第12片 滑空ジャンキー




悲しいことがあれば、空に飛び出そう

寂しくて仕方ない夜は、朝を迎えに東を目指そう

涙が頬をつたうことはない

すべて大気にばらまいてしまえばいい


風を切ろう

エネルギーが切れるまで、地球を何周もしよう

音速を超えよう、光を目指そう

強気になったら、上昇しよう

弱気になったら、下降しよう

疲れればスピードをゆるめて

気流にのって、どこかの街に流れよう


一回転して360°の天地を視界に映す

両手をまっすぐ伸ばす、指先は空をつかむ

ただ胸にとくとくとあふれつづける恍惚感

両手を広げ、放り出された自由をかきあつめる

誰も追いつけない、誰もつかまえられない


空気は薄まり、体はピシピシと凍りついても

ぼくはそれを振り払い

うっとりとして、再び超高速のレースに酔いしれる


滑空ジャンキー

地上はもうはるか彼方


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