The Letter
赤鐘 響
第1話
拝啓、僕へ。
目は覚めましたか?傷の具合はどうですか?
右腕の傷はきっといつまでも痛いでしょう、左腕の傷はきっといつまでも残るでしょう。
指先を血が伝った時、さぞ快感だったでしょう。傷つけられた左腕を使って右腕を自分で傷つける。その行為に意味はありましたか?何が見えましたか?何かを得ましたか?
拝啓、私へ。
目は覚めましたか?傷はまだ痛いでしょう?
あなたはまだ逃げていると思います。目を逸らしていると思います。
つみ木はまだ持っていますか?失くしましたか?それともしまったままですか?積み上げるものはまだ、残っていますか?その腕で、何を抱えるのですか?
拝啓、愚か者へ。
目は覚めましたか?とはもう聞きません。あなたの目はもう開くことはないのだから。
刺さったトゲはどうなりましたか?刺さったままでしょうね、きっと。
ずっと平らなのですね、僕には分かります。
夏が来ましたね、どうですか?迷う事はもうないでしょう。
拝啓、君へ。
こんにちは、お久しぶりです。元気にしていますか?
僕はまだ眠ったままです。あの日からずっと寝たままなんです。
きっと君は進むのでしょうね、その丈夫な両足で。
きっと君は掴むのでしょうね、その丈夫な両手で。汚れた両手で。
私の足元の台は不安定で今にも倒れそうです。君は台に乗ることすらないのでしょう。僕は祈っています。私は叫んでいます。平らな世界でずっと。ずっとずっとずっと。
名無しより
The Letter 赤鐘 響 @lapice
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます