第15片 書いてから、死ね




いつも己に言い聞かせる

心ふるわぬ時は怒鳴りつける、叱咤する


書く前に生きるな

書いてから、死ね


それしかできないのだから、

それ以外のことができないのだから、私は書く

誰の許しをえずとも勝手に書くから、

あらん限りのことばを、力いっぱい書き殴って、死ね


表現とは、苦悩と痛みを親にして生まれ

自らでは喜びを生みだせない

他己から感情を与えられなくては、ただ干からびて死ぬ

ひとりぼっちでいたら、何をせずとも死ぬ

人によって生かされて、人によって傷ついて、人の手によって殺される

何にしても死ぬ、生きていたから死ぬ、ことばは生まれたゆえに死ぬ


だったら、迷うな

大仰おおぎょうに胸を張って、開き直ってしまえ

半死半生のていで、終始悲鳴をあげつつも、ことばで殴る、人を殴る

がつんがつんと音をたて、人様の阿鼻叫喚あびきょうかんを聞いてから、

ざまあみろと、哄笑こうしょうして、死ね


どうせお前は死ぬのだから、せいいっぱい人の感情を揺さぶって、死ね

どうせ私も死ぬのだから、凄烈せいれつ春暁しゅんぎょうのように、命を燃やして、

何がなんでも、書いてから、死ね


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