悲劇と喜劇の1日 ⑨

ジェイソン退院当日。


皆で迎えに行き、その足で学校へ。

次の日から登校できる旨をダーバス先生に、部活に戻れる旨をボルトン先生に伝えにいった。


そして、学校から少し離れた海辺の家に向かう。


ジェイソンは困ったような不思議そうな、それはそれは複雑な表情をしていた。


海辺の家では、既に女性陣が待機していた。


女性陣に代わる代わるハグとキスをされ、ジェイソンは照れてはにかんでいた。


ガブリエラとマーサが両脇で腕にくっつきながら、部屋に入ると、綺麗に飾り付けされ、料理が並んでいた。


「ねえ皆、これは一体どうしたの?」


何が何だかわからない、といった表情を皆に見せるジェイソンと、それを見て笑うメンバー達。


「ジェイソンの退院祝いパーティだ!」


チャドがジェイソンに飛び付き、トロイ、ジークはジェイソンとハグをした。


「ぼ、僕なんかの為に?」


ジェイソンは少しポカンとした顔をしたが、次には泣きそうな表情に変化していた。


「「「「ジェイソン、無事退院おめでとう!」」」」


皆がそう叫んだ瞬間、クラッカーの音が響いた。


それぞれがプレゼントを渡している最中、いつの間にか居なくなっていたジークがキッチンから戻ってきた。

その手には、ワイルドキャッツの顔が形になった、大型のベリータルトを持っていた。


「腕によりをかけた大作タルトだ!」


赤いベリーで綺麗に作られたワイルドキャッツ。周りはパウダーシュガーで白く染められていた。


「ありがとう、ジーク」


「凄く綺麗で、食べるのが勿体無いけど…とても美味しそうだ」


ジェイソンが笑うと、ジークも笑う。


「ジェイソン、タルト食べてくれよ!」


ジークに促され、ジェイソンはタルトを切って口に運び、咀嚼して飲み込む。


「うん、凄く美味しいよ!甘過ぎなくて、幾らでも食べられちゃいそうだ!」


ジェイソンはパクパクとタルトを食べて行き、4分の1程食べたぐらいで、マーサとガブリエラがピザを持って現れた。


「うわぁ、美味しそう!」


ジェイソンはニコニコ笑い、マーサがカットしたピザを受け取って、一口食べた。


「うん、僕の大好きなピザだよ!」


ジェイソンは口いっぱいにピザを頬張りながら、皆を見回した。


「皆、本当にありがとう…あ、皆も食べてよ、僕だけじゃ食べきれないよ!」


ジェイソンの言葉を皮切りに、皆が盛り上がりながら、ピザやタルトを頬張った。


そんな中、ケルシーがジェイソンに声をかけた。


「ねぇ、ジェイソン…こっちに来て?」


「あ、うん…」


ケルシーはジェイソンの手を引き、ピアノの側に歩いた。


そして、楽譜を開いてピアノを奏で始めた。


繊細で美しい音色が部屋中に響き渡る。


引き終わる頃には、皆がピアノの周りに集合していた。


「わ、皆いつの間に…」


ピアノの弾き終えたケルシーは周りを見て驚いていた。


「…素晴らしいピアノだったよ、ケルシー」


ジェイソンはふわりと笑って拍手をし、皆もつられるように拍手をした。

皆が拍手をした為、しばらく拍手喝采状態になった。


「そうだ、ケルシーもタルト食べなよ…最期の一切れだよ!」


ジェイソンはお皿に乗ったタルトをケルシーに手渡し、ケルシーはそれを受け取って一口頬張った。


「わぁ、凄く美味しい!流石ジーク!」


ケルシーは幸せそうに微笑んだ。


パーティ半ばになると、チャドとテイラー、トロイとガブリエラがいちゃいちゃしていたりした。

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