セブレント章

 目が覚める、あたりを見渡すとここは病院のようだ。


「お前...なんで退院直後にまた入院してんだよ」

 振り向くとレイジが立っていた。


「...ごめん」


「なんで謝ってんだよ、俺は別に怒ってるんじゃねーよ」


「...」


「...なにがあったんだ?」

 俺はその質問に答えられずにいた、別に能力で殺されかけて情けないから喋れないんじゃない。

 ロルネの事をレイジに話さなかった自分が『仲間を信用してない』と、言う考えに変わりその自分が情けなくて言い出せないのだ。

 見放されるのではないか?

 見捨てられるのではないか?

 また一人になるんじゃないか?

 と、言う恐怖が圧し掛かる。


「おい!」


「...!」


「黙ってちゃ何もわかんねーよ、お前もしかしてあの子の事話さなかったとか言う事で言い出せないとかいうんじゃねーだろうな?」


「...は?お前知ってたのか?」


「お前だけ死にかけで倒れててその子が居なくなってたら『その子に関する何かの事件』に巻き込まれたってことくらい誰でもわかるぞ」


「鋭いなお前...さすがだよ」

 俺は不安や恐怖していた自分を殴りレイジにこれまでの事を包み隠さず話した。


~~~


「なるほどな、それで言い出せなかったわけか」


「神なんてどうせ信じないだろ?」


「まぁな、しかし結果がある以上対処しなくてはならないな」


「対処?」


「その子が本当に神だったとしてだ、神なんて架空上でしかないが力が本当にあるとしたら...」


「したら?」


「わかるだろ?この世界は簡単に消されちまう」


「あ、そうか」

 架空上の神が本当に居た、だとすると全てではないが神話上の事は本当に起こりかねない。


「だとすると...」


終わりの聖制バースレイドレスが起こる可能性がある」


「まじか!?」


「本当だと仮定した場合だ」


「...」


「とりあえず俺はその子の足取りを追おうと思う」


「俺も連れて行ってくれ!」


「無理な相談だな、お前じゃ正直足手まといだ」


「うっ...」


「...退院したらこの紙に書いてある場所に行ってみろ」

 そう言って紙を渡される。


「ん?なんだこれ」


「言うとおりにしろ、わかったな?」


「なんだよ、その言い方」


「わかったか?」

 すごい威圧感を持って言われた


「...ふぁい」

 俺は震えで声が変になった。


「んじゃなデント」

 レイジはそういうと病室を出て行ってしまった。


「...はぁ、怖かった」

 俺はそのやり取りを終えた後また天上の方を向き考え込む、あの時俺に力があったらロルネを守れただろうか?


『どうなんだい?』


「ん?」

 まただ、殺人鬼に追われた時と同じような感じがする。声が聞こえる...


『本当に救えた?』


「誰だよ?」


『おや?僕が理解できるの?』


「何を言ってるんだ?」


『あぁやっぱりまだわからないいだね、まぁ仕方ないか。君は所詮器でしかないからね』


「は?」


『そんなことより僕の質問に答えてよ』


「質問?」


『君記憶力ないの?本当に救えた?って言ったんだけど』


「...そんなの知るかよ、力があったら救えただろ」


『本当に?』


「何が言いてぇんだよ!?なんなんだよお前!」


『感情的になるなよ、醜いな』


「み...!?」


『僕は問いかけてるだけ、答えが欲しいだけだよ』


「答えって...」


『ん?』


「勝てた...と思うぞ」


『へえ、なんで?』


「あいつらの使うファイタースピリットは多分SS級だと思う、俺はレイジの力をこの目で見てるから色々な人の力がどの程度かなんとなくわかるんだよ」


『ふーん』


「レイジ程の火力は出てなかった」


『手加減してたのかもよ?』


「そこまで考えると切りがねーよ」


『ははっそうだね、うんいいよその解答』


「何様だよお前」


『うーん、神様?』


「はぁ!?」


『んじゃまー、一つ上げるよ』

 突然目の前が暗くなり眠気に襲われる。


『いってらっしゃいデント、君の物語の時計が今動き出すよ』



 気が付くと白い空間に立っていた


「ここは?」

 辺りを見回しても何もない。


『どこだと思う?』


「うわぃ!?」

 びっくりして後ろを向く、そこには見知らぬ少女が立っていた。

 服も白く肌も白いまるでロルネのような少女...


『...変な驚き方するね君』


「いや、あの、えっと」


『大丈夫かい?』


「あ、あぁ...大丈夫だ」


『そうかい』


「君は?」


『誰だろうね?』

 何か変だ、さっきから少女の声が曇って聞こえる。


『そんなことより君に大サービスプレゼントがあるよ』


「?」


『あっちみて』

 少女が指を刺した方を向く、そこにはでかい上行きの階段にその天辺には何か光るものが見える。


「あれは?」


『探求だよ』


「...は?どういうこと?」


『さーね、とりあえず一つね』

 少女はサイコロを渡してきた。


「なんじゃこれ」


『君の人生かな?』


「はぁ?」

 さっきからこの子は何を言ってるのだろうか?


『そのサイコロ一回振りなよ』


「...振ればいいのか?」

 俺は言われた通りに振る、すると一の目が出た


『あーぁ、まだ全然認めてもらってないね君』


「はい?さっきから何言ってるんだよお前」


『じゃあまず君には1-1をあげるよ』

 そういうと少女は消えまたあたりが暗くなっていく。


「!?」

 意識を失い次に目が覚めた時はまた病室だった、俺は特に何をしていたわけでもないが息が上がり汗をかいていた。


「はぁ...はぁ...」

 少し手が痛む、さっきのは一体何だったんだ?さっぱりわからない...俺はまた眠くなりそのまま寝入ることにした。


 数時間経ってまた目が覚める、最近寝てばっかりだな。

 眠りも浅いし。

 外は朝日が昇り太陽の光が病室に入ってくる、外では子供たちの遊び声が響いている。


「お目覚めですか?」

 そう言って一人の若いナースがドアを開け入ってくる。


「はい、ご迷惑をお掛けしました」


「ここは病院ですよ?怪我人が「ご迷惑を」なんていっても意味ないですよ、「迷惑を」と思うなら怪我をしないでください」

 ナースはムスッとした表情で言う。


「す、すいません」


「ふふ、冗談ですよ。酷いやられようでしたし何か事件にでも巻き込まれたんですか?」


「ま、まぁそんなことです」


「あんまり無茶はいけませんよ?」


「はい」

 俺はベッドから起き上がる。


「怪我の方はもういいんですか?」


「そうですね、絶好調とはいきませんが問題はないです」


「そうですか」

 俺は近くにあった綺麗にたたんである服を取り着替えようとした時ナースの事が気になった。


「あのう、着替えるんで向こう言っててもらっていいですか?」


「あ、ごめんなさい」

 ナースはそう言うと病室についている白いカーテンを閉めてドアの方へ行く。


「ども」

 俺は急いで着替えてカーテンを開ける、ナースは少し笑みを浮かべて病室を出て行った。


「?」

 俺もベッドの横にある荷物を取り病室を出る。


「あれ?さっきのナースさんどこ行ったんだ?」

 辺りを見渡したがどこにも姿が見当たらない、あのナースさんが俺の世話をしてくれていたのだろうか?


「なら礼くらい言っておきたかったな」

 俺はポケットに手を入れ歩き出す、とポケットに何か違和感がある。


「ん?なんだこれ?」

 出してみるとそれは紙だった、そういえばレイジがこの紙に書いてある所に行けって言ってたな。


「行ってみるか」

 俺は紙に書かれている住所に歩いて行った。



 しばらくして紙に書かれている住所と同じところに着く、紙を見ながら下を向いて歩いていたせいでその存在に気が付かなかった。


「なんじゃこりゃ...」

 顔を上げるとそこには巨大な基地?要塞?のようなものが異常な威圧感と共に現れる、本当にここで合っているのだろうか?


「貴様何者だ?」

 建物の存在感に目を奪われていた俺は近くに居た門番に声をかけられる。


「え、えっとレイジに言われてここに来たんですが...」


「レイジ?それはあの英雄レイジの事か?」


「はい...!」


「貴様はあの方の何なのだ?」


「友人です!」


「私はそう言ってここに入ろうとした愚か者を何人も見てきた」


「ほ、本当ですよ!」


「ふん、信じられんな」


「俺デントって言います、デント・ハルバート!嘘だと思うならレイジに連絡してみてください!」


「他人の名前を使っている可能性もある」


「俺の声を聞かせれば!」


「声帯を変えている可能性もある」

 くっそ!全然話聞いちゃくれねえよ!てかここそんなに重要な所なのか?声帯交換って...そこまでして入りたい奴が過去にも居たって事だよな?どういう事やねん...


「っち!」


「さあ!帰れ帰れ!アホに付き合っているほど俺は暇じゃない」


「アホはあんただろ!?全く話を聞いちゃくれねーし!」


「なにを!?」

 門番が構える。


「げっ!」


「やめろ、ログスト。それはこの基地の新しい仲間だ」

 そう言って門番の後ろから長い茶髪の綺麗な女性が現れた、赤い服を着て赤いマントを羽織り短いチューブ・スカートのようなものを着た美しい女性。


「校長!しかし...」


「これは本物だ、レイジに貰った写真の奴そっくりだからな」


「顔を整形している可能性も...」


「その時はその時だ、私が直々に対処する」


「しかし...」


「聞こえなかったのか?私が直々に対処すると言ったのだが」

 物凄い威圧で窓が割れるのではないかと言うほどの破壊力だ。


「わ、わかりました」


「わかればいいのだ」

 女性は威圧をやめ俺に手を差し出す。


「ようこそ、『聖童神滅軍事基地せいどうしんめつぐんじきちアーストレボス』へ」


「へ?」


「歓迎するぞ」

 聖童神滅軍事基地って確かやばい奴らがわんさといる国の自衛隊みたいなやつだよね?まじで?嘘でしょ?


「まじ?」


「まじ」

 俺はその一言と共に人生をすべて失ったようなそんな絶望感が頭に過る。


「ええええええ!!!!???」

 どうしてこうなったんだ?俺はそんなことを考えながら校長に連れられ基地内へ入って行くのだった...




END

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