第9話 YからTへそしてL

「起きてくださぁい。お布団干しますよぉ」


おっとりした声が部屋に響く

結だ

布団や洗濯物干しは結が積極的にやっている

犬らしくお日様の匂いが好きだからやってるらしい

まぁ、うすうす気づいてはいるが別の理由もある


「ふふ・・・」


俺が寝ているのにもかかわらず布団にもぐりこんで擦り寄ってくる

彼女が犬だったときも同じだ

結構大きな家だったため大型犬であるにもかかわらず室内で飼っていた

そのときの癖なのだろう・・・今は人間の身なのに・・・


「俺は起きてるぞ・・・」

「知ってますよぉ?」

「なら早く出てくれよ・・・それと朝食は?」

「絆さんと繕さんが作ってくれましたぁ」


布団にもぐりこんで、鼻先がくっつくくらいの距離で会話する。

いい加減なれたものだ

ぶっちゃけ俺も男だ、うれしくないわけがないし可愛い子なら大歓迎だ

しかし、ほか二人もいる。修羅場が怖いから手を出すのは禁止で我慢だ


「そうか、じゃぁご飯食うかな」

「あんっ」


布団から追い出し、正座させて洗面所へ


「はぁ・・・手を出してくれればいいのにぃ」


そんな聞こえる声でつぶやかれても無視だ無視

洗面所で顔を洗い、リビングへ

朝食は和朝食、時たま洋食だが繕が用意するときは和食だ


「お、一品多いな。五目煮豆か」

「私が作ったのよ。好きだし」

「絆も和食が得意だといっていたから腕を試したのじゃ。しかし神の使いといえどやはり料理はできんとな」

「神の使いでも女よ?出来て当然じゃない」

「そうじゃのw」


と二人は顔を見合して笑いあう


「そういえば、貴方からなんだか匂いがするのよね」

「え?」


絆が目を細める、鋭い眼光だ


「そうかの?というより何の匂いじゃ?」

「別の女の匂いかしらぁ?」


布団を干し終わった結が席に座る


「んなわけないだろ、お前らが居んのにほかの女が近寄れるかよ」


俺はため息を着きながらいうが、正直こいつら美少女すぎるからほかの女に目がいかねーよ・・・


「うふふ・・・そんなに見つめられると照れて押さえが利かなくなっちゃいますよぉ・・・」


結がトローンとさせた笑顔を向けて抱きつこうとする


「やめい!食事中じゃろ結!やるなら別の時間でやるんじゃ」


繕が蜘蛛の巣で結と俺の間に壁を作る

もう、力を隠す気もないらしい


「匂い、そうね・・・幼い子特有の匂いの中に香水のような匂い・・・それと・・・」


絆はあごに人差し指を置き、宙を向いて考える

そして、答えに行き着いたのか俺の顔を見やる


「私と同格かそれ以上の人外の匂い」


ほか二人がやり取りを止める


「どういうことじゃ」

「そうですよ?私たち以外に接触してる人外なんて居ないはずですよぉ?」


そう、そのはずだ。旅行ちゅうだって人外は絆のみ。

しかも神格一歩手前の地位で、でもそれ以上かもしれない人外ってなんだ?

神以外にそれ以上の地位ってあるのかよ・・・

いや、よりにもよってこいつら以外の人外ってなんだよw


「まぁ、あなたたちは普通の存在から人外、妖怪化だしね。知らないとは思うけどこの世にはね?生まれながらに妖怪、魔物だったりするモノも居るのよ。それ以外にも何らかの接触により人外に変えられてしまった場合もあるの。あなたたちのように自然とそうなったモノ以外にもいるのよ」

「聞いたことはあるのぉ。しかし本当にいるとは」

「私は聞いたことないわぁ」

「どっちにしてもご飯を食べ終えたら詳しく話すわ」

「だな。俺も気になるし」


と、食事をゆっくり取って、洗い物を終わらせ、洗濯などの家事も終わらせてリビングに戻る

絆は少し真剣な顔をしていた

今回は本気で何かあるのか

それとも、絆にとっての何かなのか

それは話が始まらなければわからない


「んじゃ。絆、はじめてくれ」

「わかったわ。さっきも言ったように繕と結のように妖怪化したモノ以外にも生まれながらに人外のモノ、何らかの接触によっての人外化のモノもいるの。」

「そのどちらかの匂いがしてるってことかしらぁ?」

「あなた、犬なのにわからないの?」

「人間の姿だもの。嗅覚だって人間と変わらないですよぉ?マンガじゃないんですからぁ」

「あぁ、そういうこと。まぁいいわ。話を戻すけど、簡単に言えばそのどちらかの匂いがするのよ透から。しかも昨日よりも強くなってる」

「え?昨日から?」


俺には身に覚えがなかった

むしろ、そんなことに接触することすらなかったはずなのに

売店の店員がそれだった?

それとも電車ないの乗務員?

参拝客の中に?


「えぇ、厳密には旅館のチェックアウトの日から少しずつね」

「なるほど・・・・となると・・・・」


考え付く限りではあの夢?

でも夢が化け物?そんなこと聞いたことがない


「なにかしら?」

「懐かしい夢を見たのもそのくらいからだなって」

「・・・・夢、か。でも夢が化け物など考え付かん」


繕が両手をつかってお手上げのモーションを取る

絆もため息をつく


「でもぉ、その“お仲間”が相手ならそれは“敵”ですよねぇ」


と妖美な笑みを結が浮かべる


「フフフ・・・」

「まぁ、どっちにしても現れない限りはどうにもできないからのぉ~」

「そうね、結のいってることはわからないわけじゃないけどまだ様子見る程度のことしかできないわね」

「でも俺は警戒するに越したことがないってことだな。異変に気づいてくれてありがとうな絆」

「っ///あ、当たり前のことをしただけよ」


と絆がプイッとそっぽを向いた

照れてるのが丸わかりだ、だって尻尾と耳が出ちゃってるしな


それにしてもなんだろうな

人外が何でこんなに俺に集まってくるんだろう

理由がわからないのが怖い

このまま平和に生きて関係を気づいていける相手なのか

わからないのが余計に不安を煽るな


どっちにしても・・・・様子を見るしかない、か

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