第40話 衝突!それぞれのリンゴ仲間達 その5

 そんな経験も意気込みもバラバラなみんながグダグダになりながらボーリング対決の段取りを済ませ、ゲームが始まります。


「うりゃあ~」


「ああああ~」


 ゲーム参加者は経験者もいたとは言え、殆ど初心者だったのでその結果は散々なものでした。ガーターは連発するしスペアも殆ど取れません。ストライクを出そうものなら歓声が上がるほどでした。


 そしてボーリングにさほど興味のない人達は別のゲームを楽しんでいました。その中でバスケットにボールを入れるゲームをしていたのは泰葉と林檎です。

 まずは泰葉がこのゲームに臨みます。うまく位置を決め、適切な調子でボールを放りました。泰葉の腕から放たれたボールは吸い込まれるようにバスケットの中に入ります。


「3点シュート!」


「うわ、すごい。じゃあ私だって!」


 彼女の成果を見た林檎は興奮しながら次は自分の番だとボールを放ります。投げられたボールは、しかしバスケットには入りませんでした。


「うう……」


 この結果に林檎は落胆します。そこで意地になって何度も何度もボールを放るのでした。


 さて、ボーリング対決ですが、低レベルのゲームが続き、僅差でフルーティーズの勝利となりました。ゲームを終えて楽しんだ両陣営はまた別の場所に移動します。

 何か面白いものはないかと次はゲームコーナーにやって来ました。そこでお目当てのマシンを前に桃が声を上げます。


「プリクラ撮ろうよ!」


 彼女の提案を受け入れ、みんなでプリクラを撮る事にします。人数が多いので全員の集合写真こそ撮れませんでしたが、それぞれ好きな組み合わせで何回も何回も写真を撮ってみんな楽しい時間を過ごすのでした。どうやらゲームを通じてお互いに仲良くなれたようです。

 プリクラを撮り終え、別のゲームを楽しんでいた林檎が時計を見て声を上げます。


「あ、もうこんな時間」


「え?」


 気が付くともう夕方になっていました。隣町から来ているフルーティズは少し早目に地元に戻らなければなりません。なのでお別れの時間が近付いていました。林檎は泰葉達にもうあまり時間のない事を告げます。


「ごめん、私達今日はこれで帰るね」


「そっか、楽しかった、有難う」


「また勝負しましょう」


「いいね、負けないよ!」


 林檎の言葉に泰葉も楽しい時間を過ごせたお礼を言います。そうして彼女から再戦の提案を受け、今度は同じ結果にはならないと強がりを言うのでした。

 折角だからと駅に向かうフルーティーズに泰葉達も同行します。その道中でも話は尽きませんでした。


「今度こそ勝つよ!今回はスポーツ担当がいなかったからね」


「ほう、それは楽しみだ」


 この泰葉の言葉に何故かレモンがにやりと笑いながら反応します。別の場所ではいちごとゆみが話しています。


「私達、似た者同士だね」


「でも能力に関して言えば私達の方がかなりへっぽこだから」


 サイコメトリのいちごに対してプチ霊能者のゆみは能力の差から自虐的に答えます。その答えを聞いたいちごは少し寂しそうな彼女を勇気付けるように声をかけました。


「日常的に役に立つかどうかで言えばいい勝負だよ」


「そっかな……有難う」


 いちごに優しい言葉をかけられてゆみは感謝の言葉を返すのでした。


「また遊びましょ~」


「今日は楽しかったぞ。またなー!」


 のんびり屋の鈴香がフルーティーズ全員に向けて声をかけます。この言葉にわさびが少し名残惜しそうに返事を返しました。


「今度は朝から遊べるといいデスネ~」


「そっちもその時はベストメンバーで!」


「うん、都合が合エバ。じゃあまたネ!」


 アリスもフルーティーズのみんなと仲良くなれて嬉しそうです。特に返事を返してくれたみかんとは気が合いそうな感じでした。

 やがて帰りの電車の時間になったフルーティーズのみんなは彼女達の地元へと帰って行きました。

 全てが終わって一息ついた泰葉はみんなに向かって声かけます。


「何だか今日はすごい濃い一日だったね」


「じゃあ、私達もここで解散にしよっか」


「朝は山歩きで昼からも体動かしたしね」


 泰葉の言葉にセリナとゆみが返事を返します。みんなもう使える体力は使い切ったという雰囲気でした。

 セリナの言葉を受けて解散しようと言う流れになり、泰葉がそう宣言しようとした矢先、一足お先に鈴香の充電が切れました。


「ぷしゅ~」


「ちょ、鈴香、まだ早いよ!」


「あはは……」


 その場でいきなり倒れそうになる鈴香をゆみが支え、それを見たみんなは軽い笑いに包まれます。そうして泰葉達もここで解散し、それぞれ帰路に着きました。

 泰葉はこの出会いは何か特別な運命的なものだと実感し、この繋がりを大切にしようと心に誓ったのでした。

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