汚れた町で信じる希望 5

 __あるところに、小さな少女を身籠った、母親がいました。


 名を、未紗みさと、言います。


 父親は、靖弘やすひろと、言いました。


 ある日、母親は、父親に、子を身籠ったことを報告しました。


 父親は、それを聞いて、大喜びしました。


 父親の職業は__パイロットでした。



『そうか。名前か……』

「はい……そこで考えたんだけど……」

『…………おぉ!いいじゃないか。』



 こうして、少女は、この世に姓を持って誕生しました。



 その子の名前は、有佐ありさと言いました。




 生まれたばかりの頃は、



「…………ウエーン!」

「どうしたの?………ミルクかな…」


 ゴクゴクゴクゴク


 トントントン「ゲフッ」


「いいこでちゅね……」



 こんなことばかりを繰り返し、生活していた。




 そして、半年がたった頃__



「……………まぁ。」

「……え?」

「…まぁ。まぁ!まぁ!」

「……この子、私のこと……」




 母親は泣き崩れました。


 仕事中の父に電話すると、


「あなた!あなた!」

『どうした。』

「喋ったの……喋ったの!」

『……本当か!』ガタッ

『ぁぁ。すまんすまん………』

「あなた………」


 父も、母も、大いに喜びました。











 __このときまでは、幸せだったのです。












 __娘が、成長した時のこと……そう、あれは、5歳の誕生日でした。




「おめでとう。」

「ありがとう。まま。」



 プルルルルルル プルルルルルル


「誰かしら。」ガチャ


「はい。」

『あぁ。未紗か。』

「あなた。どうしたんですか?」

『………ちょっと、今日は、帰れそうにないんだ。』

「何かあったの?」

『ちょっとな……』

『有佐に、おめでとう。と、言っておいてくれ………』

「お仕事、頑張ってくださいね……」

『ありがとう。未紗…………愛してる。』ブツッ












 __それが、父の最期の言葉でした。





 原因は、操縦ミスでした。




 死者が、何人も出ました。



 残された家族は、私の父を……家族を恨みました。




 私の家には、誹謗中傷などの心のない落書きなどが、されました。











 __父が死んだことを知ったお母さんは、泣き崩れました。


 ただし、それは、感動ではなく、悲しみによるものでした。










 __母も、父の後に続くように、旅立っていきました。



 最期に、母親は__


「おやすみ。有佐。愛してる。」



    __とだけ、遺していきました。











 母の死は、ストレスによるものだと片付けられました。




 一人残された、私は母を憎みました。











 __母は、私を愛してなどいなかったのだと。




 __母は、父だけを愛していたのだと。

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