汚れた町で信じる希望 4

「私はね、幼稚園出身なんだ。」


 そう語り出した有佐ちゃん。


「みんなって、大体、保育園出身でしょ。」


 だからね、私、来たんだ。………と。


 重い口をあける。


「………知らないかもしれないけど、私って転校生なんだ。」


「前いた街は、ここよりも、もっと田舎で、辺鄙な土地だったんだ。」


「だけど、ある事件がきっかけで、その街は、無くなってしまったんだ。……」


「………この場合は、焼けちゃった…かな。とにかく、街が、全部……跡形もなく、無くなったんだ。」



「私の………お父さんのせいで。」



 そこから、有佐ちゃんは、何も話さなかった。……いや、泣くのを我慢していたように見える。


 私は、彼女の肩をさすった。


 彼女がこちらを向く。


「大丈夫?」


 私が言うと、


「何で?」


 と彼女が言う。


「泣きそうだから。」


 と言うと、


「未菜ちゃんだって……」


 ………ぽろぽろと、何かがこぼれていく。

 ………ぼろぼろと、何かが溢れていく。


 感情と押さえきれない何か。


 この気持ちは………












「ふぅ。大分落ち着いたかな。」

「そうだね。」


「じゃあ、話の続きをしようか。」











「これから話すのは、愚かな家族のお話だよ。」

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