夜にひとひら 5/5
シャワーの音が聞こえる。
さっきっからずっと。その音にたまに不協和音が混じるからそこに人がいてお湯を浴びているんだって分かる。ざあーーー、ではない、ぱしゃ、や、かつん、が聞こえるから。
城守くんは裸で、私はそれを知っていて少し照れている。出てきた彼に、私はなんて声をかけたらいいのだろう。
シャワーの音が終わった。
終わらないで欲しかった。でも急に途切れた水音は容赦なく静寂を運んでくる。
胸が痛かった。呼吸も苦しくて慌てて大きく息を吸い込む。
このドキドキと恋のドキドキはどう違うのだろう? 本当のときめきも知らないまま私はあの腕に引き寄せられるんだろうか。
ムリだ。私にはとてもじゃないが出来ません。
まだ間に合うと思う。部屋を出る、それだけでいい。さすがに裸で追ってきたりはしないだろう。
どうする。今だ、って心で叫んでも体は固まったままでいつの間にやら指先が震えて寒くて熱かった。
がちゃり、とバスルームの扉が開く音。控えめな足音。変わるだろう世界が手招きしてる。
テンパってドキドキで眩暈がした。
「お待たせ」
いや、待ってないし。むしろ待って欲しいし。
ああ、もうダメだ、シュークリーム食べたい…
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