コント 書店

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

 書店の前で足を止める客A。


客A「お、ちょうど持ってた本、読み終えたばかりだし、何か新しいもの探すか」


 書店に入る客A


店員A「(大声で)へい、らっしゃい!」

客A「いや、ちょっとうるさいよ。八百屋じゃないんだから。もっと静かで良いよ」

店員A「お客さん、すいません、うちアダルトとか扱ってないんですよ」

客A「いや、探してないよ」

店員A「あ、ブックオフでしたら、ここを出て右に曲がった……」

客A「いや、ブックオフとも間違えてないよ」

店員A「トイレでしたら、うち貸してないんですよ」

客A「トイレも借りないよ」

店員A「『BUBUKA』でしたら、こちらに……」

客A「さっきから、あんた俺のことどう見てるんだよ。客だよ、客。上から下まで1100%客だよ!」

店員A「申し訳ありません。お客様があまりにもみすぼらしい恰好をしているもので……」

客A「もっとオブラートに包んで言い方出来ないのかよ」

店員A「本日はどういったご用件で?」

客A「いや、本買いに来ただけだから」

店員A「のんきですねえ」

客A「は?」

店員A「では、ごゆっくり」

客A「なんか納得いかねえなあ」


 店員Aから離れ、売り場をうろつく客A。

 すかさず、客Aの背後にぴったりとくっついて歩く店員A。


客A「いや、うるさいよ。何してんだよ、あんた」

店員A「すいません、私万引きGメンですから。店員Gメンでもあり、万引きGメンでもあるんです」

客A「あからさますぎんだろ。何でこんな近くでマークしてんだよ」

店員A「お客様が、怪しい動きをしているもので……」

客A「本探してるだけだろ。全然怪しくないよ」

店員A「言い訳なら、事務所のほうで聞きますが。『盗人にも三分の理』ということで」

客A「盗ったこと前提かよ」

店員A「盗ったんですか?」

客A「盗ってねえよ!」

店員A「『人を見たら泥棒と思え』と言いますからね」

客A「店側がはっきり言っちゃうのかよ」

店員A「正直言って、泥棒と疑われるお客様の方にも問題があると思いますが。その鞄とか」

客A「鞄ぐらい誰だって持ってんだろ。(鞄の中を見せて)ほら、盗んでないだろ」

店員A「お客さん、これ、四次元ポケットですか」

客A「馬鹿かよ」

店員A「よく見たらドラえもんに似てるし」

客A「太ってるだけだっつーの。もういい。俺は帰る」


 店から出て行こうとする客A。


店員A「ちょっと待ってください」

客A「なんだよ」

店員A「実は私、本のソムリエもやっておりまして、お客様の好みにあった本を選ぶことができるんです。つまり、ソムリエGメンなんですよ。(ポケットから名刺を取り出し)あ、これつまらないものですが」

客A「(手でさえぎっって)いらないよ」

店員A「お客様は、どういったものが好みで」

客A「いや、まあ、夏目漱石とか……」

店員A「ああ、『我輩は主婦である』の」

客A「それはクドカンのドラマだろ。わざと言ってんだろ」

店員A「それでしたら、『こころ』とかがおすすめですが」

客A「夏目漱石が好きつって、『こころ』読んでない方が珍しいだろ。教科書にも載ってんだぞ。にわかか」

店員A「注文が多いですね。だから童貞なんじゃないですか?」

客A「なんだ急に。しかも、童貞じゃねえし」

店員A「童貞の方でしたら、こちらに『童貞小説集』というのがありますが」

客A「いい加減にしろ」

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