エイスト章

 俺は校長について行き校長室に連れられた、校長は椅子に座り足元の小さな冷蔵庫から酒を取り出しコップに注ぐ。


「さて、まずは自己紹介だな」


「は、はい」


「私はリグレイト・Dグレス・ハイサイト・レイスだ、よろしくな」


「俺はデント・ハルバートです」


「ではハルバート、お前がここに来た理由はわかるな?」


「...はい?俺はただレイジにここに行けと言われてきただけで...」


「...それは変な話だな、この封筒に写真と手紙が入っていてこう書かれてたんだが」

 校長はそう言って持っていた手紙を渡してきた、手紙を読む。


『どうもレイジです、今回は少しお願いがあってこの手紙を書きました。

 俺の学園の生徒にデントと言う奴が居るのですがそいつが今回『例の件』にかかわってたみたいなのでそちらに入れさせてほしいのです、詳細はデントが知っていると思うのであいつに聞いてください。』


「...例の件って?」


「私はお前がそれを知っているのだと思っていた」


「心当たりは...」

 その時脳内で色々な映像が流れる。


「あるようだな」


「あると言うよりはあることをきっかけに俺の周りで色々なことが起きて...」


「あること?」


「はい、突然目の前に少女が現れて...それでその子が神でそれについて調べてたら殺人鬼が現れて...」


「大体わかった」


「え?」


「今の話でお前が何を言っているかわわからなかったが神が出現したという問題はわかった」


「え?神の話を信じてくれるんですか?」


「半信半疑ではあるがな、その神と名乗る少女は今どこに?」


「...連れ去られました」


「連れ去られた?誰に?」


「わかりません」


「...まぁいい、とりあえずお前は今日からここの兵士だ」


「え!?ちょっと待ってください!俺にはやるべきとこが...」


「その子を助けに行くのか?」


「...!」


「はっきり言おう、今のお前では無理だ」


「うっ」


「学園でのお前のデータを見せてもらったがいくらなんでもあれはひどくないか?」


「うぅ」


「能力は...確かに個人差はあるが鍛えれば強化することができる、能力ではなく頭脳でやって行こうと思っていてもこの成績じゃあなぁ...」


「ううぅ」


「ここで鍛えろ、体も頭脳もだ」


「でもこうしている間にもロルネが!」


「ここの捜索隊が今探している、そいつらに任せておけ。どうせ外に出たところで行く当てもないのだろう?」


「それは...」


「それに連れ去ったってことはその子を何かの目的に使うと言う事だ、すぐに殺されはしないだろう」


「でも、修行って何年もかかるものですよね?」


「そうだな、だからその子が見つかり次第お前に連絡を入れてやる。そうしたら助けにでも行ってやったらどうだ?」


「...」


「『ソルレイベス、メル、アルギエス』」


「?」


「『世界は可能性に満ちている、生き急ぐな』と言う意味だ」


「??」


「太古の昔から私の家に伝わる言葉らしい、はっきりとした意味は知らんが可能性を信じて今は耐えろってことなんじゃないか?お守り代わりにでも覚えておけ」


「わかりました」


「それじゃあ学園を案内するついてこい」

 校長はそういって酒を一気に飲み干し立ち上がる。


「はい」

 俺は自身の強化のためにしばらくこの基地で厄介になることにした、部屋を出て廊下を歩いていると校長が質問を投げかけてきた。


「デント、お前には両親はいないのか?」


「はい」


「そうか...」

 校長はなぜか少し悲しそうな顔をして黙り込む、しばらく歩いていると一つの教室に着いた。


「さて、ではまずはこの部屋からだな」

 校長が扉を開ける、そこには女の子四人がお互いの服を掴みながら喧嘩をしていた。


「...えっ」


「お前たち何やってるんだ...」


「あ!校長!」


「んあ?」


「え?」


「きえ?」

 それぞれがこちらに気づきこちらに向く。


「なんだこの人たち...これからさき俺は生きていられるのか心配になってきたな」

 デントはため息をつきながら疲れたように部屋の扉を閉めた。



「ではまず自己紹介からだな」

 校長が俺と他四人を近くにある椅子に座らせ言う。


「ではデント、お前から自己紹介だ」


「えっと、デント・ハルバートと言います、よろしくお願いします」


「よろ~!」


「よろしく」


「よろしくね」


「よろきえ」


「一人おかしいのが居ない?」


「ああこいつか?」

 校長はきえきえいう女の子の所へ行き頭を撫でる、暗い紫色の髪に輝く金色の眼を持つ女の子だ。


「ほらルリス、自己紹介」


「ここ第87部隊所属ルリス・ハグメントですきえ、尾語にきえって付くけど気にしないでほしいきえ」


「お、おう」


「次」

 赤色の肩だしへそ出しTシャツにショートパンツを着た女の子が立ち上がる。


「ヒルメデス・ソーサ・サニーだよ!ここ第87部隊所属の副隊長です!よろしく!」

 この子は元気っこ属性の女の子か、髪が赤く背中までの長さで所々に癖っ毛がある、眼は綺麗な緑色だ。


「よろしくです」

 校長が何も言わずに指だけを指す。


「サスペニアル・カパラーチェです、よろしくです」

 少しテンションが低めの女の子、髪は黒っぽい青で長さは肩まであり吸い込まれそうな瑠璃色の瞳を持っていてジト目だ。


「この第87部隊を率いる隊長クレサナリール・スレイサーよ、よろしくお願いするわ」

 太陽のように赤く輝く瞳にエメラルドのような緑色の髪、耳付きの黄色い虎のパーカーに黒い長ズボンの背の小さい女の子?いやこれは...


「スレイサー殿は男きえよ?」

 途惑っている俺にルリスが話しかけてくる。


「え、あ、いや」


「なによ、男で悪かったわね。昔からこういう性格なのよ」


「えっと、よ、よろしくお願いします」


「個性的だろ?ここの部隊は」

 俺は何も言えずに黙り込む。


「お前は今日からここに所属するんだ、仲良くやれよ」


「え!?」


「楽しくやっていくきえ!」


「うん、そうだね!」


「仲間が増えるね」


「そうね、こちらとしても新しい仲間が増えて更に多目的に事を運べるから助かるわ」


「まじかよ」


「まじだぞ」


「...ハァ」

 俺はため息をつく、なんかとんでもないとこに配属された気がする。


「さて、基地内はまだまだ見て回るとこが山ほどあるからな。行くぞ」

 校長は立ち上がり扉を置けて外に出ていく。


「は、はい」

 俺は急いで校長の後についていく。


「それではみなさんまた後で」


「きえ」


「おう!」


「またね」


「いってらっしゃい」

 俺は扉を閉めて校長と共に再び基地内を見て回る。

 基地内には色々な施設があり射撃訓練場や実戦訓練場、それぞれの能力強化のための環境変化型訓練場に極楽スポットなどありとあらゆるものがある。


「すげぇ...」


「そうだろ?前線で戦う兵士たちの基地なんだ、これくらいはしないとな」


「え?でも戦争は終わったはずじゃ...」


「まだ反乱分子だっているし宇宙からの侵略もあるからな」


「宇宙から!?」


「学校じゃこんなことやらないだろうな、しかし現実に我々は攻撃を受けている」

 なんかいきなり話が壮大になってきたな...


「俺はその宇宙人と戦うんですか?」


「まぁそう言う事になるな、しかしお前も含めてそれぞれの小隊はまだ大きな戦闘に使えるほど強くない、ここで訓練をし鍛えてからだな」


「はあ...」

 俺はわかったような感じに返事した


「宇宙人も『ファイタースピリット』を使うんでしたっけ?」


「者によるな、使えないやつらもいるがほとんどは使える」


「やっぱりか...」


「お前のその知識は神話からか?」


「え?あ、はい」


「だろうな、しかしここは神話とは違う。現実だ」


「...」


「神話とは人がある事柄を世に伝えた「神秘的な話」だ、我々が君の話を真面目に聞いているのはその「神秘的な話」が現実に存在する危険性を考えているからだ、ゼウスによる大洪水は大嵐による洪水発生が当時生きていた人間が神の怒りだと言い語ったにすぎん、神とはつまり「人間の理解を超えた物」だ、様々な人間の技術を使っても求めることができない物それが神だ」


「...分かってはいますがそれでも俺は....」


「...それはお前の「願い」にすぎん、こうあってほしいと言うただの願望だ」


「...」


「現代科学が手に負えないことも多々あるがいつか必ず解き明かされる、世界は可能性に満ちているんだろ?」


「...そうですね」

 俺は認めたくなくても正しい校長の言葉に反論する気はなかった。


「神と呼ばれる存在も次第に明らかになるさ、幽霊が居たんだぞ?」


「そう...ですね」


「おとぎ話の幽霊や妖怪が科学的に証明できたんだ、科学は真実を追求する我々にとっての武器だ」


「はい」


「お前の目的とはなんだ?」


「俺は...」

 小さいころから読んできた神話の本、俺は今までその本に書いてあることが本当なんだと世に信じさせるためにいろいろ調べてきたが俺が本当に求めていたのは...


「証明...」

 そうだ、俺は世の中に神話の事を信じさせるために証明したかったんだ、神の存在を。


「今の世の中は神を信じない当然と言えば当然だ、幽霊や妖怪の存在を明らかにした科学でも神話に載っている神だけは見つけることができなかった、力不足と言えばそうかもしれないがそもそも幽霊たちに聞いても天国も地獄もないことが分かっているし妖怪に聞いても「そんなものにはあったことがない」と言っている、我々がおとぎ話としてみていた者すらその存在を知らないんだ、宇宙に出て更に科学を発展させてもその存在には届かない」


「...」


「だからお前が居るんだろ?」


「え?」


「お前のようなバカが居るからまだ世界は希望を捨ててない、証明してみろこの世界の真実を」


「...!!」


「ここはお前のスタートだ」

 校長は俺の胸を拳で軽く押す。


「はい!」


「この世界の固定概念を吹き飛ばせデント」


「了解!!」


「『科学とは我々の神だ』」


「え?」


「ここの創立者、レイジのおじいさんの言葉だ」


「へぇ」


「お前の周りの奴らの言っている者達とは少し違う、我々の神とは武器、真実の扉の鍵と言うものだ」


「真実の扉の鍵...」


「さあ、行くぞデント」

 校長は歩き出す。


「はい!」

 俺の夢を叶えるために、世界の果てに行くために!

 俺は追求する!世界を!!




END

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ファイタースピリット~神話の世界~ ユウタ~暗唱者~ @Yuta_9001

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