シクセント章

 家に着く、相変わらずアナライザーは帰ってない。


「はぁ...」


「ただいま」


 ロルネはまるで自分の家のように堂々と家に入ってく。

 さて、これからどうするか...ロルネを守るって言ったって何から守ればいいんだ?あの殺人鬼か?

 でも...そういえはあの殺人鬼はどうなったんだろう。


「なぁロルネ」


「?」


「俺たちはあの後どうなったんだ?」


「なにが?」


「殺人鬼に殺されそうになった後俺たちは...」


「わからない」


「うーん」

 ロルネさえも覚えてないとなるといよいよ謎だな、誰かが助けてくれたのだろうか?


「これからどうする?」

 ロルネが訪ねてきた。


「何もすることないしなぁ」


「ねぇねぇでーとってのがしたい」


「ふぁ!?」

 俺は変な声が出てしまった、何言ってんだこの子。


「?、なに?」


「デートでございますか!?」


「うん」

 ん?てのが?もしかして...


「なーロルネ、もしかしてデートを知らない?」


「うん」

 やっぱり...じゃあなんでそんな言葉を知ってるんだ?

 いや、言葉だけ知っていた可能性もある。


「どこでデートの事を?」


「びょういんのかんごしさんにおしえてもらった」


「へぇ...看護師さんにねぇ?」


「うん」


「えーと、じゃあデートする?」

 って俺は何を言っとるんじゃ!

 俺は恥ずかしさのあまり後ろを向いた、流されかけた...というより完全に爆弾発言した。

 ロリコン認定されちまう。


「うん、する」


「いやいやまてロルネ!デートじゃなくてだな、そうだ!どっか散歩にでも...」

 ロルネを説得しようとロルネの方を向く。


「ぶふっ!!」

 思わず吹いてしまった、ロルネの方を振り向くとロルネは服を脱ぎ始めていたからだ。


「な、なにやってんのロルネさん!?」


「ふくぬいでる」


「見りゃわかるわ!!」


「なにをそんなにあわってるの?」


「なんで服脱いでんだよ!?」


「だってデートするんでしょ?」


「デートが何かわかってる!?」

 ホント何してんだこの子...絶対デートが何かわかってないだろ。


「こづくり?」


「はい!?」

 確信犯だろこれ、いや待てよ?デートの事を吹き込んだのは看護師だから...


「ロルネ、デートって何か言ってみろ」


「?」


「いいから」


「でーとはこどもをつくるぎしきでだんせいとじょせいのからだを...」


「もういいよロルネ、それ以上言うな」

 なんてこと吹き込んでんだ看護師のやろう...

 とにかく何とかしてごまかさないと、エロ本みたいにここで手を出したら俺は完全に犯罪人だ。

 漫画じゃないんだから絶対捕まる。


「ロルネそれはデートではない」


「じゃあなに?」


「それは...誓いの儀式(改)だ」

 俺は適当に答えた。


「そうなの?」


「うむ」


「へえ」

 理解したのかな?

 とてもそうは見えないけど...


「じゃあデートってなに?」


「散歩の事」

 また適当に答える。


「ほんと?」

 ロルネは少し疑いながら言う。


「うむ」


「そう...」

 なんで少し残念そうなんだよ、俺はそんな疑問を抱きながらロルネと共に近くの公園に散歩に行くことにした。



 公園に着いた。

 周りでは子供たちがはしゃぎながら遊んでおりベンチには親らしき人たちが話しながら座っている。


「さて、どうしたものか」

 ロルネと散歩に来たわいいがこれからどうするのかという計画を立てていなかった。


「ねえねえ、あのゆれてるやつはなに?」

 ロルネが目を輝かせながら指を指す。


「あれはブランコだよ」


「ブランコ...」

 ブランコも知らないのか?

 この子は一体どこから何の目的があって来たのだろうか...


「じゃああれは?」


「すべり台」


「あれは?」


「ジャングルジム」

 ロルネが次々に質問してくる、俺はそんなことよりも重要なある一つの問題を抱えている。

 もしもここで学校の奴らに出くわしたら確実にやばい。

 しかもさっきの看護師の時のようにロルネが変なことを言うと俺は変な疑いを掛けられ、周りで噂されるに違いない。

 それだけは避けたい、なんとしてもだ。


「誰も来ませんように...」

 心の中だけでなく声にも出てしまった。


「ねえ」


「ん?なに?」


「あのブランコってやつに乗りたい」


「あーわかったよ」

 俺がそう言うとロルネはブランコの方に駆け寄る、俺もそれを追いかける。

 こうして見ているとやっぱりただの子供のようにしか見えない。

 はっ!そうか!ロルネは宇宙人の子供とか?ありえなく無いな...

 俺はそんな妄想をしながらロルネと共に公園で遊ぶことにしたのだった。


 ......。

 あれからどれくらいたったのだろうか、ロルネがブランコで遊びたいというので俺は一緒に行き、この公園内を探索しながら色々な遊具の使い方や遊び方などを教えていた。

 ロルネは目を輝かせながらはしゃいでいる。こうして見ているとやはり大人びた風格があるがまだまだ子供なんだなぁと、のほほんとしながら見ていた。

 しかしロルネは本当に何者なんだろう...

 今思えばこのくらいの歳くらいのならブランコやその他の遊具の遊び方くらい知っているものではないだろうか?

 やっぱり宇宙人?それともどっかの国の王女?

 いずれにしてもまだなにから『守る』のか明確なことが分かってない、ロルネがムイセレーバという名前な以上『アトランテ神話』に関係していることは間違いないと思うんだよなぁ。

 昨日図書館で少し調べたけどやっぱり『人々の運命を見定め時には操ったりして世界を導いていた』ということしか書かれてなかった、さてどうしたものか...


「ねぇ」

 俺が俯いて考え事をしているとロルネが顔を覗き込んできた。


「わ!びっくりした!ロ、ロルネか...なにかな?」


「こんどはあれのつかいかたをおしえてほしい」

 ロルネが指をさす。


「あ、あぁわかった」

 俺はロルネに手を引かれ遊具の近くに来る...と、何か違和感が頭をよぎる。


「?」

 辺りを見渡す、人っ子一人見当たらない。


「あ、あれ?なんで?」


「くる」

 ロルネの一言と共に近くに隕石らしきものが落ち、大きな爆発音と爆風が俺たちを襲う。


「な、なんだよ!?」


「てき」


「はい!?」

 土煙が止むとそこには異形の金属の塊があった。


「な、なんだこれ...」


「...」

 恐る恐る近づこうとした時、金属が扉のように開き中から人が出てきた。


「おい!なんて運転してやがんだ!ルルリ!」


「仕方ないでしょ?いきなりエンジンが動かなくなっちゃったんだから」


「レレリトそんなに怒ってやるなよ、ルルリちゃんが悪いわけではないんだし。それに目的のやつ目の前に要るじゃん」


 中からはお互いに話し合いながら人が三人出てきた、左の男の人は学生服のようなブレザーを着ていて髪は銀色で短い。

 真ん中の女の子は肩を出してミニスカを穿いていて髪は赤く肩まである、右の男の人は黒い長袖のパーカーに紫色のマントを羽織り髪は紫で短い。

 そいつらは俺たちに用があるようだ。


「お、ほんとだ!んじゃまー早速やっちゃっていいか?」


「いいんじゃない?」


「いいだろ」

 何を言っているんだろう?

 そう思った瞬間、左の男がファイタースピリットを使いだした、陣から稲妻が走る。


「悪く思うな!お前!」

 そういって男は雷を飛ばしてきた、その雷は巨大で地面を這うようにして襲ってきた。


「うわ!?」

 俺はそれを反射的に何とか回避しロルネを抱えてその場から全力で逃げた。


「な、なんなんだよあれ!?」


「てき」


「見りゃわかるわ!」


「どうしてにげるの?」


「勝てるわけねーだろあんなの!」


「デントも能力使えばいい」


「...」

 俺は建物の後ろに逃げ隠れてロルネを下した、今思えばロルネを守るといったはいいもののまさかあんな奴らと戦うとは思ってなかった、俺の能力じゃ絶対に勝てるわけない。


「ロルネあのな、実は俺は能力がE級なんだ...」


「Eきゅう?」

 ロルネは首を傾げる、そんなロルネを見て情けない声で言う。


「能力がものすごく弱いってことだよ、それに加えて俺はランクも低い...はっきり言って何の役にも立たないんだよ」

 こんなとこで弱音を吐いても...


「...」


「だから...あいつらと戦ったって負けるだけだ、あんな能力が強いやつに勝てるわけがないだ...」

 いくら言い訳をしても...


「...」


「ごめん...守るって言ったって俺には君を守る力がない」

 何も変わらない。

 でも、ロルネを逃がすことくらいできるはずだ、それくらいなら俺にも...!


「ロルネを逃がす」


「え?」


「君を逃がす、それが俺にできる唯一の事だと思う」


「...」

 多分だけどあいつらは外来者だ見たことない顔だし、だからこの町の事は詳しくないはずだ。

 うまく逃げてロルネを警察に連れていけば何とかなるかもしれない。


「行くよロルネ」


「...うん」

 ロルネはうなずく。

 この建物を出て右に行けば開けた道路に出る、そこから建物の陰に隠れて進んで行けば警察署なんてすぐだ。

 俺は意を決して建物の裏から出た、幸いにあいつらはいないようだ。


「今なら...!」

 そう思って走り出した瞬間俺の右足がレーザーのようなもので打ち抜かれた。


「...!!!」

 声にならない痛みが体に走る、俺はその場に倒れこんだ。


「デント...!」

 ロルネが心配して駆け寄ってきた。


「ぐっ!」

 俺は足の痛みに耐えながら体を起こす。


「おー!まだ立つのかい君」

 さっきの電気男が隠れていた建物の上から言ってきた。


「お、お前...!」


「すまないね、恨みはないんだが俺たちはその女に用があるんだ」

 ロルネに?いったい何の用があるっていうんだよ...!


「ッ!!」

 俺はあるだけの力を振り絞って立ち上がろうとした。


「おっと、立つんじゃねーよ」

 そういって男は今度は右腕をレーザーで打ち抜いた。


「あああああ!!」

 痛みが全身に走り立つ気力がなくなったしまった。


「デント!」

 ロルネが近寄ってくる、しかしロルネが俺に手で触れようとした瞬間俺とロルネの間に雷の壁のができた。


「おうおう女、そっちじゃなくてこっち側に来てもらおうか」


 ロルネは感情をあまり表に出さない子だと思ったが今回に関してはひどく動揺しているようだ、男がロルネを無理やり連れて行こうとしているが俺は何もできずそのまま気を失ってしまった...




END

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