第3片 詩人になりたいと言ったなら




詩人になりたいと言ったなら

詩人とは職業でなく

道楽なのだよと諭されて

ならば道楽に命をかけた人たちは

愉しみに生きて死んだのか


詩人になりたいと言ったなら

みながにこやかに笑うので

許されたのかと喜んだところで

子どもの言うことだからと

ことばは水のように流された


詩人になりたいと言ったなら

わたしはひとり、孤独のただなかにあった

ことばを紡いでも紡いでも

丸みをおびたり、角ばったりする糸は

のびるばかりで切れようがない


詩人になりたいと言ったなら

わたしはひとり幸せの頂きにあった

伝わらない想いだけが、雪のように冷たくて

しんしんと降り積もった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る