第63話 おばあちゃんのおもてなし その5

「うん、正直でよろしい。ただね、青リンゴの方は力が強い分、制限もあるんだ」


「制限ってどんなのっスか?」


 この話に興味を持ったルルが会話に割って入ります。彼女の質問におばあちゃんは左手を腰に当て、右手を顎に当てながらながら話します。


「多分だけど、青リンゴの能力は大人になると使えなくなる。頑張って二十歳くらいまでだろうさ」


「へぇぇ~」


 おばあちゃんの話を黙って聞いていた鈴香はここで感嘆の声を上げました。この話の流れに乗って次はアリスが質問をします。


「私達の能力はずっと使えるんデスカ?」


「ああ、そのはずだよ。個人差はあるだろうけどね」


 おばあちゃんはポーズを変えずにその質問に答えます。質疑応答タイムはその後も続き、能力について疑問を持っていたメンバーがそれぞれおばあちゃんに長年の疑問をぶつけていきます。どんな質問にも明快に答えてくれるばあちゃんの話術に話も大いに盛り上がりました。


「ぷしゅ~」


「あ、こら、こんな場所で寝ないでよ」


 みんながヒートアップしている中でひとり鈴香だけがここでダウンしてしまいました。これもまたお約束です。机に突っ伏した彼女を見たおばあちゃんは仕方ないなあというジェスチャーをしながら彼女に声をかけます。


「ふふ、お腹がいっぱいになったら眠くなるもんねぇ。鈴香ちゃん、お布団のある部屋に行こっか」


「ふぁ~い」


 おばあちゃんに連れられて鈴香はリビングを後にしました。この様子を眺めていた泰葉は苦笑いをしながらポツリとこぼします。


「鈴香ってば、本当にどこでも平常運転だね」


「泰葉っち、おばあちゃんて今何歳なんスか?」


 おばあちゃんが部屋からいなくなったのを見計らってルルから質問が飛んで来ます。本人がいる前では聞けなかったのであろうその質問を前に、泰葉は首を傾げながら答えました。


「正確なところは分かんない、聞いてもはぐらかされるから」


「美魔女って感じはするよね」


 年齢の話が出た所でセリナもおばあちゃんについての印象を口にします。確かに年齢不詳なところは美魔女と言っていいでしょう。泰葉はこの言葉を受けておばあちゃんの秘密をみんなに向けて話しました。


「美って言うか本人曰く本物の魔女らしいけどね」


「うん、確かにあれは魔女だよ。私には分かる」


 泰葉の話したおばあちゃんの秘密についてゆみはうんうんとうなずきながら分かっていた風な返事を返します。この言葉が気になった泰葉は思わずゆみに聞き返しました。


「何か見えた?」


「いや、何も見えはしないけど」


 泰葉はゆみの能力でおばあちゃんの背後に何かが見えたのかと思ったようなのですが、それはただ単に彼女の直感がそう告げただけのようです。この返事を聞いた泰葉は期待が外れて少しがっかりしました。

 彼女達の会話を聞いていたアリスは今度は自分の番と少し興奮しながら口を開きます。


「どこか神秘的な雰囲気は感じマスネ。流石泰葉のおばあちゃんデス」


「ん?それは私が神秘的って事でいいのかな?」


「えっト……」


「こらこら、アリスを困らせるな」


 泰葉が少しからかうような返事をした所でゆみからのツッコミが入りました。彼女のお陰で場の雰囲気は少し和やかな感じになります。やがて鈴香を寝かしつけたおばあちゃんが部屋に戻って来ました。

 みんながまったりくつろいでいる姿を目にしたおばあちゃんは優しく声をかけます。


「さて、みんな、お腹も膨らんだ事だろうし、ちょっとゲームをしようか?」


「ゲーム?」


 おばあちゃんはみんなに一体何をさせようとうのでしょう?ゲームとは言うけれど、それが一体どんなものなのか、孫娘の泰葉ですら全く見当がつきません。


 おばあちゃんはにやりと笑うとみんなの前に地図のようなものを広げます。そこで泰葉は直感しました。おばあちゃんがみんなを呼んでまでさせたかったものって、きっとこれだったのだろうと。

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