第5話 母との再会
母が亡くなってから15年が経った。亡くなってからというもの、夢にも出てきてくれず、15年という歳月が流れたのにも関わらず変わらずに恋しく寂しい。
私は一人暮らしをしており、夕方頃に昼寝から目を覚ましたが目を閉じたまま眠気の余韻に浸っていた。
カラスの鳴き声、近所の子供たちが母親に呼ばれる声、しばらくすると町内放送が流れた。明日は燃えないゴミの日か。そろそろ目を開け起き上がろうかなと思っていた。それに、毛布を蹴脱いでしまっていて少し肌寒い。
「博子ちゃん。風邪ひくよ。」
何年経とうと忘れ得ない母の声がした。目を開けると消えてしまいそうな気がして目を開けられなかった。ふわりと全身に暖かい何かがかかった。心地が良い。
干したての布団の暖かさ。だが物質的な重みはない。
「お母さん、ありがとう。だいすき。」暖かい何かを身体に巻きつけた。
「もう起きなさい。」母の優しい笑い声と共に暖かい何かも消えていった。
ゆっくりと目を開けると蹴脱いだままの毛布がベッドの端に追いやられている。
夢と笑う者もいるだろう。だが、母は私に逢いにきてくれたと信じている。
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