第137話 動き始めた計画 その4
この光景を見たセンは、あまりに呆気なく施設が破壊されたので思わず感嘆の声を上げる。
「うおお……」
「ザッとこんなものだ」
「流石でMGSの切り札でござるな」
その圧倒的な破壊力に興奮した彼は、頬を染めながら魔法使いの顔を見る。逆に冷静なファールゥは黒スーツ男に仕事の続行を訴えた。
「お世辞はいいから次に行こう。200ヶ所あるんだろう」
「そ、そうであった……」
こうして悪党達の破壊工作が始まった。各地の重要施設が破壊されると言うこの異常事態は、すぐに基地にも情報が伝達される。
「大変です、各地の情報通信施設が何者かに破壊されています!」
司令室で情報の解析をしていた所長は報告を受けてすぐにモニターを被害状況に切り替えた。そこに映っていたのは、まるで爆弾で破壊されたような各情報通信施設の残骸の映像。
この報告を受けた時点で既に20ヶ所以上の施設が、たった2人の悪党によって破壊されていた。
「何者かって……」
「彼奴等ですね!」
「破壊者の映っている映像を回します!」
衛星からの破壊の瞬間の映像が映り、瞬時に解析される。ズームアップしたところで確認された2つの人影の詳細を基地のコンピューターが判別し、データが表示された。
それを見た所長はすぐに指示を飛ばす。
「ビンゴ!みんなを呼んで」
「了解!」
ずっと所長と一緒にいたモモが、すぐにヒーローメンバーの招集をかけた。速攻で司令室に顔を出したソラは、ドアを開けた瞬間に叫ぶ。
「セルレイスだって?」
「今回もまた他組織と一緒に動いてる。油断は禁物だよ」
「俺は先に行くぞ!」
敵の正体を確認した彼は、所長からの作戦とかも何も聞かずにそのまま格納庫に向って走っていった。
修行のせいで連絡に気付くのが遅くなってワンテンポ遅れて司令室に向っていた俺は、基地の廊下ですごい勢いで走っていくソラとすれ違う。
「おっと……」
何かただならない雰囲気を感じつつ、取り敢えず司令室に顔を出すとすぐにモモから言葉が飛んでくる。
「リーダー!」
「ちょっと遅くなってゴメン。集中していて……」
「言い訳はいいから。今から作戦を言うよ」
モモも所長もどこか焦っているようだ。まだ司令室に顔を出したばかりで状況の把握が出来ていない俺は、作戦の指示をするなら全員が揃っていた方がいいと判断。
そこで、今すぐにでも勢いよく話し出しそうな所長に声をかける。
「でもさっきソラが出ていったけど……」
「あの子はもう仕方がないから。私達の方でサポートするよ」
どうやら所長はさっきのソラの行動込みで話を進めているらしい。そこから今回の敵について大体の事情を察した俺は、彼女の言葉を飲み込んだ。
「分かった。で、作戦はどんな?」
「敵はセルレイスとMGSのタッグ。何をしているかと言うと通信施設の破壊活動」
「なんだって?ヤバイな」
「そう、やばいの。今は無人施設を順番に襲っているけど、その内もっと大きな場所も狙っていくはず。その前に止めないと」
所長の話を聞きながら、俺は敵が破壊活動を行っている様子を映すモニターを確認する。通信施設が一瞬の内に黒焦げになる様子は、まるでゲームで敵施設を爆弾で破壊していくそれを忠実に実写化したみたいだった。有人の施設でこのレベルの破壊が行われたら、職員達は逃げる間もなく施設と運命を共にしてしまうだろう。
それだけはどうやってでも避けないといけない。危機感を募らせた俺はすぐに所長に指示を求めた。
「じゃあ俺達はどう動く?」
「ここ!多分ソラもこの場所を目指してる!敵は必ずこの場所に向かうから待ち伏せて。後は現場の判断で!」
所長は敵が向かう場所の予測を立てて、そこで迎え撃つ作戦を立ち上げる。事態は一刻を争うと言う事で、この大雑把な指示を受けた後、俺に向かってすぐにモモが声をかけてきた。
「リーダー、行きましょう!」
「わ、分かった!」
俺達は急いで格納庫に向かい、自動操縦カーに乗り込む。予想通りソラ専用のバイクはもう走り出した後。目的地に自動的に向かいながら、俺は敵の動きについて話しかけた。
「それにしても敵側も派手に動くようになってきたな」
「もしかしたら何か別の目的があるのかも知れません」
「陽動の可能性か。とにかく気を引き締めないとな」
ここまで話したところで、今回戦う敵についてまだ何も知らない事に気付いた俺はモモに資料の提示を催促する。
「そうだ、今回の敵のデータは?」
「モニターに出しますね」
彼女は馴れた手付きで車載モニターを操作する。そこに表示された情報を見た俺は顎に手を当てた。
「やっぱりあの武士は続投か。厄介だな」
「そちらもですが、今回彼と組んでいるのも手強い相手なんですよ」
俺が前回も戦った黒スーツ男についてどう戦うか戦略を練っていると、モモが更にモニターを操作する。そこに表示された今回彼と行動を共にしているMGSの魔法使いの情報を俺は目で追った。
「えっと、ファールゥ?」
「そうです。彼はMGSでも幹部クラスなんですよ。今まであまり表に出てこなかったのでその実力は未知数ですが……」
スラスラとMGS側の機密事項っぽい情報を口にするモモに、俺はふと素直な疑問を思い浮かべてしまう。
「このデータはどこから?」
「まぁ色んな手段で」
「お、おう……」
それ以上は聞いてはいけない雰囲気を感じた俺は追求をあきらめた。知らない方がいい事が世の中にはあるもんな。触らぬ神に祟りなしだ。
と、言う事をで話を戻して、俺はこの未知の敵についての感想を口にする。
「幹部って事は、もしかしたらこいつはバカげた力を持ってたりするのかもな」
「彼が関わった可能性のある事件がこれなんですけど……」
何かの参考になるだろうと言う事で、彼女はこのMGSの幹部が関わった可能性のある事件をリストアップしてモニターに表示させる。その事件はどれも迷宮入りした派手な事件ばかりで、とある特徴的な共通点があった。
そこに気付いた俺はモニターを見ながら口を開く。
「爆発事故で処理されたものばかりじゃないか。おいこの事件、ビルひとつが派手に破壊されたやつ、まさかこれもなのか……?」
「信憑性はあまり高くありませんけどね」
「これは……手強い仕事になりそうだな……」
モモの言う通り、ビルひとつ破壊するほどの魔法を使う敵が相手なら黒スーツ男よりそっちの方が厄介かも知れない。敵がそこまで強いとなると、綿密な作戦を立てないと俺達が勝つのは難しい事だろう。
敵の強さに戦慄を覚えた俺は、今回のプランについて質問する。
「で、作戦はどう立てる?」
「データがない以上、出たとこ勝負です」
「そんなアバウトな……」
「そ、そうですね……。では、ソラの結界でガードしつつ、隙をうかがって攻撃。まずはリーダーの風の攻撃で牽制して、私はこれを……」
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