第3話 懐き度MAXのペット現る

アレからさらに数日が過ぎ、ようやく待ちに待った夏休みが来た!!

俺はウキウキしながら家路に着いた

でもそのウキウキはさめてしまった・・・当然だ


「・・・・・・」


ドアにもたれ掛かり寝息を立てる学校の制服姿で栗毛色のショートボブの中学生くらいの少女がいるからだ

携帯を取り出し家にかけるも繕は出ない

おそらく買い物に出ているんだろう


「はぁ、起こしてみるか」


と、肩をゆすると「う~ん」

としか言わず、起きない


「たのむー、おきろぉ~。」


頬を軽く叩いてみる


「んあっ?」

「おまえ、人様の家の前で寝るとはいい度胸じゃないか?」


我ながら大人気ないなぁ、と言ってから後悔するが少女はその言葉にひるみもせず


「よかったですよぉ。会えましたぁ」

「は?」

「あのぉ?貴方は洲崎透さん、ですよねぇ?」


少女はおっとりとした口調でニコニコと話しかけてくる


「いや、そうだけど。君は?だれ?」


と聞き返すと少女は急に眉を下げて悲しげに俺を見つめた


「忘れちゃったんですかぁ?あぁ、そっかこの姿だと分からないですよねぇ」


ん?この姿?もしかしてこいつも

と考えてるうちに少女は「んーっ」と力むと体が縮んで栗毛色に近い毛色の犬の姿になる、過去に飼っていたラブラドールだ

え?でもあいつは・・・・

目の前のラブラドールは尻尾をふって擦り寄ってくる

そのラブラドールはすぐに人の姿に戻り俺の首に腕を巻きつけてくる


「思い出してくれましたかぁ?私はこうして生まれ変われたんですよぉ?また貴方に会えてうれしいですよぉ・・・」

「ちょ、ちょっとまて!」


唇に吐息がかかる寸前で少女を放した

危なかった、危うく流れでキスまで行くとこだった

だが確信した、こいつは俺の飼ってた、数年前に死んだはずのラブラドールの結|《ゆい》だ

こいつは俺を見つけるなり口を舐めて抱きついてきて満足するまでべったりだったラブラドールの結だ!

人になるとここまで危険な子だったとは


「いつもはキスしても抱きついても怒らなかったのに・・・なんでだめなんですかぁ?よくかいでみたら私と同じような存在がいるようですねぇ・・・もしかしてその人とぉ・・・・」

「いや、確かにお前みたいに妖怪変化で人の姿をした人いるけども・・・それより家はいるぞ。あまり人が通らないとはいえ目立つからな」

「はぁ~い」


ドアを開け、家に入ると熱気が襲う

即座にエアコンをつける、熱気が徐々に薄れていく

しかし、背中が暑い


「家に入ったのでいいですよねぇ?貴方のように人間になれたのでうれしいですよぉ」


抱きついて背中に顔を押し付ける結は普通の女の子にしか感じない

だが同時にだからそれがいけない


「離してくんないかなぁ・・・あつっくるしい」

「良いじゃないですかぁ・・・家に入ってエアコンもつけましたよぉ?やっぱり私以外の女がいるから遠慮してるんですかぁ?」

「違うから、とりあえず離してソファーに座んないさい」

「いやですよぉ?ずっと離れてたんですからぁ」

「はぁ・・・お座り!」

「っ!?」


人間としての感性と犬の従順さで「お座り」の一言でソファに座る

それを確認した俺は台所に入り、りんごジュースをカップに注いで持っていく


「これは・・・?飲んで良いんですかぁ?」

「いいよ?人間の姿になったんなら人間の食べ物も飲み物もいいんだよ」

「・・・・えっと、いただきます」


りんごジュースを飲み終えると結は幸せそうな顔をみせる

可愛い表情で、というかなんでそんなうっとりしてるんだ?


「はぁ~♪貴方の飲み物を共有できるなんてぇ・・・幸せですよぉ♪」


あぁ・・・そういうことね。味よりもそっちね・・・


ガチャ


「ただいま~」

「おぉ、おかえり繕」

「おぉ、そなたも帰っておったか・・・。して、その変化はなんじゃ?」


買い物袋を置いて冷蔵品を冷蔵庫に入れていく、手際はもうすでに主婦レベルに達しているくらいに違和感が消えていた


「あなたこそなにものですかぁ?蜘蛛の分際で私の透さんに近づいてたぶらかすつもりですかぁ?」

「いやいや、そんなつもりはないぞ?むしろ住んでいたねぐらに入ってきたのはこやつじゃし」

「なんですかぁ?透さんを悪者にするんですかぁ?噛み殺しちゃいますよぉ?」


おっとりとした口調に微笑む表情だが目が笑っていないw

しかし繕はそれを意に返さず夕飯の支度を始める


「噛み殺すならやってみせてほしいものじゃ。まぁ、そうなったら生活水準が落ちておぬしの餌もままならぬようになるがの」

「大丈夫ですよぉ?家事全般は私も教われば出来ますからぁ。犬は物覚え早いんですよぉ」

「そうかのぉ、生憎その教えてくれるものはいないんじゃがのぉ?男が生活水準を落とす時点で我が去れば自然と教えてくれるものもいなくなるのに気づかんのかのぉ?」


結はぐぬぬと余裕だった表情が悔しい顔にかわる


「別に透をとろうなんて思ってないし、おぬしの邪魔をするつもりもない。むしろ選ぶ権利は透の物じゃろ。のぉ?当事者なのに存在を薄くしようとしてる馬鹿者」

「う、まぁ、そうだな。俺にも選ぶ権利はほしいな」

「むぅ、わかりましたよぉ。ただし容赦する気ないですからねぇ?」

「容赦するも何もおぬしの邪魔をするつもりはないといってるだろうに」


と結の言葉に苦笑する繕、まぁなんにも問題がなくってよかったw


「ねぇ、透さぁん。私はなにをすればいいですかぁ?」

「繕の手伝いでもすれば良いんじゃないか?そもそもお前、家に帰ったほうが良いんじゃないか?」

「家ですかぁ?家はここですよぉ?」

「その変化も我と同じじゃろ、おぬしに強い縁があるからここに引き寄せられて人の形をとっておるんじゃろ」

「予想はしていたとはいえ、家族が増えちまったなぁ・・・・」

「いいじゃないですかぁ♪透さんのためならなんだって出来る私がそばにいるんですよぉ?あとそこの蜘蛛さん、私には結って名前があるんですよぉ?」

「はいはい、我は繕じゃ。いちいち憎まれ口では疲れんのか?それと洗濯物をとりこんで畳んでおいてくれんか?仕舞うのは透にやらせるからの」


俺に引っ付いてくる結の一言に半ばあきれながら答える繕。


「わかりましたよぉ・・・不本意ですがここで暮らすには家事をしないとだめですからねぇ」


しぶしぶと俺からはなれて結はベランダにパタパタと駆けていって洗濯物を取り込み始める


「そなたはゆっくりしておれ。仕事をしてお金を稼ぐのはそなたなのじゃ。夏休みにはいるのじゃから体を休めておくれ」

「あぁ、ごめんな」

「謝らなくてもいいんじゃ。ただ役割を分担してるだけじゃ」

「そうですよぉ?繕さんのいうとおりですよぉ。ですけど私は役割云々ではなく透さんのそばにいられれば良いですよぉ」


繕はそういいながら夕飯の支度を続けている、表情は微笑んでいて穏やかで、結も同じく穏やかに。

癒されるなぁ、と感じながらソファーでテレビを見ながら二人の感情を感じていた

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