二人に言ってみせる。
精一杯の強がりだが二人は頷いて微笑んで見せてくれた
「そうですねぇ。夫を笑顔で送り出すのが妻の役目ですからぁ」
結のこの言葉から始まり、勃発するいつもの争奪論争
俺はその光景をみて、少し気持ちが楽になるのを感じた
どこで知ったのか「私のスタイルと胸の形が透さんの好みですもの。むっちりとしただけの絆さんや小さいだけの幼児体系のロリババの繕さんでは喜ばせられませんよぉ」と挑発する結
それに「奉仕の心と男を喜ばすのなら私の体のほうがレベル高いわよ?そんな見た目だけじゃぁ喜ばないでしょ?ということで私が一番ね」と絆が挑発に乗り
それを黙ってられず「ほぉ?おぬしらは透の本当の趣味を知らないと見たぞ?透は幼い見た目に反した歳上のように包容力があり、カリスマがある女が好きなのじゃ。ほら当てはまるのは我じゃ!だから我が一番じゃ!!証拠もあるぞ!透の部屋n」
「おい!!それ以上の暴露は許さん!!それ以上いえばお前ら追い出すぞ!!」
あわてて繕の口を押さえて、虚勢を張る。
こいつ、いつ俺のあの本を見つけやがったんだ
と、とっ捕まえた繕を見ると頬を赤くして、口をもごもごさせていた
「おっとすまん」
俺は口から手を離すと繕は胸をなでおろしていた
「そ、そなたの手、大きいのぉ///」
なんで口を押さえただけで照れてんだよこいつさては隠れマゾか
「はぁ、とりあえず飯食い終わったから歯磨いて仕事いって来るぞ」
「はぁい。あ、これお弁当ですよぉ。みんなからの愛妻弁当です、味わって食べてくださいねぇ」
と、結から手渡された二段重ねの大きなお弁当を渡され、カバンに仕舞い歯を磨いて家を出た
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
仕事はかなり順調に進んだ
お昼の弁当も大変美味だった。
というかから揚げをわざわざ下味まで完璧につけて作ったということは昨晩きっちり下ごしらえしたのか。
なんていうか愛されてる感がとんでもなく詰まった弁当は周りから冷やかされるくらいの話題になって帰りがけには
「結婚はまだなのか?(ニヤニヤ」
とか
「俺にも紹介しろよぉ」
とか
もうほんと勘弁してほしかったが悪い気はしなかった
そして今は帰りの電車内で、転寝してしまい今起きた
「はぁ、疲れた・・・ん?え・・・やば、終点じゃん。まぁ、歩いて帰れる距離だしいいか。定期きかんけど・・・」
と、電車から降り、改札を出て降りる階段に向かうとき
(ドン
と背中に体当たりされた
誰だよ、と後ろを振り返り睨もうとするとそこには見覚えのある女性がいた
「あ~!やっぱりだ!!」
小柄で低い背に肩まで伸びた長い髪に、淡い声色
「の・・・希!?」
「うん!!久しぶり透お兄さん!!」
面影のある笑顔で抱きついてきた瞬間周りの客の目が冷ややかに突き刺さるのを感じた
「ちょ、ちょっとまて、積もる話は後で、こんなとこでお前のその癖はいろいろとやばいから!」
「あ、うん!じゃぁあそこのお店行こう?」
と腕に抱きついて歩き出した
俺はうれしい半分複雑な気持ちでいっぱいになっていて
心の隅で(こいつ、こんなかわいいから彼氏とかもかっこいいんだろうな)
とか、少しねたんでいた
「ほんと久しぶりだな。仕事とかどう?」
「うん、上司がセクハラしてきてウザいけどね。お兄さんは?いろいろ大変だったみたいだけど」
「情けないことに仕事つくのが遅くて、ようやくってとこかな」
「情けなくないよ?あのときは私も子供で話聞いてなかったけど今考えると、さ。仕方なかったかなって」
「・・・・ごめんな」
「謝っちゃだめだよ。そもそも怒ってないし、それに。また会えたし!」
と満面の笑みを浮かべた希の表情をまっすぐ見れない俺はほんと情けない
「目、逸らさないでよ。私はここに居るんだし」
俺はその言葉に目を向けるとふくれっつらの希が身を乗り出す形をしていた
「わ、わるい・・・」
「はぁ、でも。最後に見たときより生き生きしてる・・・あとは」
と、立ち上がり希が俺のそばに座り、手を絡めてきて、顔を近づけてきた
「んぅ!?」
キスされていた
俺の思考が停止する
客は周りに居なかったからいいものだけど
そこで真っ白になっていた
「ふ・・・はぁ・・・私、彼氏とかいないよ?ちゃんと約束守ってよ」
「え・・・・・」
「どうせ“かわいくなった、彼氏もさぞかしかっこいいんだろうな”とか考えてたんじゃないの?」
お見通しなのか・・・というか顔に出てた?いや、態度から感じ取ってた?
「で、でも俺こんな情けないし」
「情けなくないよ、ただやさしすぎるのがいけないだけじゃないの?それに、私は透お兄さんが好きなだけだし、情けないとかそういうのいらないよ。約束だってただの約束だから守らないととかそういうこともないよ」
俺の会話の逃げ道をすべてふさぐ形の台詞に驚いた
「だ、だけど・・・その・・・俺、さ」
「家連れてって?お願い」
「と、唐突だな!?」
「今に始まったことじゃないでしょ?つれてってよぉ~。どうせ一人暮らしだし詰まんないもん」
こいつは駄々こねたら止まらない
止めようとしたらいろいろと後が怖いことを知ってる
俺は仕方なく“戦地”へ赴くことにした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます