悲劇と喜劇の1日 ⑧

ジェイソン退院まで、後1週間。


それぞれが退院祝いを考えていた。


ケルシーはピアノを、ジークは腕によりをかけたお菓子を、トロイとチャドは2人でお金を出し合って新しいバスケシューズを、テイラーはワイルドキャッツのフェルトキーホルダーを手作りし、マーサとガブリエラは料理を作る事になった。


パーティの飾り付けは男性陣が、料理やセッティングを女性陣が担当する事で同意した。


そしてそれぞれが用意する為にその日は解散する事に。


ケルシーは楽譜を見ながら歩いていた。

すると、不意に声がした。


「やぁ、ケルシー」


顔を上げると、そこにいたのはライアンだった。


シャーペイの双子の弟で、いつも彼女に振り回される損な役回り。


「こんにちは、ライアン」


穏やかな笑顔で挨拶を返す。


「ピアノに関する悩み事かい?ずっと楽譜を見てるようだけど」


眉毛を八の字にしながら、ケルシーを見据えた。


「あぁ、えっと…2週間前の試合でジェイソンが大怪我しちゃって…来週末に退院するから、お祝いにパーティする事になったの」


ケルシーが微笑みながら説明すると、ライアンは楽しそうな笑顔を浮かべた。


「退院祝いパーティ、素晴らしいじゃないか!」


ライアンは目を輝かせている。


「わ、私は退院祝いのプレゼントにピアノを弾くつもりなんだけど…」


それを聞けば、ライアンはさらに目を輝かせた。


「僕も何か協力出来ないかな?」


唐突な申し出に、ケルシーは皆に聞いてみる、とだけ話してその場を離れた。


「ピアノ、どれが良いかな…」


沢山の楽譜を代わる代わる眺め、また悩む。


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