フェスト章

 殺人鬼が消え、あたりは急に静かになった...

 なにかがおかしい。


「人の気配がしない...」

 周りを見渡してもさっきまで叫んでいた人の声はいつの間にか消えそれどころか人の影も形も見えない。

 静かな広場の前でただ一人俺は立っている。



 しばらく何もせずに立っていたが何も起きなかった。


「気のせいか」

俺はそう呟き歩き出す、同時に急に目の前が揺れだし暗くなっていく...


「あ...れ?」

 そして俺は気を失った。




「ん...」

 目が覚める。


「ここは?」

 俺は白い部屋の白いベッドに寝ていた。

 病院?


「なんでこんなとこに...」


「俺が連れてきたからだよ」


「んあ?」

 その声のする方に首を向けるとレイジが座っていた。


「なんで?レイジが?」


「おいおい助けてもらって『なんで』はないだろ?」


「え?あ...いや、あ、ありがと?」


「まったく...」


 俺はいまいち状況が理解できなかった、理解できないのでレイジに聞いてみる。


「ところでさ?これはいったいどうゆうことなんだ?」


「どうゆうことって?」


「いまいち理解できないんだが...」


「あぁ、なんかさ通報があったらしくてよ?」


「通報?」


「そう、『殺人鬼が暴れまわってる!』って電話が警察に入ってきてそれでその現場に行ってみたんだが...ひどいもんだったな」


「...」


「それで殺されてる人を順番に調べていったらよ?お前が倒れてたってわけよ」


「...」


「お前あんなとこで何してたんだ?」


「...」


「...?おい?」


「...」


「どした?おーい?」

 やっぱり助からなかったのか...


『殺人鬼は倒したのに...』


 ん?倒した?誰が?

 俺は殺人鬼に殺されそうになって、それで...


「思い出せない」


「あ?」


「なんも思い出せねぇ...」


「...大丈夫ですか?精神科にでも行きますか?」

 レイジが冗談気味にいう。


「い、いや」

 そして重大なことを思い出す。


「そ、そういえばロルネ!ロルネはどこだ?!」


「だ、誰だよそれ」


「ロルネだよ!」


「誰だよ!」


「女の子だよ!」


「女?そこの少女さんの事か?」

 俺はレイジの指をさした方に顔を向ける、そこにはロルネが座っていた。


「ロ、ロルネ」


「...」


「よ、よかったぁ...」


「なんだ?やっぱ知り合いか?」


「やっぱ?」


「いやさ、お前が倒れてる横で座っててよ?何があったのか聞いてもなんも答えちゃくれねえんだよ」


「その子は妹か何かか?」


「あ、いや」


「いや待てよ?お前に兄妹はいなかったな、なら...まさか児童誘拐?」


「なんでそうなんだよ!!」


「いや、お前がモテるわけねーし...」


「余計なお世話だよ!!あとストレートに本人にモテねーとかいうな!!」


「なんだ?恋人か何か?」


「だからなんでそうなんだよ!?」


「ロリコン?」


「黙れ!!」

 俺は怒気を孕んだ声で言う。


「ふむふむ」


「な、なんだよ?」


「いや...なんでもねぇよ」


「んだよそれ」


「んじゃ俺そろそろ行くわ」


「は?どこに?ってかなんでお前が警察と一緒にいんだよ?」


「俺を誰だと思ってる?」


「ああ...そうでしたね。町の英雄さん」


「そんじゃまだまだやんなきゃならねーことがあるし、殺人鬼もまだ見つかってねーし」


「あ、ああがんばれよ?」


「...」


「な、なに?」


「なんでもねぇ」


「なんなんだよさっきから...」


「少し気になることがあってな」


「へぇ」


「とりあえずいくわ」


「了解」


「じゃあな」


「ん」

 俺は手を振る、レイジは病室を後にした。


「はぁ...」

 なんかすごい疲れた、殺人鬼とかこの子とか...


「だいじょうぶ?」

 ロルネが声をかけてきた


「大丈夫に見える?」

 俺はつい心で思ったことが口に出てしまった。


 ロルネは首を小さく縦に振る。


「あっそ...」

 俺は疲れた返事をした。


俺はベッドに寝そべる、なんかまた眠くなってきた...


「なぁロルネ」


「...?」


「寝ていいか?」


「すきにすればいいとおもう」


「そうか...」

 俺は静かに目を閉じた...


 


 しばらく経って目が覚める、外は真っ暗でロルネも俺の隣で寝ていた。


 ん?隣?


「!?」

 慌てて起き上がったが体を抱きしめられていて身動きが取れなかった。


「な、な、な!?」

 なんでこの子は抱き着いて寝てんだの!?

 てかなんで同じベッドで寝てんの!?


「ロ、ロルネさん?」


「...ん」


「あ、あの離れてくれません?」


「...やだ」


「えぇ!?」


「...ねむい」


「いや、あの」


「...うるさい」


「...」


「...おやすみ」

 ホント...自由かこの子...

 ロルネはおやすみを言うとすぐに寝てしまった、小さないびきがかすかに聞こえる。


「うぅ...」

 この状況...他の人に見られたらどんな目で見られるかわかったもんじゃないな...


「とりあえず...」

 寝る?うーん、眠くないんだよなぁ...


「そういえは...」

 俺は倒れてたんだよな?

 なんで倒れてたんだ?

 ホントそこんとこだけが思い出せない...


「ふーむ」

 いくら頭を抱えても思い出せない、なにも思い出せないので寝ることにした。





「...ん」

 朝だ、外で鳥たちが鳴いている。

 寝ながら窓を見る、青い空と白い雲...うんどっかで聞いたようなセリフだ。

 起き上がろうとしたら何かに押さえつけられた。


「...まだくっついてたのかよ....」

 俺は少し慌てたような声で言う。


「おきろーロルネー」


「んんぅ」


「おーい」


「んやぁ」


「おーい!」


「んーうるさい!」

 ロルネが腹に一発入れてきた。


「ごは!」

 少し...いやだいぶ痛い、この少女のどこにこんな力が...!


「いってぇ...」


「んあ?」


「くうぅ」


「おはよ?どうしたの?」


「.....なんでもないよ」

 苦笑いをしながら言う。


「なんでそいねしてるの?ろりこん?」


「君が俺のベッドに入ってきたんだろ!?」


「おぼえてない」


「あのなぁ...」

 俺は少し怒気の混じった言い方を知る、俺がロルネと話しているとナースが部屋に入ってきた。


「あのう、デントさんお体の方は...」


「あっ」


「え、」


「?」

 ナースは今の俺の状況を見て固まる、そして小さな声で言う。


「そ、そういうことは...そのここでやられても...」


「ち、違うんですよ!これは...」


「ん、ねぇあつい」


「!?」


「し、失礼しましたー」


「ま、まって!ナースさん!」

 ナースは顔を真っ赤にしたまま立ち去る、....なんてこったい。


「ロルネ...」


「なに?」


「やっぱ警察に届けていいかな!?」


「....やだ」

 そんな会話で一日が始まった、俺はロルネを振りほどきベッドから降りる。


「服は...そのままか」

 ロルネの方を見る。


「ロルネは...」

 ロルネも服はそのままだ、白い...服...?

 なにか引っかかるな。


「どうしたの?」


「いや、なんでもないよ」

 そういって俺たちは病院を後にした。




 家に向かって歩いているとロルネが話しかけてきた。


「ねぇ?」


「ん?なに?」


「あなたのなまえ、きいてない」


「え?言ってなかったっけ?」

 なんだ名前も教えてなかったのか...


「俺の名前はデント、デント・ハルバートだ」


「デント...おぼえた」


「どーも」


「わたしはロルネだよ?」


「わかってるよ...」

 俺は呆れた感じに返答した。


 俺はこの時がいつまでも続けばいいのになぁなんてフラグ前回のセリフを言ってみる、しかしここはアニメじゃない。

 そんなとこを考えて歩いていると、前から人が走ってきた。


「わ!」


「きゃ!」

 走ってきた人はぶつかるなり声を上げる。


「だ、大丈夫ですか?」


「だだだ大丈夫です!すいません!」

 そういうとその人は反対側の方へ走っていってしまった。


「なんだったんだ、今の人」


「...」


「ん?どした?」


「なんでもない」

 ロルネは少し小さな声でそういって歩き出す。


「?」

 俺はよくわからないままロルネの後についていった。




END

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