第13話 ドジが生んだ幸せと修羅場
「「「「・・・・・・・・」」」」
目の前に居る女4人の沈黙と修羅のようなオーラ
「私は約束通りなら彼の彼女なの。だからあなた方はただの恋慕する女なの。そこを自覚してほしいよ」
沈黙を破ると思ったら低い怒気を含んだ希の言葉だった
俺はそれに鳥肌を立つのを感じた
やべぇ、あいつほんとに怒ってるわ。あいつ怒らせると結構こわいんだよな
「ですけどぉ、約束どおりなら、ってことですよねぇ?そもそもそれも過去のはなしですしぃ時効じゃないですかぁ」
「そうじゃのぉ。子供の約束などその場でないなら無効じゃろ」
「そうよね。それに、貴方。透に隠し事してる時点で裏切ってるわよね」
隠し事?やっぱりこいつには彼氏が居るのか・・・?
よくある二股の片一方に飽きたからこっちにってことなのか?
襲う不安が心を気持ち悪くする
「・・・・隠し事なんてしてないよ?なにいってるのこのおばさん」
「な!?いうことかいてっ・・・この小娘が!!」
「お、抑えるのじゃ。絆、ここでキレたらこやつの思う壺じゃ」
「そうですよぉ。でもオバサンですか、ふふふ」
「あ、あんたねぇ・・・・あとで覚えてなさいよ」
3人は後もう少しで絆の失態での自滅で口論が終わるとこだったが二人の援護によってそれは適わなかった
「でも、隠し事をしてない・・・ねぇ。ならここでバラしてあげましょうか。」
絆が笑む
その笑みは確信づいたものだった
「いいよ。ばらす前に透お兄さんに打ち明ければいいんだよね?」
希は立ち上がり俺の頬に触れて口付けた
甘い香りに、なんともいえないやさしさが体を支配してくる
その光景に絆が驚いていた
「ごめんね、つらかったよね透お兄さん・・・あの夢私のせいなんだ」
唇を離した希の目じりには涙が浮かんでいた
「・・・え?」
希の背から黒い蝙蝠のような翼と腰の辺りから先がやじりの様になった細い尻尾があった、よく見ると頭の上には巻き角がある
「私、悪魔なんだよ。あ、えっと悪魔だけど別に不幸にしたりするわけじゃないんだよ!?その、悪魔としてあんまりにだめだめだから下界に落とされちゃってね!?それでえっとえっと」
「あ、あわてなくてもいいよ。ということは過去の君は・・・」
「え?あれは正真正銘の私だよ?下界に落とされて、そのときに生を受けることが決まって間もない胎児に私が降りたから」
だから悪魔であり人間なんだよ!すごいでしょ!
こいつ・・・マジで何も変わってねぇ
俺は安心して笑った、いや、笑うしかないなもう
「なら別に嫌いになんてならないし恋人でもいい。でもそうなると俺4股か屑だなおれw」
「「「「えっ」」」」
「なんだよ、同じ立場なら別にいいだろ。あ、絆は一点マイナスな。相手の隠し事をせこい形で使おうとした。おれはそういうの嫌いだ」
「そ、そんな・・・・」
「ふふん、おばさん哀れだね」
こいつは純粋にこういう言葉を使うから余計に心にくるんだよな
絆、完全に燃え尽きてるし
「ま、私はいいですよぉ?どうせ狙うなら妻の座ですし」
「我も構わないのじゃ。結のいうとおり、妻になれればよい」
「ふぅん?でも私のほうが1歩ううん2~3歩先に進んでるし候補的にも私が妻だもん」
張り合うんじゃない、折角収まりかけたのに!!
「でも、じゃぁ何で今頃夢魔みたいなまねしてたのよ」
立ち直った絆が口を開いた
「あ、あれは・・・説明しなきゃだめ?」
あ、こら俺のひざにナチュラルに座るんじゃない
「説明お願いするわ、それとひざから降りなさい」
「あ、なら説明しない(プイ。透お兄さんにはあとで説明すればいいし」
「ぐ、この小娘ぇ・・・・」
「あはは、ひざ位いいじゃないですか、そもそも貴方サイズの女性がひざに座るなんてまず無理ですしぃ」
結はここぞとばかりに絆の容姿を言葉で攻撃する
ぶっちゃけ絆のような体も悪くは・・・
「透お兄さん?あの体に興味があるの?私のこと・・・あんなに」
「うわぁ!?わかったから、あの夢について話してくれ」
「うん、それでいいんだよ♪じゃぁ説明するね?」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私が就職して3年目くらいのころ
帰宅してドアを開けると、私の部屋が懐かしい匂いに満たされていた
その匂いは私が好きだった、やさしくしてくれたお兄さんの匂いだった
薄く、微かなその匂いは、眠っていた私の幼かったころの心を刺激してくれた
気づくと涙が流れてきて、久々にお兄さんと撮った写真を眺めていた
「お兄さん・・・また会えるかな。もういっぱい時間経っちゃったから、私のことわかんないかな」
そんなことをつぶやきながら、写真立てを抱きしめながら眠ってしまっていた
眠ってしまっていたころに見た夢は、懐かしかった、初めてであったあの頃の記憶だった
お兄さんが優しく、言葉をかけてきてくれたおかげでこんな自分も楽しく学校に通えた
朝、目が覚めると、眠ってしまう前に感じた懐かしい匂いが濃くなっていた
「あぅ・・・。だめだよ・・・こんな」
体が熱くなって、匂いだけなのにお兄さんを求めてしまう
欲しくて堪らない
今の自分はかつての悪魔とは違うのに、悪魔の本能で求めてしまう
その日は休みだったけど、自分の体を自分で慰めて一日をつぶしてしまった
あんなに乱れたのは初めてだったかもしれない
疲れきった私はシャワーを浴びて眠った
そのときに見た夢はお兄さんを家に上げて一日中一緒に遊んだ夢
それとお兄さんに初めてを捧げた日の思い出の夢
ずっと浸っていたいくらいに名残惜しい夢だったけど体はそうもいかなくて目が覚めてしまった
そして、さらに匂いが濃くなって、もうそばに居るみたいに感じるくらいだ
「そっか・・・お兄さん。私の近くにいるんだ・・・。同じ地域に居るのかもしれない・・・。きっとどこかですれ違ってるから・・・。私の力に反応して、こんなことになってるんだ」
つぎに夢を見たとき、意識して近づいてみよう・・・・。
そしたら居場所がわからなくても会えるはず
その晩、私は実行した
順番的にはお兄さんが一番悲しかった思い出のはず・・・、もちろん私もいやな思い出、でも同じ気持ちのはずだから繋がりやすいはず
そして、お兄さんの夢に同調できた。
「やっと見つけた透お兄さん」
お兄さんが目を覚ましちゃったみたいで、飛びつこうとしたら私の意識も引き離されて目が覚めてしまった。
けど、意識が繋がったとき、お兄さんの今の姿が見えた
別れたときよりも血色もよくって、目にも光が戻ってて生き生きしてた
匂いも、懐かしくって、これならどこですれ違っても近くに居ればすぐ気づける
私はうきうきした気分で仕事に出た
いつもより仕事がはかどるくらいその一日はどきどきとわくわくでいっぱいだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「とまぁ、こんな感じだったんだよ。夢の内容はともかく、一番近くに居てくれて、心が近かったお兄さんが私のテリトリー内に入ったから匂いとして私が感知したんだ。それで私のお兄さんへの思いが強すぎて同調しちゃったんだよ」
ーーーーずっと会いたかったからだよ
希が俺の顔を見上げてそういう
大人になったはずなのにその表情と雰囲気は昔と変わらないのが不思議だったけど、きっと俺への気持ちが彼女を変わらせないでくれたのかな
と、少しうれしかった
「なるほど、ね。んで、透」
「ん?」
「あんた、もうすでに経験者だったのね」
「はじめては私が欲しかったですよぉ・・・信じてたのに」
「我はどちらでもよい。経験者なら痛くはしないはずじゃし」
問題はそこなのか?
いやいや、それ以上にお前ら乙女としての恥じらいがないのか
「あのなぁ・・・・」
「でも、好きな人とそうしたいっていうのは女の子として当然だよ?透お兄さんと知り合って、一緒に遊んで・・・いつの間にか心がきゅんきゅんして」
と、身を向き合うようにして膝に座りなおした希が胸に顔を埋めて体を震わせた
ほか3人は何かを察したか、何かと理由をつけてリビングを後にして出て行った
「うっ・・・・うぅ・・・っ・・・」
希は泣いていた。
「会えたよぉ・・・ずっと・・・ずっとずぅっと・・・会いたかったからぁ・・・」
「そうだな・・・俺も、ふとした拍子にお前を思い出すくらい心にお前が居たよ」
片手で抱きしめて、片方で頭を撫でる
あの時よりも大きくてもやっぱり小さい希は、暖かく、愛おしいと再確認できた
あいつらには悪いが・・・希の存在が一番心の中で大きい
「えへへ・・・んく・・・涙止まんない・・・すっごくうれしぃよぉ・・・うぅぅ」
「そっか・・・そうだよな・・・俺もうれしいよ。顔上げて」
「やん・・・今すごい顔になってるよぉ・・・」
「あはは・・ほんとだ、すっげぇ顔・・・でも、かわいいよ・・・。んん」
「んう!?」
たまらず口付けた・・・
当たり前だ・・・。
かわいかったから、それだけじゃない、あんな一方的な別れかたしたときの約束なんて普通守らないのに、こいつはずっと守ってくれたのが堪らなく嬉しかったからだ
「もぉ・・・ばかだよね・・・透お兄さんは」
「そうだな、おまけに四股だよ俺は」
「一番が私なら問題ないよ!それだけ透お兄さんが優しい人だってことだから」
化粧が涙ですごいことになってても元気に戻る希はあの時と変わらない
「でもお前ドジだよな」
「え?」
「だってさ、そのお前の領域内で匂いとして感知できたならそれで濃い場所探せたんじゃないか?飛べるんだろその翼」
「あ・・・・そだね・・・えへへ」
あ、だめだこいつ頭の中もまじめなとき意外は育ってない!!
こいつ飲み会のときとか平気だったのか?
「お前さ、仕事関係の飲み会でお持ち帰りとか」
「されてないよ!!透お兄さん以外に許すわけないじゃん!」
「よかった・・・ほんとうによかった」
「まったく・・・」
こうして、思い出の少女は思い出の存在じゃなく時がたった今、再開してまた恋人として一緒に居られるようになった
四股になるという異常事態にまで発展したわけだが
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