第2話 財布は次から我が管理するからの!!
あれから一週間たった
繕もなれてきたのか、俺が帰ってきたときには既に夕飯が用意してあるといった感じだ
女性とは幾度も付き合ったことはあるがこういったことはほぼ無縁だったから正直嬉しい
会社の先輩からは
「お前、最近顔色いいよな。弁当も持参だし、なんかあったのか?女でもできたか」
とかなんとか聞かれることが増えた
たしかにそうだな、やる気も違うし、繕がメシの管理してくれてるからか
やっぱり三食は大切なんだな
それに、なんだかんだ言っても家に帰ると人がいるっていうのも悪くないな
とか考えて仕事をしていたらいつのまにか退社時間
いつも通り更衣室で着替えていると外が少しざわついている
「おい、あれ誰だ?めっちゃかわいいな!」
「しかも着物姿とか今時珍しいよな」
と、会話が聞こえてきた
え?着物姿?
まさかなぁ
「おーい!!洲崎ー!お前お前ロリコンだったのかー!?お前の客っぽいぞー」
あー、やっぱりだったかぁ
とりあえず外にでるか
「ちがいます。何て言うか、そう、妹みたいな感じっすよ」
外に出て女の子と顔を会わせる
「ようやく出てきたのか、遅いぞ透!」
やっぱり繕だったかぁ、顔会わせるまでは違うと信じたかったんだけどなぁ
「おう、繕。なにしにきたんだ?」
「買い物を手伝って欲しいのじゃ、色々足りないぞ」
なるほど、確かにこのサイズじゃ小さいから買い物は大変か
周りがなんか言って盛り上がってるが無視しとこう
「では、お先に失礼しまーす」
近くの駅から電車に乗る
電車をみて
繕は「箱がならんで走ってる、これは本当に大丈夫なのかの?」
と、よく分からない心配をしているがいざ乗ってみると窓を眺めて景色を楽しんでいた
元は蜘蛛だから乗ったことないのは分かるがそんなに珍しいものなのかと思いつつ、
新鮮さに欠けている自分の心にちょっと寂しさを覚えた
電車に乗り、20分。歩いて15分の大手デパートに着いた。
「大きいのぉ・・・。コンビニよりも大きくて安いとは、これからはここに買い物にくるかの」
繕は品物を手に取り、値段を見て驚く。
一週間は彼女を変えるのには十分な日数だったようでいまでは一人でコンビニに買い物に行けるくらいには成長をしていたがなにせコンビニは物価が高いのでそこまで大きな買い物は出来なかった
「あ、透。これ買っとくかの?塩飴」
「いや?別にいらないんじゃないか?お前がいるなら買えば良いと思うけど」
「いや、買っておこうかのう。そなたの職場とても暑いのじゃろ?ならこれをもってくがよい。熱中症?とやらにかかるのじゃろ?」
と繕が塩飴の袋を籠に入れる。
ニコニコとカートを押して品物とにらめっこする繕の姿がなんだかとても輝いて見えた
「透?どうした?」
「いいや、なんでもないよ。それよりよく品物を見て買うけど、何を比べてるんだ?」
「は?透は一人暮らしだったのに何も考えておらんのかの?値段、新鮮さと値引きは必要じゃろ。テレビでいうてたぞ?さては今まで値段など考えておらん買ったのか?」
ジト目で俺を見る繕。
人間の俺よりしっかりしてるのはきっと女性だからじゃないのかな?
それとも元の性格から?
「まぁ、これからは我が財布の紐を握るからの。透に任せたら多分生活水準が低迷じゃ」
ぷいっと顔を背けて買い物を再開する
見た目は子供なのにここまでしっかりされると俺の立つ瀬ねーんじゃねーのかな?
などと考えていると繕は足を止めた
「そなたは酒を嗜む口か?」
「うん、まぁ少しはね」
「じゃぁ買っていこうかのぉ。今の酒は飲んだことがない。ビール・・・チューハイ・・・どっちも安いからどっちも買っていこう」
「さて、買いだめもこれくらいにして帰ろうか」
「そうじゃの、荷物もちがんばってな?」
「おう、任せろ。ぶっちゃけ買い物に関しては俺何もできてないしなぁ」
「ふふふ、男はそれでもいいんじゃよ?女はそれを支える、理想の構図じゃ」
にこりと笑って会計を済ます
あぁ、なんていうか幸せだ、彼女・・・という関係ではないにしてもこうやって一緒にいるだけでもいいもんなんだよなぁ
そんなことを考えながら荷物をもつが、思ったより重い
もてないこともないがビニールがいたいw
そんなことを内心重いながらの帰りに繕がそっとハンカチを取り出した
「これを挟んでもつとよい」
さりげないフォローも出来ている
本当に蜘蛛なのか?妖怪変化の類なのか?
そう感じてしまう。初対面のときにみたあの蜘蛛の脚を出す繕
あれが夢なんじゃないか、そう考えてしまう
それくらい、人間として女性として魅力的だ
・・・・だけど、背がどう見ても少女150もなんだよなぁ絶対
「どうしたのじゃ?まだいたいのかの?」
「いや、ちがう。ただ自分が道をはずしそうでまずいな・・・とw」
「何を言ってるかさっぱりじゃ。でも、これからそれも理解していけるのかの・・・・」
遠い目をしてつぶやく繕
いや、そこは理解してほしくないwww
でも、繕は人間を理解しようとしているんだ
そんな表情だった
「家についたら、またご飯を食べながらいろいろ教えておくれ。我はもっとそなたと人間のことを知りたいのじゃ」
満面の笑みを浮かべる繕の姿に俺は心臓が跳ねた
純粋に可愛くて綺麗だったから
そんな顔で言われたら堕ちるしかないじゃないか
「あぁ、わかったよ。いろいろ教えてやるよ」
そんな気持ちを隠すために一言で了承した
まだこの関係を続けて行きたいから
ただ、俺は、このときの俺はこの先に更なる困難が待ち受けてるのなんて知る由もなかった
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